蟲使い
触手が全て


1.メーカー名:Black Cyc(ブラックサイク)
2.ジャンル:ADV(戦闘あり)
3.ストーリー完成度:D
4.H度:B
5.オススメ度:D
6.攻略難易度:D(ラスボスのみA)
7.その他:「触手度A」という項目を加えておきたい。


(ストーリー)
 紫堂蓮(主人公)はパートナーの紫愛とともに裏の世界では名の知れた「蟲使い」。
 ある時彼らの元へ「神武グループ」の社長の愛娘・美弥子を誘拐して欲しいという依頼がくる。
 神武グループは、陰で兵器開発なども行っている危険な企業であり、案の定、一人娘の周りには7人の女性たちが密かに護衛の任に就いていた。
 蓮は仕事を確実に遂行するため、クラスメイトとして美弥子に近づき、その陰で一人ずつガーディアンを排除していく。
 そして誘拐は成功するが…さらわれた美弥子は意外な言葉を口にする。

 「父を暗殺してください」

 蓮はそこに彼女の意思の強さを見て、美弥子を守る側に立つ決意をする。
 それにからむ更なる拉致、グループからの刺客、過去からの因縁。
 蓮は彼女を救うことが出来るのか…?


 見た目はオーソドックスなADVだが、街中の移動から始まり、戦闘シーンあり、そのための蟲の育成ありと、意外とにぎやかなつくり

 ゲームは美弥子誘拐を挟んで前半と後半に分かれた構成になっている。
 前半は美弥子誘拐を、依頼日から22日後の引渡しの期日までに成功させるため、彼女を護衛するガーディアンを排除しようと、学校を始めとする街の各所を移動する、自由度の高いアドベンチャータイプのスタイル。
 蓮は一日一回誰かと接触(会わなくても可)して探りを入れ、最終的には戦闘によってガーディアンを捕獲(&陵辱)することが行動のメインとなる。
 誘拐と言う目的を果たせれば、誰と何回接触してから戦闘に入っても、ストーリーの流れには影響を与えないので、好きな女の子から陵辱してください、ということなのだろう。
 後半は反対に、捕らえた美弥子の告白により、蓮が彼女を護るために奔走するシナリオをたどるスタイルとなる。
 戦闘は後半にも一応あるのだが、前半と違って自由度も無くH用の蟲も使わない、話を先に進ませるためのもの。
 Hシーンもまた決まった場所でしか発生しないため、前半とはまったく違った様子を見せる。
 この前半と後半のスタイルの違いで、だらだらとゲームを続けないよう目先を変えているのだ。

 話の間に入る戦闘は、お互いが交互に攻撃を行うシンプルなタイマン方式。
 一日ごとの行動の終わりにある、蟲の育成モードで育てた、攻撃用の蟲を相手に向かわせて徐々に体力を奪ってから、Hシーンに入るための蟲を使うパターンとなる。
 しかも、必ずHシーンにしなければならないわけではなく、ただ倒すだけでもゲームの進行上何の問題無いため、プレイ時間をプレイヤー自身で調節できるという利点もある。
 しかし、触手プレイを堪能することがゲームの主目的なのだから、彼女達に戦闘をしかけ、蟲を使って捕らえなければ意味が無い。
 これらの戦闘で蓮が攻撃を行うためには、蟲を育成する必要があり、それは後半まで一貫して一日の行動の終わりにある育成モードによって行われる。
 蟲の育成は単純で、一日毎に自動的に与えられるポイントを直接攻撃系、ステータス補助系、H系の蟲のどれかに振り分けていき、徐々に手持ちの蟲の種類を増やしていくだけのもの。
 しかもバリエーションは結構あるのに、攻撃補助系の蟲を数匹と一番攻撃力の高い蟲を一種類だけ山ほど持っていれば事足りてしまうので、あまり戦略的な意味も無い。
 H系の蟲だけはちょっと特殊で、ガーディアンとの戦闘前にアドベンチャーのシーンで一人エッチをさせて捕獲の下ごしらえをする蟲一種と、戦闘中にどの捕獲用の蟲を使うかで、その後のHシーンが変わる蟲三種、計四種類の蟲を育成する必要がある。
 そのため、すべてをフォローするよう蟲を育成するのに手間がかかるが、それでも前半だけしか利用することは無い。
 あまりH系を作りすぎると後半の戦闘に響くので、そのバランスに悩む程度のものだろう。

 ちなみに、戦闘では、蓮は自らの手による直接攻撃は一切行わない上に、戦闘中に攻撃用の蟲が無くなると無条件で負けになるなど多少理不尽なものを感じるが、それは蟲使いのプライドを表現したと捉えるべきだろう。

 そして、このゲームの一番の特徴は、キャラ毎のマルチエンディングが当たり前となった最近の作品群と違って、女の子が8人もいるのにエンディングが一つしかないことだろう。
 しかもゲームオーバーになるのは、戦闘で敗けた場合のほかは、後半でのたった一箇所の選択肢を選んだ場合のみという単純さ。
 女の子を攻略するルートは自由だが、メインのストーリーもたどり着く結果も同じ。
 女の子一人につき1エンディングが当たり前の、今のゲームのつくりから見れば、はっきりいってあまりにシンプル。
 しかし、だからこそストーリーに集中することもできるし、個別エンディングのために中途半端に選択肢に四苦八苦することも無い。
 さらに女の子を無視して、ゲーム開始初日から直接美弥子を誘拐しに行くことも出来る(多分確実に負けるが)など、プレイヤーの自由度はかなり高いため、プレイに安心感がある。

 ゲームの構成は先に述べたように、美弥子の誘拐を挟んで全体で大きく二つに分けられていて、それぞれの趣は全く異なっていると言っていい。
 美弥子を誘拐するまでの前半では、蓮は彼女を守るガーディアンを排除するために尽力することになる。
 学校に潜入した彼は、約束された誘拐の期日までの22日間の間で、美弥子と一緒にいる一般人のふりをしたガーディアンにクラスメイトとして接触し、蟲を使って徐々に罠にはめていく。
 蓮は甘いマスクをした美少年であり、常に笑顔を絶やさない。
 そのことが、美弥子やガーディアンの面々と話す時に効果的な演出となっていて、さらにテキストにモノローグとして表示されるセリフの冷ややかさとあいまって、裏の世界で生きてきた彼のしたたかさが垣間見えて面白い。
 また後半に発覚する、過去の出来事のせいで無痛症になったことなど、個人の生い立ちにかこつけた「蟲使い」としての厳しさを感じさせる部分もある。


 排除の対象となるガーディアン達は、全部で7人。
 クラスメイト(合気道の達人の、半獣人のエルナ、アンドロイドのユーリア)、妹役(超能力者の綾菜)、人妻?(に見える剣の達人の瑛利子)、路地裏を徘徊する女王様(のような風体の鞭の達人の魅羅)、科学者(護衛せず開発担当のリナ)。
 彼女達は美弥子を常時護衛できるように、種々の人物に扮して、あらゆる状況に対処できるように、学校の内外を問わず各所に配置されている。
 ガーディアンは美弥子を護るという役目だけが明らかにされていて、何人かは蓮との戦闘時にガーディアンとなるエピソードが本人の口から語られてはいるものの、組織としての召集の過程とは特に関係が無いようだ。
 そのため、彼女達には組織としての統一性が無く、素晴らしいほどにキャラが被らずバラバラ
 多様なキャラを用意そろえて、それでもゲームの体裁を崩していない所はたいしたもの。
 この彼女達の攻略が前半の要であり、ゲーム最大の売りだ。
 攻略とは誘拐決行までの間に彼女達を捕らえ、美弥子誘拐のための障害を排除するということ。
 前述の育成で用意したH系の蟲を使い、一人の女性に対し、戦闘前に淫夢蟲で一人遊びに耽る所まで持っていき、戦闘中に放つ三種類の淫蟲でHシーンに持ち込み捕える。

 ただ欠点として、一人遊びまで持っていくと、誘拐決行までに最大四人しか排除できないし、3種類の淫蟲は1回の戦闘で1種類しか使えないため、一人について全部のCGを見るには最終的に4回のプレイを要することになってしまう。
 果たして誘拐決行の日、ガーディアンは美弥子の元へ行く蓮の前に立ちふさがり次々と戦闘を挑んでくる。
 戦闘は事前に排除することが出来なかった者達と行われる。
 そのため、一人も排除できていない場合、攻撃蟲の補給無しの7連戦を行うことになり、かなり厳しい。
 はっきり言ってこの場合ほとんど勝ち目はないので、戦闘自体を意図的に楽しもうとする人でない限りは単にゲーム進行上の妨げにしかならない。
 ガーディアン達を排除することは、戦闘を楽にするだけでなくストーリー進行も軽減するという意味もあるのだ。
 しかも、誘拐決行当日に倒しただけではただ「捕らえた」だけで済んでしまうため、味も素っ気も無いまま話が進んでしまう。

 捕らえる事ができれば、触手による拷問の時間(Hシーン)の始まりとなる。
 拷問と言っても、仲間の情報等を聞き出すためのものではなく、抵抗する気力を奪うことが主目的のため、彼女達は徹底した陵辱を受けることになり、かなり凄惨を極めたものとなる。
 触手は彼女達の全身を被うが、拷問と言う言葉のとおり、無秩序に襲われることは無く、彼の意図するように触手が操られ、徐々に侵食の度合いを増していく。
 陵辱行為は、具体的に描くのがはばかられるものが多いので詳しく書くことは控えるが、とにかく「人の手による人にはできない行為」が繰り広げられていくのが見所。
 そして、彼女達のガーディアンとしての意識の強さと、蓮のプロとしての非情さは行為をエスカレートさせていくので、例えばただ脅迫したり、力任せに事を運ぼうとするようなものと比べて、両者の駆け引きが行われる所が面白い
 結果を言えば彼女達が勝つことは無いが、このやり取りのおかげで戦闘前のイベントと合わせて、彼女達の美弥子に対する思い入れの強さが描かれることとなり、キャラに深みを感じる。
 例えば、クラスメイトガーディアンの一人である唯は、腕は立っても基本的に引っ込み思案であるため、美弥子以外の友人がほとんどいない。
 そのため美弥子に対する感情は人一倍強く、戦闘時に蓮をして「一番心が強い」と言わしめている。
 しかし、それゆえに陵辱行為を受けても、他のガーディアン達よりも心の抵抗が激しく、結果的に最もきつい責めを受けてしまうのだ。

 彼女だけに限ったことではなく、他のキャラも同様に、このようなそれぞれの持つ芯の強さの拠り所がしっかりと描かれていれば、触手による陵辱だけでなくシナリオ的にもワンランクアップしたものとなっただろう。
 ゲームの目的が女性への陵辱行為なので、接触する機会は多かったのだが、シナリオは個別に用意されてはいなかった。
 結果的に、見た目だけで終わってしまい、陵辱されているのはどんな女の子なのかという内面の部分が描かれていないため、キャラの魅力が生かしきれていないのが残念だ。


  蓮が、ガーディアンを退け、無事? 美弥子を誘拐することができればゲームは後半へと移る。
 ゲームは前半の自由行動と違って完全に制限されてしまい、やがてラストへと至るが…
 問題として目立つものはほとんど後半にある

 まず、エンディングに至るまで、テキストを送る作業と戦闘ばかりで、アドベンチャーゲームとしての体裁は前述したゲームオーバーにつながる唯一の選択肢しかないこと。
 しかもその選択肢は、美弥子を原因とした蓮のパートナー・紫愛の裏切りを「許す」か「許さない」かの二択で、許さなければ蟲による紫愛陵辱の後、蓮が精神崩壊を起こしてしまうという唐突なもの
 選択肢は二択なので、その一方がゲームオーバーになりそうだと容易に想像はつくが、蓮の結末を想像するのは難しいだろう。
 紫愛の裏切りは、一族の本家である蓮に対する分家筋の不満という蟲使いとしての因縁と、彼に対する恋慕の情における美弥子への嫉妬の爆発であることがその場で語られるので、理由としてはわからなくも無い。
 しかし紫愛は、前半の初めで蓮とのHシーンを見せる以外何の役にも立っていないため、まるで突然癇癪を起こしたかのようにしか見えないのだ。
 本来なら紫愛は、蓮のパートナーとして彼をサポートしていなければならない。
 実際前半では、紫愛は蓮へのHの手ほどきをはじめ、育成用の蟲の素材(詳細不明)集めや情報収集、倒したガーディアン達をアジトの地下室へ監禁(他の仲間はいないので、蟲を使って一人で運ぶらしい)したり、その食事なども作るなど、かなりの働きをしている。
  それなのに、Hシーンで蓮をリードしていたこと以外、紫愛に仕事上のパートナー以上の関係が伺えるイベントや記述は無い。
 紫愛は、いってみればロールプレイングゲームなどの、ちょっとせりふの多い店の女主人程度の役割しか与えられていないのだ。

 もし、前半で蓮がガーディアンや美弥子に会って帰る度に、彼女達の様子や会話を気にするようなせりふを言っていたなら、あるいは戦闘でガーディアンを捕らえる度に、心安くない様子でも見せていたなら、後半での紫愛の反目は、前半からの伏線だったのだと納得もいくが、そんなそぶりを微塵も見せないのだから、事が起こったその場で何を言われても唐突な事でしかない。
 また、引き金となった美弥子にしてみても、蓮達の請け負った「美弥子誘拐」という依頼をキャンセルするという、プロにあるまじき行為をしてしまう結果を生んでしまうのだから、自身が危険な目に遭ってもしょうがない(選択肢の直前の戦闘に負けると、美弥子は蟲に陵辱された上で殺されてしまう)。
 その事自体は筋が通っていると思うが、紫愛同様、伏線と呼べるものがわずかに一回あるだけという前半での彼女の影の薄さが、蓮を動かす理由としてあまりに説得力の無いものに感じられる。
 確かに前半での美弥子は蓮が蟲使いであることを知らないので、彼に対して積極的な行動をとらないだろうが、それでも蓮との会話(それすら設けられていないが)で美弥子に影があることを匂わせることくらいはできただろう。
 そうして、後半に美弥子の本心を知った蓮が紫愛と対立するという構図に深みを持たせた上でなら、たった一つの選択肢はゲーム全体を通して非常に重要なものとなったかもしれない。
 結局、そんなことはまったく無く、まさにその場だけで発生しているようにしか見えないので、「許す」を選ぶと実にさらりと終わって、話は先へと進んでしまう。

 同じ事は戦闘にも言える。
 敵に対して攻撃用の蟲をぶつけるという戦闘方法こそゲームの終始で変わらない。

 しかし、彼のレベルが上がるわけではないし、状況によっての先制・不意打ちという演出も無い(始めは必ず自分から)。
 戦闘の場所も回数も決まっているから一般的なRPGのような「死にそうな時に敵と接触」なんて事は無いが、困ったことにラスボスだけ極端に強いため、どの通常攻撃を続けてもまず勝てない
 勝つためには、たまに発生するクリティカルヒットが複数回ヒットしてくれるのを待つしかないという、実に運任せなものとなっている。

 シナリオ自体も、美弥子の「会社を父から乗っ取る」という告白を中心に、ゲームの方が勝手にまとめてしまうように見える
 蓮に誘拐された美弥子はその直後に、自分の父が営む神武グループが実は裏で通常兵器から生体兵器まで広く手がけている死の商人であることを知り、父を排斥することでグループを正しい方へと導きたいと彼に語る。
 蓮はその告白の裏にある彼女の心の強さに負け、依頼人に引き渡すことを拒否しようとするのだが、それを引き金に、仲間とのいさかいが起きてしまう。
 そして一段落ついた直後、美弥子はラスボスにさらわれる。
 最終的には美弥子を助ける過程で父も死に、結果的に彼女の目的は達成される。
 この間、美弥子は蓮を説得する以外のことは何もしておらず、彼女にしてみれば、タナボタ式に全てがうまくいってしまうのだ。
 蓮が、美弥子を仕事上の対象から、守るべき人へとその目的を変えていく過程や、実は先代の蟲使い(蓮の父)が神武グループおよび美弥子の両親と関わりがあったこと。
 そして、神武からの報復を受けた蟲使いの一族は、蓮と紫愛を残してほぼ壊滅してしまったことなど、すし詰めにされた展開が、ほぼテキストを追うだけでエンディングまで続いてしまう。
 内輪もめに近い様相に、プレイヤーは置いていかれている。

 選択肢も戦闘もシナリオも含め、後半全般が問題視されてしまうのは、前半との関連性が非常に希薄だからだろう。
 このゲームは蟲での陵辱がメインのため、7人ものガーディアンとの戦いが集中する前半にどうしても目が行きがちになってしまう。
 そのため、ほとんど後半への伏線となるエピソードが入らず、結果としてその後の展開に面食らってしまうのだ。
 特にヒロイン・美弥子の前半の扱いはひどく、前半は側近と会話するワンシーンがあるのみで、後はガーディアンとの他愛ない会話ばかり。
 会話上からは何か隠しているという雰囲気すら微塵も感じられない。
 おかげで後半、実は「神武グループ乗っ取りを図っていた」という彼女の蓮への告白が、どうしてもその場の思い付きにしか見えない
 更に蓮の協力を得られた美弥子は、蓮と愛あるHをした後で紫愛にさらわれ、紫愛とのやりとりが一段落した直後にラスボスにさらわれ、おまけにラストでは美弥子をかばって父親が命を落とす。
 父と美弥子の関係は、前半では互いの伏線、特に父の描き方が皆無なので、美弥子に対する父の葛藤が感じられず、彼女をかばって死んでいくことに納得ができない。
 陵辱シーンに関しても、後半は対象が彼女しかいない(一応上記した紫愛もいるが)上に、主なものはゲームオーバーにならないと拝めないため、前半とは比べ物にならないくらいボリュームは薄い。
 一言でいえば、後半は、全員が美弥子に振りまわされているのだ。
 ただ、後半に入ると比較的早くクリアできるので、プレイヤーが不審に思う前に終われる事がせめてもの救いだろう。

 とにかく言えるのは、前半と後半のギャップが激しいということ。
 CGとシナリオの二極化は難しいと言うことを自身で体現したゲームと言えるかもしれない。


(総評)

 正直あまり人にお勧めできないゲームだと思う。
 特にうねうね・ぐちょぐちょが苦手な人は、キャラ的に魅力を感じても避けるべきだろう。
 ガーディアン達が触手をあらゆる部分に押し込まれる姿に、嫌悪感をもよおすかもしれない。
 また、「蟲使い」という蓮の職業は、彼を始めとする「蟲使い」の一族や「蟲」そのものの説明がほぼ無い事から考えて「人が女性を全身くまなく責める」というコンセプトを実現させるために用意されたものであるということは間違い無い。
 BOO自身、この類の知識に関して詳しく無いため多くは語れないが、「蟲」とは原型のよく判らない触手状の生物だけを指すのでは無いはず。
 ゲーム中での「蟲」の定義が制限されているなら話は別だが、そういうわけでもない。
 それなのに、他に蓮がH以外で使ったと蟲いえば、戦闘用の昆虫型を数種と、追跡用の小さい虫が僅かに一匹。
 これだけで蓮はいくつもの分家を束ねる一族の頭領だという。
 いくら数多くの蟲を使役するシーンが用意されていなかったとはいえ、「蟲」という設定に対してあまりにお粗末ではないだろうか。
 そのため「蟲」という言葉に陰陽道などのオカルト的内容を期待する人も避けた方が賢明だろう。
 あまりの設定の無さに怒りすら覚えるかもしれない。

 とにかく、前半は自由選択の触手陵辱ゲーム、後半は硬派なストーリー固定型ゲームという、まるで違う二つのゲームをくっつけたかのような違和感がある
 前半のエロの方に力を入れすぎたせいなのか、そればかりが目立ち、後半はシナリオを始め戦闘、ノーマルH、蟲使いの設定などを取って付けたように見えるのだ。
 戦闘は一番強い蟲を育成できれば、戦略など考えずにそれを連発すればいい(というか、それしかやりようがない)し、たまに出てくる男の雑魚ガーディアンは面堂家私設警察(BY「うる星やつら」)のサングラス集団の如く同じ顔のキャラしかいない
 話の展開も「仕返しは仕返ししか生まない」という美弥子の決意は立派だが、前半は不自由なただのお嬢様にしかみえない。
 後半との差を狙って雰囲気を出したくなかったというのなら、せめてガーディアン達から匂わせるべきだったろう。

 またラストで紫愛がつれてくるガーディアン達は徹底的に心を壊されたはずなのに、どうやって自我を取り戻したのかも不思議。
 確かに、精神崩壊していたのだから「説得するのに時間がかかったけど」と言う紫愛のセリフは正しいと思うが…
 蟲を使って操り人形にした方が、手っ取り早いと思ってしまうのは私だけではないはずだ。
 その紫愛自身も、後半に一時反目するというゲーム中で重要なシーンを持っている割に、前半での伏線の無さが災いして「今ごろ何を言うか」という感じが強くなってしまっている。

 それから、蓮を始めとする「蟲使い」の一族や「蟲」そのものに設定や説明がほぼ無いのは、現代劇にまとめるためにファンタジー色を削りたかった結果なのだろうか。
 蟲の定義は曖昧だし、わずかな昆虫と、ほとんど説明の無い不定形生物しか使役しない蟲使いという、なんとも説得力の無い状態しか用意されていないため、女性が陵辱されている部分以外のパンチが弱い。
 考え方によっては、下手な設定を作るより、いっそ何もない方が良いだろうと判断した結果ともとれるが、やっぱりそれでは物足りない。
 詳しくとは言わないが、想像の種は全体に満遍なくちりばめて欲しかったと思う。
 どうせならいっそ前半と同じ自由度を後半にも用いるべきだったのではないだろうか。
 ラストが決まっているということは、過程が強引でも必ずそこにたどり着くということ。
 これを最大限に利用して、美弥子を誘拐するという中継点を置き、前半と同じく自由にイベントを起こせるようにすれば、後半のシナリオ等の甘さをごまかせられる上に、それなりに楽しめるものとなったかもしれない。

 キャラごとのエンディングを用意せず、全体で一つだけのせいか、なんとなく古典的な空気が漂っている気がする所が個人的には好感触だが、それでも人に勧めるにはCG以外はどうかな思ってしまう。
 プレイすると、自由度の高さと伏線の弱さが中途半端にゆれているイメージが伝わってくる、そんな感じのある作品だった。


(Mr,BOO)


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