Missing 〜いつかきっと〜
ピンパイが送る、とっても小粒なお手軽恋愛ADV
1.メーカー名:Pinpai
2.ジャンル:ADV
3.ストーリー完成度:D
4.H度:D
5.オススメ度:D’
6.攻略難易度:E’
7.その他:オープニングムービーは結構きれいで、鷹羽は好きだぞ、と
(ストーリー)
主人公・結城雅弘は、両親の不在により、幼なじみで妹分の美咲と二人暮らし。
3年前から、毎年バレンタインになると彼の元にチョコレートが送られてくるようになった。
差出人も何もなく、ただ「Missing」とだけ書かれたカードが添えられて…。
内容的には、本当に大したものではない。ネタばらしをしてしまうと、「幼なじみである魅悠が、3年前に初めて本チョコを雅弘に送ったにも関わらず、それに気付いて貰えなかったために、意地を張り続けて今に至る」、とこれだけのことだ。
一応、バッドエンドになると、魅悠自身から説明して貰えるのだが、基本的には、魅悠と瑠璃のシナリオでの小道具という印象が強い。
それにしたって、瑠璃の存在によって魅悠が素直になる展開も、どうもイマイチだし、やはり良い評価にはならない。
『Missing』…“あなたがいないと寂しい”という魅悠の想いは、中3というお子様な年頃の時に初めて本チョコを送ったのだということを差し引いても、どうも納得できない。
これは、シナリオの薄さに原因がある。
魅悠の家がお金持ちだというのも、なんだかあまり意味を感じないし。
また魅悠の場合、美咲のシナリオのエンディングで、美咲が引っ越してしまって寂しかった雅弘と『そういう関係になってしまった』のに、あっさり美咲に譲ってしまう。
バッドエンドの時もそうだが、魅悠が、雅弘に選ばれなかったことを悲しむのが瑠璃のシナリオだけというのも、ちょっと「?」な展開だ。
基本的には、女の子2人一組で1つのシナリオになるというシステムなので、各キャラの出現位置を把握し、毎日のように会い続けていればいい。
出現場所は、魅悠、枝理を除いて固定なので、あっさりしてい過ぎて拍子抜けしてしまうほどだ。
枝理だけが1人で独立しているが、だからと言って、特に変化があるわけでもなく、パートナーとなるキャラがいない分、出番も少なく、本当に隠れキャラじゃないのか不安になるくらいだ。
また、ゲーム期間が2週間と短いため、1人1人のイベントの数が少なく、どうにも軽いと言うか薄いと言うか、小粒すぎる。
第一、肝心の差出人不明のチョコの話は、魅悠と瑠璃以外のシナリオでは、すっかり忘れ去られてしまう。
しっかり者風な外見でマヌケ、ツッパリ風でしっかり者、うるさくて大マヌケで本当に何の取り柄もない眼鏡っ娘など、外見と中身のミスマッチを狙ったキャラ作りなどで特徴を持たせようとしているのはわかるのだが、そればかりでは何の意味もない。
とにかくゲーム期間が短いのは致命的だ。
魅悠&瑠璃のおちゃらけシナリオの中で魅悠が言っているように、恋愛モノの定番の展開が結構多いのに、独自性のあるイベントを加えてないから、薄っぺらくてしょうがないのだ。
そもそも、ギャルゲーのくせにデートイベントが各キャラ1回ずつしかないのだから、呆れるほかない。
しかし、美点がないわけではない。このゲームには、ほとんど唯一と言っていい美点がある。それが眼鏡っ娘の弥生だ。
大ボケで物忘れがシャレにならないくらい激しく、人の話は聞いちゃいないし、とにかくマイペースだ。
ところが、弥生には脳腫瘍という設定がついている。
一概には言えないが、腫瘍が脳を圧迫する位置によっては、本当に痴呆症のような症状が出るものらしい。つまり、大ボケ娘に合理的な理由を与えたわけだ。コレは鷹羽的にはとてもポイントが高い。
しかも、ちゃんと死んじゃってエンディングとなるのも嬉しい。
「人の不幸を喜ぶのか」と言われると困るのだが、鷹羽は、悲劇は悲劇として、ちゃんと終わらなせければならないと思っているので、主旨一貫していることが嬉しいのだ。
同情から始まったはずの恋にどっぷりとはまって、週末ごとに弥生の元を訪れる雅弘。
弥生が死んだ後も、その余韻に浸り続けている姿は、とんでもなくぬるま湯なこのゲームにあって、唯一主義主張の見える展開だと思う。
このシナリオがなければ、このゲームは見るべきところがないかもしれないくらいだ。
ほかに特徴的なのは、おまけシナリオの深雪と恵編だろうか。
両親の死んだ姉妹の二人暮らしで、本編中では「生活費がどうなってるのかは、気にしないでください」的な描写だったのだが…、まさかコミケで生活費を稼いでいるとは…。
本編中では、優しいしっかり者だった姉深雪が、厳しいちゃっかり者になってしまっている…。
あともう1つ文句を言うと、一応サウンドノベルタイプのゲームなのに、クリアしても選択肢が増えたりしないという点がある。
「あ、新しい選択肢だ」とか思っても、異様なディフォルメキャラがちょっと暴れて、それでエンディングというのは、ちょっと、ね。
ところで、「HMX−112〜2世誕生〜」だけど、いいのか?
耳にアンテナのついた女子高生型メイドロボが、クマ使いの女の子やら無口な魔法使いやら3つの僕をつれた超能力者と一緒に、にんじん星からやってきた3種類の制服のウェイトレス軍団と戦うなんてネタ使って…。
スタッフの名前にも「HMX−12」とか、「木ノ下留美」とか、どっかで見たような名前が並んでるし。
片方はピンパイからビデオ出てるとは言え、一応他社のゲームなんだし。
総論としては、『いかにもピンクパイナップルらしさに溢れたゲームである』というところだろうか。
(鷹羽飛鳥)