メタモルファンタジー
 魔女っ娘と一緒に魔王をやっつけろ!

1.メーカー名:エスクード
2.ジャンル:マルチシナリオSLG
3.ストーリー完成度:C
4.H度:C
5.オススメ度:D
6.攻略難易度:A
7.その他:もうちょい戦闘バランスが良ければ、オススメ度B付けたのに。


(ストーリー)
 ここは、魔法の存在する異世界アンゴルノア。
 だが、科学の発達に伴い、魔法は廃れ始めていた。
 ある日、人間に変身できる魔法を覚えるべく、私立聖泉エンゲル学院に転入したヌイグルミ型生物ハタヤマ・ヨシノリは、フィリア・カーネリアス、ビビアン・カーネリアス、チョウ・リンレイ、シルフェらと友達になった。
 そして、女性とを襲った怪物との疑惑をかけられたハタヤマは、フィリア達と一緒に校内の見回りをしている最中、女生徒を襲っている怪物の毒を浴びてしまった。
 ハタヤマが追い詰めたその怪物の正体:ペンギンのヌイグルミ型生物の篠原は、毒で死なないようにするには、ハタヤマがメタモル魔法を覚えてメタモル獣に変身し、女の子に悪戯しするしかないと言う。
 闇魔法であるメタモル魔法だが、これを身に付ければ人間にも変身できるようになれるのだ。
 そして、篠原は、悪戯を続ければ、やがて女の子との間に愛が芽生えるかもしれないとも言う。
 悩んだ末にハタヤマはメタモル魔法で友達に悪戯を始めるが…。


 意外と理に適った展開をするゲームだ。
 かつて魔王を復活させた黒魔法使いを倒した白の魔法使いは、危険な魔法などを闇魔法と位置づけて封印し、それまでの魔法使いというカテゴリーは失われ、光魔法のみを使う魔法使いを魔女っ娘、そのパートナーを使い魔と呼ぶようになった。
 だが、強力な魔法や便利な魔法のほとんどは闇魔法に分類されてしまい、魔法でできることは非常に限られてしまった。
 それを補うために発達した科学がまた魔法を廃らせ、結果として魔女っ娘の質も年々下がる一方…。
 闇魔法学会の総帥であるヴィルヘルムは、そんな現状を打ち破るために、魔王という恐怖を突きつけることで魔女っ娘を追い詰め、レベルアップを図ろうとしていたのだ。
 一方ではエンゲル学院の校長として魔女っ娘や使い魔を育成し、もう一方では、彼らを焚き付けるために魔王を復活させようとする。
 方法はともかく、ヴィルヘルムの目的そのものはマトモだ。
 実際ヴィルヘルムは、校内を騒がせている怪物の正体がハタヤマだと知った後も、そのことでフィリア達が訓練に励み、魔力を増大させていることに満足してハタヤマを野放しにしている。
 もっと凄いのは、ハタヤマ自身が世界を征服してしまう魔王シナリオでの展開で、魔王復活に失敗し、ハタヤマが変身した聖京介(ひじり・きょうすけ)に敗れたヴィルヘルムは、ハタヤマを新たな魔王にすることで当初の目的を果たそうとしている。
 魔法を極めると核爆発すらものともしなくなるという設定にしても、ヴィルヘルムですら隙を突けば拳銃だけで殺せるということでバランスは保たれている。
 ゲーム中に登場する魔王は、復活が完全でないが故に能力をほとんど発揮できないためにハタヤマに倒されてしまうのだ。
 ヴィルヘルムが、魔王復活後に学院を結界で閉じてしまったのは、その時点でプロの魔女っ娘が大量に投入されると勝ち目がないからだろう。
 生徒達を極限状態に置いて精進させようというだけの理由ではなかったのだ。

 また、“魔王は復活させた人間の願いを1人につき1つずつ叶えなければならない”という呪縛も、復活阻止のための呪いとしてはなかなか面白い。
 だからこそ、狐火ナナリ(ゲーム中ではルシフェルと名乗っている)が死んだルシフェル(こっちが本物。狐火ナナリは、ルシフェルを生き返らせるまでの間、ルシフェルの姿に化けている)を生き返らせるために魔王復活に荷担したということに説得力がある。
 この設定に関して面白い使い方をしたのがシルフェシナリオで、シルフェの行動が結果的に魔王復活に役立ってしまったために、シルフェの「もといたところに帰って!!」という願いで魔王は自らを再封印する羽目になってしまった。

 こういった辻褄の合う展開は随所に見られる。
 例えば、メタモル獣の毒は本来強烈な媚薬だが生殖器官を持たないチャック族(ハタヤマや篠原)には死をもたらす毒となることや、それを防ぐために生殖器官のある生物にメタモル魔法で変身して射精すればいいこと、本来メタモル魔法はチャック族が子孫を残すために生みだした魔法であることなどだ。
 実際、女の子に悪戯しないでいると、1か月目には死んでゲームオーバーになる。
 そして、子孫を作るための必然として生まれたはずのメタモル魔法が闇魔法に分類されたのが、メタモル魔法に溺れて悪に走る人間が多かったせいというのも、魔王シナリオで闇に取り込まれていくハタヤマを描くことで説明している。
 メタモル魔法を無効化するアイテム「メタモル死ね死ね鏡」まで設定してある周到さだ。
 そして、ナナリシナリオでは、ナナリがその闇魔法の知識を使ってメタモル獣の毒を消す薬を作りハタヤマに与えているが、魔王シナリオでは、ハタヤマの毒に冒されて牝奴隷になったフィリア達のためにナナリが解毒薬を作っている。
 こういった整合性は実に上手く取れている。

 ところが、逆にフィリア達メインヒロイン側の設定には、若干乱れがある。
 例えば、ナナリシナリオではネクロノミコンの解読が後半の鍵となっており、唯一読むことのできるフィリアが夜を徹して解読するという展開になるが、よく考えてみればフィリアは徹夜どころか1日10時間眠らないと駄目なタイプだ。
 フィリアシナリオでは、8時間も寝ておきながら寝不足を訴えていた。
 また、リンレイシナリオでは、リンレイがハタヤマから教わったコツを生かして奥義:龍閃を身に付けているが、なんと魔王シナリオでは自力で編み出してしまっている。
 龍閃は、あらゆる防御魔法を無効にする無敵モードの技であり、聖が同じタイプの聖フィニッシュブローを使えることから、ハタヤマがコツを教えることができたのだ。
 また、リンレイシナリオのラストでは、リンレイがナナリのことを「拳で語り合った友」と言い、魔王が取り憑いたままのナナリを攻撃し続けることでナナリの自我意識を目覚めさせているが、実際の所はリンレイが一方的にナナリをライバル視していただけでナナリはリンレイを友達とは思っていなかったはずだ。
 ナナリにとって「友達」という言葉はとてつもない重さを持つキーワードであり、ナナリは友達のためなら自分の命を捨てることも厭わない。
 ナナリが「友達」であるルシフェルを生き返らせるために自分の命を懸けて魔王復活の片棒を担いでいることが全てを物語っている。
 ナナリのリンレイに対する態度を見れば、ナナリがリンレイを「鬱陶しい奴」くらいにしか思っていなかったことは明白なのだが。
 これらはミスと言うべきだろう。

 また、ハタヤマが愛に目覚めるくだりについては、どうも統一が取れておらず、イライラする面があったことも否めない。
 ただ、女の子側から見た場合、かなりの部分で統一が取れていたことは評価すべきとも思える。
 シルフェとビビアンの2人は、どのシナリオでもハタヤマを最初から好きだし、ビビアンについて、フィリアが種族の違いから反対するというのも面白かった。
 フィリアは、自身のシナリオでも種族の違いからハタヤマとの付き合いを躊躇していたようだから。
 ビビアンに至っては、ハタヤマが自分に悪戯したのは許せるがほかの女の子にもしていたことが許せないというストレートな怒り方をしている。

 エンディングに関しては、シルフェ・ルシフェル・魔王のシナリオはいいのだが、フィリア・ビビアン・リンレイのエンディングはイマイチだった感がある。
 今ひとつ“壁を乗り越えた”という印象が薄いせいかもしれない。
 ビビアンの一途な愛は分かりやすくて良かったのに、ラストは母親への想いがメインになっちゃったからな〜。
 フィリアのエンディングが一番つまんなかったのもちょっと…。
 仮にもメインヒロインなんだからさ、人間界に派遣(左遷)されて墜落して終わりってのは…。


(総評)
 基本的に、女の子を倒して悪戯をするというシミュレーションパートと放課後に会話する相手によってシナリオルートが変わる恋シュミパートからなっているわけだが、一番多いのが授業等で主人公のパラメータを上げる部分であり、この部分がワンパターンなのがちょっと寂しかった。
 しかも、サボりすぎたり成績が異様に悪かったりすると1か月目の月末テストで退学(バッドエンド)になってしまうが、フツーに授業を受けてさえいれば絶対にそんなことはない。
 というより、退学になるためには、毎日さぼり続けるなどの意識的な操作が必要だ。

 戦闘は、向き合った互いのキャラの前に置かれた3つずつの魔法陣にそれぞれ魔法を込め、向かい合った魔法陣の魔法をぶつけ合うという形式で、ハタヤマが使える魔法はパラメータに合わせたレベルのものに限られ、HPやMPもパラメータに左右されるが、女の子に悪戯する、つまり女の子との勝負に勝つためには、さほどの能力は必要とされない。
 また、途中数回出てくる魔獣フェンリル(暴走した篠原)との戦いもさほど難しくはない。 
 このゲームは、ラストのボス戦辺りまでは大した苦労もなく勝ち続けられる程度の難易度なのだ。
 と・こ・ろ・が! ラスボスが異常に強い。
 ほとんどフルスペックに育て上げても、なかなか勝たせてもらえない。

 戦闘で使える魔法は、大きく分けて攻撃呪文・攻撃呪文破壊呪文・攻撃反射呪文・魔力回復呪文などの攻撃系(赤)、攻撃強化呪文・魔力回復強化呪文などの攻撃補助系(青)、回復呪文・攻撃吸収回復呪文などの回復系(白)の3種類があり、攻撃呪文同士がぶつかれば、威力を相殺し合うことになる。
 これにより、“敵の前に並んだ3枚の魔法陣の色を見て敵の呪文を予測し、それに応じた呪文を選ぶ”という戦闘になり、重要なのは敵の手の内を読むこととなる。
 本来なら、敵の攻撃力アップ魔法を破壊したり、魔力の回復速度を上げる魔法を使ったり、敵の攻撃魔法を反射したりといった腹のさぐり合いを楽しむためのシステムだ。
 ところが、魔王やヴィルヘルムのようなラスボス系キャラは、あまりにも強すぎるのだ。
 攻撃反射魔法を無効化し、一撃でHPの2割近くを奪うグラビトロン(赤:魔王・ヴィルヘルム共通)や、こちらの魔法を3つ全て無条件で消滅させる時空の狭間(赤:魔王)、正面にあった呪文を数ターン無効化するレッドカース(青:ヴィルヘルム)などが頻繁に叩き付けられて、きついなんてものじゃない。
 敵の攻撃パターンを類型化し、それに応じた戦いをするしかないのだ。
 多種多様な魔法のほとんどは最終決戦では使えないまま終わってしまい、非常につまらないことになる。
 女の子との戦闘では、何も考えずに攻撃魔法だけ使っていてもほとんど勝ててしまえるだけに、ますます魔法の活躍の場がなくなる。
 結局、聖フィニッシュブロー(あらゆる防御呪文を無効化するが攻撃力自体は下から2番目と弱い)と攻撃呪文破壊呪文を中心に長期戦を挑むしかなく、非常に辛かった。
 鷹羽は、最初のプレイでは魔王に28連敗を喫した。
 ここまでバランスの取れていない戦闘にする必要があったのだろうか?
 前作『流聖天使プリマヴェール』では、ラスボス的位置にいる将軍との戦闘に負けてコンティニューすると、敵が少し弱くなってくれたため、2回もコンティニューすれば勝てた。
 今回は、そういった救済措置もないようで、“とにかく勝つまでコンティニュー”状態になってしまう。
 また、先のとおり長期戦になるため、そこで話の流れが分断されてしまう。
 このバランスだけで評価が2ランク下がったと言っても過言じゃないくらいの欠点なのだ。
 ほかに欠点としては、“敵との戦闘に負けると何が何でもゲームオーバー”ということくらいしかない。
 ちなみにこれは、ハタヤマを自分の使い魔にしようとしている魔王が、「お前が負けたら妾(わらわ)の使い魔になれ!」と戦いを挑んでおきながら、ハタヤマが負けると殺されてしまうというものだ。
 唐突にゲームオーバーになってしまうという欠点だが、厳しい戦闘の挙げ句にゲームオーバー食らった後では、“負けた”という一点に怒りが集中してしまうため、さほど気にもならない、というより「えーい、コンティニューしてやる!」で終わる話だ。

 こう考えると、戦闘バランスが偏っていることがどれほど痛い欠点だったかがよく分かる。

 あとは…、あ、そうそう、Hシーンのグラフィックが使い回しで、文章と合ってなかったっけ。


(鷹羽飛鳥)

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