もっとLOVEちゅ! “恋愛CHU! ファンディスク”

ちゅーちゅーが、もっとちゅーちゅーになりました
1.メーカー名:SAGA PLANETS
2.ジャンル:アプリケーションソフト
3.ストーリー完成度:B
4.H度:なし
5.攻略難易度:「ちゅーちゅーたたき」のみB
6.オススメ度:「恋愛CHU!]でトゥルーエンド全部見た人はA
7.その他:知らない人でも、それなりに楽しめるので手に取ってください。


(ストーリー)
 「LOVEちゅ!」は「恋愛CHU!」(以下「本編」と明記)のおまけディスクなので、詳しくは私が評論をしている本編の方を見てください。

 まさか「恋愛CHU!」が、こういうソフトを出してくるとは思わなかった。
 壁紙、スクリーンセーバー、時計やCDプレイヤーなどは、この手のファンディスクに見られるアプリケーションと同様なので特に何も言うことはなし。
 この他にミニゲーム1本、ショートストーリー4本がある。
 ショートストーリーはゲームの要素を持っておらず、ゲームとしての評価はできないから、各シナリオについて感じたことを書いてみた。
 花梨には多少「?」がつくが、本編の主人公の視点ではなくヒロインたちの視点で語られていく。
 それぞれの思う「ずっと一緒」を堪能してほしい。


美月編
 本編のエンディング直前、中学の恩師に二人で婚約の報告に行く途中の回想、中学の卒業式をメインに、その頃から主人公・橘慎治が好きだったんだな、と再確認する話。
 思い出と言うなら、本編での美月をかばって慎治が退学…の方がインパクト大だが、テーマの「ずっと一緒に」と、美月自身の一番綺麗な思い出はこの時期だというシナリオライターの思い入れから、中学生を選んだのだろう。
 幼馴染という設定上、テーマ的には一番まとまっている。
 シナリオ選択時に、ヒロインの七海をさしおいて一番上にあるのはそのためか。


七海編
 他シナリオが本編のエンディングに至るまでの話なのに対し、本編でメインだったからかこれだけが完全に本編の正当な続きで、七海が十年の眠りから覚めたその後の話になっている。
 ようやく手に入れた自由の中で、七海は初めて自分の力で動き出す。バイト、慎治との喧嘩、そして見つける自分の居場所。
 本編で与えられた弟のドナーとなる前の限られた自由ではなく、体にハンデこそ抱えてしまったが、それを補って余りある自由を精一杯生きる七海にジーンときてしまう。
 後述のストーリーと合せ、一本の続編として成立させてもいいと思うほど、4本の中ではダントツの出来。
 ただし、本編でトゥルーシナリオをクリアしていないと感動は半減。
 本編の批評をした時、「トゥルーストーリーを前面に押し出すべきだ」と私は書いたが、その考えは間違っていなかった。
 余談、本編のサブキャラだった大地君と光君、カッコよくなっていて残念。
 選択画面のバランスを考えれば、美月編が選択肢の最初にあるのだから七海編は一番最後にしてもいいと思うが、なぜ二番目にしたのだろう?


澪編
 二人が社会に出てしばらくたった日が舞台。話は澪のモノローグで進む。
 二人で行くはずの旅行の日、慎治が会社から呼び出され、彼女は先に一人で向かう羽目になる。
 慎治に頼るだけの女になりたくない、でもすぐ近くに居て欲しいという相反する思いで、なかなか素直になれない彼女が可愛く見える。
 また、温泉シーン(肩口まで)や特殊効果(と言ってもCGをアップにするだけだが)、着物姿等、妙に違う部分に一番力が入っている。
 個人的にイチ押しのキャラなので、ちょっと嬉しいシナリオ。


花梨編
 話の設定は、まだ慎治が高校を卒業する前のこと。
  クリスマスを慎治とすごしたいのに、時間があまり取れない彼に花梨は怒ってしまう。
 家がパン屋であるために、小さい頃から家の中で一人だった花梨は、また一人ぼっちだと思うと、頭で解っていても心が納得できない。
 自分を好きでいてくれる人と一緒にいたい、その心を察してあげたい。

 しかし納得できないのは、実は我々プレイヤーの方
 この話の中で、花梨は慎治と「お付き合いするようになって」と語る。
 だが、その彼は本編の花梨シナリオで、トゥルーエンド・ノーマルエンド共に、6月の終りに退学処分になっているのだ。
 それなのに、花梨へのクリスマスプレゼントを宅急便で送ってもらう場所は、学園の男子寮の前。
 なんで?

 本編の文章から、慎治は現在花梨の家で住み込みになっている。
 「家に届くのは恥ずかしいから知り合い宛に出した」のならまだ納得できるが、彼は「寮は荷物のチェックが厳しいから、入口で届くのを待っていた」と花梨に話すのだ。
 この話での、慎治の住まいは一体どこにあるのだろう?
 更に、花梨の言葉に出てくる「竜也お兄ちゃん」の存在はもっと問題だ。
 花梨は、竜也よりも慎治が好きだと認識している。
 しかし、うたた寝の夢の中で小さい頃の姿になった彼女を諌めいたのは、家では兄妹、学校では先生である「お兄ちゃん」だった。
 この後花梨は「夢に出てきたのは(慎治)お兄ちゃん」だと言うが、この夢では、どう考えても竜也の思い出がまずそこにあって、その上に慎治を当てはめている様にしか見えない。
 それはつまり、“竜也より好きだから、竜也にいて欲しかった場所に全て慎治がいればいい”ということではないのだろうか?
 花梨自身おそらく意識してないだろうから、かなり残酷な話だ。
 本編のラストで慎治は、妻になった花梨から「あなた」と呼ばれていたから、今回のストーリーの後に、どこかで修羅場があるに違いない。
 それにしても、これだけ引っ掻き回したのに本編から通して「となりのお兄ちゃん」しか明らかでない“竜也”という男、謎である。
 全部夢オチなら笑い話だが、そうではないようなので、4本の話の中では一番見栄えの悪い話になってしまっている。


七瀬編
 隠しストーリー…といっても、全ての話を見れば出てくるので大げさに言うほどではない。
 パッケージに入っている封筒や、キャラボイスの名前が???なのを見れば、なんとなく想像はつく。
 この話は、幸せを手に入れた七海の元へ一通の封筒が届くところから始まる。
 つまり、前述の七海編の続きで、併せて一本の構成になる。
 手紙の差出人は七海の弟・七瀬。
 手紙を読んだ七海は、会いたいと願う弟のため、自分の存在を否定され続けた生家へ向かう。
 手紙は、プレイヤーの心も七海と一緒に神崎家に向かわせる。
 なぜなら、パッケージの中にはソフトとともに本物の手紙が“同封”されているから
 七瀬からの手紙を、画面ではなくプレイヤーに本当に配達するとは、なんて心憎い演出だろう。
 手紙には、彼の気持ちが淡々と綴られているだけだが、“自分が手にして読む感覚”が大切なので、あえて文面の内容については何も言わないでおく。
 同じ家の中に育ちながら、三十年近く経って初めて顔を合わせる二人が交わす第一声「初めまして」は、本編の七海に入れ込むほどその重みを増していく。
 七瀬との会合を経て、ここで七海はようやく本編から通じて、全てにおいて完全に解き放たれるのだ。
 人は意図的に存在を無視しようとすればするほど、逆に意識しすぎて振り回される。
 双子は“古いしきたり”にとって災いかもしれないが、本当は新しい未知の世界に向かう“希望”だと、双子のパターンに対する一つの回答が見て取れる。
 七海編とともに、ショートストーリーにしておくのはもったいない話だ。
 満足して帰った七海は、七瀬が既に妻子持ちであることを知らない。
 家に対するわだかまりが解けた今、七海が次にこの家を訪れる時にはきっと笑顔でやって来て、そして新たに知る七瀬の家族を見て、新たに増えた絆に喜びの涙を流すことだろう。
 そう想像せずにはいられない、いい話だ。


【ちゅーちゅータタキ】
 このディスクに入ってる唯一のミニゲーム。
 加えて、簡単に言えばただの「もぐら叩き」。
 主人公は、この「ラブちゅ」に唯一出演しているサブキャラの弥生先生だ。
 先生は本編の「寮のおばちゃん」と二足のわらじがウケたようで、笑いをとるキャラでは無かったにもかかわらず、その格好のみでの出演となった。
 その恨みを晴らさんとしてか、先生はハリセンを手に、船を荒らす「ナナちゅー」「レイちゅー」「カリちゅー」「ミッちゅー」(今勝手に命名)の「ちゅーちゅー」どもと戦いながら宝の島を目指す。
 全部で三面しかないが意外と難しく、一発でクリアできたプレイヤーはそういないと思われる。
 私はテンキーの1,4,7を左手で、3,6,9を右手で受け持ち、間の2,5,8はどちらか動かしやすい手でフォローして、なんとかクリアすることができた。
 苦労の末、手に入れた宝は「七海のヒミツ」だが…、まぁ良くも悪くもミニゲームかな。
 何かしらのタイピングソフトをプレイする前の、指の練習にはちょうどいい、

 残念な点を挙げると、起動時にOPを流すなどして、本編の出だしのノリを「ラブちゅ」にも生かしてほしかったことと、ミニゲームも含め短編ばかりの構成で、壁紙以外のCGが少なくて物足りなかったことだろうか。

 それと、ミュージックCDの出来が今一つ。
 歌の焼き直しは多いし、新たに入ったエンディングの歌は個人的にバックの音が気に入らない。
 パラパラバージョンよりも、もっとキャラのテーマ曲を作って欲しかった。


(総評)
 全体としては、ストーリーはフルボイスでプレイしても40分程度で終わり、煩わしさが無く、ミニゲームもついつい時間をかけてしまうほどむちゅーになれて面白い。
 「ちゅーちゅータタキ」もいいが、特にショートストーリーにはプレイする意義を見出せるので、ファンディスクとして買って損の無い、まずまずの成功作だ。
 近く、ノベルも出ることだし、その気があるなら、次は更なるちゅーちゅーを目指して欲しい。

 以上でちゅ。

              
 (Mr.BOO)

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