Cafe little wish
  魔法のメニューでどんな悩みもバッチリ解決♪

1.メーカー名:ぱてぃしえ
2.ジャンル:カフェもえアドベンチャー
3.ストーリー完成度:D
4.H度:C
5.オススメ度:C
6.攻略難易度:D
7.その他:全体的にロリチック。


(ストーリー)
 とある王国の片田舎、街道沿いの小さな町。
 そこにある「カフェ・リトルウィッシュ」に一人の記憶を無くした若者がやって来ました。
 お腹を空かせた若者は、そこで思うままに飲み食いした挙句に食い逃げをしました。
 しかし、そんな悪事が上手くいくほど世の中は甘くなく、当然のように捕まった若者は、店の店員であるお嬢さん方に袋叩きにされてしまいました。
 徹底的に懲らしめられ、あとは役人に突き出すだけとなったそのときに、オーナーであるセレスの鶴の一声で若者は、店の手伝いとスペシャルメニューの実験台となることを条件に許して貰う事になったのです。
 そしてレオンと名付けられた若者の、無償奉仕と人体実験の過酷な日々が始まるのでした。


 このゲームでは、プレイヤーは記憶喪失の若者レオンとなってカフェ・リトルウィッシュにて起こる様々な出来事を解決し、従業員の女の子達と仲良くなるのが目的である。
 だがレオンが主人公となっているものの、プレイヤーの視点はどちらかというと、レオンが巻き込まれる騒動を端から眺める形となっている。
 つまり、第3者の視点からドラマを見ているような形で進行していく。
 そのため、プレイヤーと主人公レオンの一体感というものが感じられない。
 更に付け加えると、彼の性格は傲岸不遜で態度は常に偉そうなので、人によっては感情移入する事が難しいかもしれない。
 逆を言えば、彼をプレイヤーキャラとして扱うよりも、ドラマの主役のような形で扱うことで上手く立ち回らせているのだ。
 この辺りは人によって評価が分かれるところだろう。


 ゲームシステムは一般的なADVと同様のコマンド選択式となっており、選択肢によってヒロインの好感度が変化し、9日目にて好感度が高い順に2人のヒロインのエンディングルートが発生する。
 特別注目すべき点はないのだが、一つ気になったところとして、攻略対象以外のヒロインのエンディングルートが何故か発生する。
 このゲームの序盤は、ヒロイン毎に個別に発生するイベントが少ないため、一つのイベントの結果がヒロイン毎に違うというものが多くある。
 これが、後のイベントで以前の結果を踏まえた上で、ヒロイン毎に展開が変わってくるというのならば良いのだが、そういったことは全くない。
 このため、複数のヒロインの同時攻略をやる意味というものが、極めて薄い。
 それなのに、9日目にて攻略目的としたヒロイン以外のエンディングルートの選択肢が在ったとしても、誰も選ばないのではないだろうか?

 このゲームには、「キャラクターの好感度が入れ代わってしまう」というバグがある。
 修正差分を加えていない状態であるならば、このバグを回避する手段として無用と思われる選択肢を使用する事が出来る。
 まあ、差分を当てれば全く問題はないのだが…。


 ストーリーは、前半の共通ルートと、後半のヒロインルートに分けられる。
 前半はカフェ・リトルウィッシュにやって来る人達の悩みをヒロイン達と協力して解決することが目的となっており、後半はレオンの正体とそれを知ったヒロイン達の葛藤を描いている。
 前半と後半ではストーリーの中心となるべき部分が異なっており、リトルウィッシュという舞台からヒロインにスポットが移っていくのだが、ここでの話の繋がり方が少し強引に思えてしまった。
 ストーリー的にみれば、序盤での謎を終盤で解明するといった流れなので別に変ではないのだが、ゲームをプレイしてみるとコメディー部分のテンポのいい面白さを継続せずに、何故かストーリー性をメインに押し出してしまうので、話の流れが悪くなってしまう。
 確かに後半もコメディー的な部分を持っているのだが、それが充分に活かされているようには感じられない。
 そう感じてしまう原因は、ここで中心になるはずの「レオンの失った記憶と正体」というものが、あまりにも必要性がないためだ。

 レオンの正体は、隣国のペリグー王国の王子で、この国を荒らしまわっている通称暴れん坊プリンスなのだが、当人はその記憶を無くしている。
 元来の性格のためか、レオンは失った記憶に対してそれほど執着心を持っておらず、居心地の良い現状を満喫している。
 そして、リトルウィッシュのメンバーも彼の記憶に関しては特別興味を持っていないために、思い出させようともしなかった。

 確かにこれならば、レオンの記憶に焦点を当てなくても話は進んでいく。
 実際、前半のストーリー展開はそんなことに関係無く見事なまでにドタバタコメディーを貫いており、余計な部分がないためにストーリーが充分楽しめる。
 だが、後半にて突如湧いて出る彼の記憶の問題は、少しずつ伏線が用意されていたにも関わらず、今までのストーリー展開から大きく外れているような印象しか受けないため、意外性どころか何を今更としか感じられない。
 何故この様に感じてしまうのかというと、既にドタバタコメディーとしてのストーリーの大部分が完成しており、本来ならば重要なはずのこの部分が明らかに必要のないものになってしまったからだ。
 当初は、後半のイベントの起爆剤的な役割を与えられていたはずだが、この設定は本編に絡ませ続けるにはあまりにアクが強く、使い方を誤ると展開がとてつもなくくどくなる恐れがある。
 そのため、重要な要素ながら詳しく触れる事も出来ず、結果放り出されたままストーリーを進行させることになってしまった。
 そして、本編でレオンに求められている役割は、「自分勝手で偉そうだが、周囲の女の子に対しては優しさを持っており、料理に対する知識がずば抜けている」なので、わざわざ記憶を失った王子である必要性はないのだ。
 これでは、この設定を持て余しているようにしか思えない。
 しかも、各ヒロインのエンディングは、彼が王家の人間である意味をあまり感じられないものばかりだ。
 ならば王子という点に拘らずに、上記の条件を踏まえたもっと他の役割を与えた方がよかったのかもしれない。


 話の流れに対しての問題なのだが、前半のストーリーはレオンの正体が必要以上に絡まないせいで、進行に対して蛇足となる余計な部分が少ないために面白くまとまっている。
 しかし、後半では逆にそれが仇となってしまった。
 それは、何時ヒロイン達がレオンに対して好意を持ったかが分かり難いという点だ。
 それぞれ、見せ場的なイベントも用意されているのだが、そこに至るまでもしくはそれを経てからの感情の変化というものが、本編中から読み取れないのだ。
 後半の個別ルートでは当然のようにヒロインは好意的なのだが、前半では普通に接していたので急に話が切り替わったように思えてしまう。
 もう少し序盤〜中盤にかけて、ヒロインを際立たせるようなイベントがあればこんな印象は受けなかったはずだ。

 更に、ゲーム中での経過時間は「一つのイベント=一日」となっているため、ゲーム中では省かれている日常生活の部分で何かがあったと仮定することも困難になってしまっている。
 仮に見えないところでの日常生活の交流が在ったとしても、それが活かされていないのでは何も無かったと同じことなのである。
 この辺りをもう少し掘り下げなければ、ヒロイン達の個性というものが中途半端にならずに確立されていたかもしれない。


 ヒロイン毎の評価だが、やはりレオンの「記憶喪失」という部分が全体的に足を引っ張っているようにしか思えない。
 セレスのシナリオの様に上手く使っている場合もあるのだが、それでも必要ないという印象しか受けないのは問題だろう。
 何故そう感じてしまうかというと、レオンの記憶というものが彼自身にではなく、彼の正体を知った周囲の者の好意に対する牽制としての役目しか持っていない。
 それも、中途半端な牽制でしかないのは残念なところだ。


(メルン)
 二人ともお互いのことが気になっているが、そんな自分達の気持ちに素直になれずにいつも衝突を繰り返している。
 メルンとはいわゆる気の強い幼馴染系のベタな展開で進んでいくが、それがどうも回りくどく見えてしまう。
 確かに素直になれない気持ちというものを現すのには、プレイヤーがキャラクターに対してもどかしさを感じるような展開で話を持っていかなければならない。
 だが、本編ではそれが鬱陶しく感じられて仕方がない。
 そう感じてしまう一番の原因が、魔法のメニューにある。
 メニューの力は、「自分の素直な気持ちを云えるようになる」という、いわば状況を一変し得る力を持っているせいで、どのような展開からでも二人を結び付けることができるのだ。

 そもそも、二回も本気でエッチしておいて未だにお互いの関係をハッキリさせようとしないというのは、馬鹿げているとしか思えない。
 エンディングは綺麗にまとまっているのに、途中の展開が足を引っ張ってしまったせいで全体的に損をしてしまっている。


(リリィ)
 自分の感情に素直に行動しているので、好感が持てる。
 妹的な役割を担っているため、レオンに対して甘えているような印象を受けるが、必要以上に甘えている訳ではないため、妹タイプのキャラクターに多い鬱陶しさを感じることがない。
 彼女がレオンを慕っている理由もしっかりしている。
 彼女は、幼い頃に肉親を亡くしたために、家族の愛を知らない。
 セレスに引き取られたことで、メルンやミーナといった姉のような存在を得た彼女は、父親的な存在を欲した。
 そんな彼女の前に現れたレオンは、頼れる兄としては打って付けの人物だったのだ。
 そして、上記の理由があることで彼の身分を証明するアイテムである指輪を隠してしまうという行動も、説得力が出てくるのだ。
 レオンが自分の正体を知れば当然別れはやって来る。
 だが、それが分からなければ別れずにすむ。
 子供染みた理由だが、彼女の性格を考えれば充分納得できる。
 その分、魔法のメニューが必要ないように感じられてしまったのだが、些細な事かもしれない。


(ミーナ)
 一番話がうまく進んでいくのだが、最後にとんでもないどんでん返しが待っているという悲惨なヒロイン。
 彼女は、猫耳と尻尾が生えており、とてつもない怪力と動物と話す事が出来るというちょっと変わった人物だ。
 そんな彼女が普通の人間とは違う事でぶつかる壁と、それを乗り越えて自分が一体何故こんな姿をしているのかを知る一連の流れが、綺麗にまとめられている。
 彼女が普通の人間と違う姿をしている理由は、かつてこの地に存在していた領主リューク=ベルゼンが王家の者を守らせるために、配下の近衛部隊隊長一族に魔法で動物の能力を与えたためだった。
 そして猫耳と尻尾は、名誉在る任務を許した証としての意味も持っていた。
 それを魔法のメニューの力を使い先祖の霊から聞いた彼女は、自分達の一族に与えられた使命を全うするために、既に滅んだ王家ではなく現存する王家であり、自分の愛する者である暴れん坊プリンスに忠誠を誓うのだ。
 しかし、これが納得できない。
 何故、お互いの気持ちを確かめ合っているのに、その結果が恋人ではなく従者なのだろうか?

 確かに彼女の一族には王家に忠誠を誓う意味はあるのだが、既にその力を与えた王家が滅びて、今までそんな使命を知らなかった彼女がいきなりそんなことを言い出しても説得力が全く感じられない。
 しかも、レオンがそんなことを納得するとも思えない。
 素直に恋人同士になってハッピーエンドとしておけば、綺麗に終わっていただけにとても残念に思えた。


(カレン)
 一番悲惨なヒロイン。
 レオンを庇い、事件の証拠品である指輪を手にして自ら暴行事件の犯人となり、国外退去させられてしまう。
 しかし暴行事件は正当防衛であり、国外退去させられた本当の理由は、暴れん坊プリンスが起こした数々の事件の責任を取らされたようにしか思えない。
 これではあまりにも悲惨である。

 その後、レオンがカレンのピンチを救い、無事に二人はペリグー王国に戻るのだが、このときの国王との会話でおかしな部分が出てくる。
 何故か国王は、王子が記憶を失った事を予め予定されていたことのような口振りで話すのだ。
 この部分には、違和感しか感じられない。
 何故、王子の記憶を失わせる必要があるのだろうか?
 その必要が在ったとしても、彼が諸国漫遊の旅に出る前でなく、旅の途中でそうする必要があるのだろうか?

 ちなみに、4日目にカレンが登場したときに、王子が記憶を失っていることを第二の試練と言っていたが、これだけでは納得できない。
 仮に、それら全てが予定されていた事だったとしたら、カレンが必死になって彼を追い掛けて来たこと自体が意味のない事になってしまう。
 それに、彼女が王子を追い掛けていたのは、恐らく彼が行方不明になったことが原因のはずだ。
 この事から推察すると、とてもではないが記憶喪失が予定されていたことだとは信じられない。
 これでは、カレンの苦労がまるで報われないばかりか、プレイヤ−としても呆れるしかない。 


(セレス)
 唯一彼女のときだけ、レオンが記憶喪失である事が活きてくる。
 セレスは彼の幸せを願い、失われた記憶を取り戻すことが出来るメニューを使って、彼にレオンとしての記憶と引き換えに、王子としての記憶を取り戻させる。
 そうすることで二人は、別れる事になってしまった。
 王子に戻った彼は、言い様のない喪失感の中で日々を過ごしていた。
 そんな彼を見ていたカレンは、同じメニューの力を使って今度は王子が忘れたレオンとしての記憶を思い出させることで、二人を再会させた。

 ここで、物語の根底を揺るがすような大きな疑問が発生してしまう。
 それは「何故、一番最初にレオンに出会ったときにこのメニューを作らなかったのか?」という疑問だ。

 冷静に考えると、記憶喪失の無銭飲食犯を従業員として働かせるよりも、このメニューを使って記憶を思い出させて、金を返す当てがあるかどうかを確認した方が良かったのではないだろうか?
 こんなことを言ってしまうと、ゲームとしての前提を覆してしまうことになるのだが、こういった物がある以上指摘せざるを得ない。
 しかも、セレスがこの時点でこのメニューのことを知らなかったとしても、それは言い訳にはならない。
 日頃から様々な悩みを持った人々がやって来て、その悩みを解決するメニューを作っているのだから、この時も彼女は機転を利かせて「失った記憶を取り戻す効果のあるメニュー」をレシピ帳から探し出せば良かったのだ。

 何故そういうことをしなかったのか?
例えば、彼の正体が危険な人物だったとしたら、記憶を取り戻させる事で自分達の身に危険が及ぶ可能性も充分ある。
 だが、リトルウィッシュにはミーナが居るので、並の人間では彼女達に危害を加えることは出来ないはずだ。
 しかも、彼女達がゲーム中で彼の正体が危険人物であるかもしれないと疑うような描写はされていない。
 その事から考えると、記憶を取り戻させることを躊躇う要素というものは無いはずである。
 これは個人的な見解なのだが、単にそれをやらなかった理由は、メニューの効き目を試す実験体が欲しかったからではないだろうか?
 こう考えると、何故かすんなりと納得できてしまうところが怖い。


(総評)
 全体的に通してみると、前半と後半でのストーリーの違いが目立ってしまう。
 前半だけを通してみると、ストーリー性は薄いが充分に面白いコメディーとして成り立っている。
 反対に、後半は各キャラクターに焦点を当てたストーリー重視の方向になっているので、前半部分でのストーリー性の薄さが足を引っ張って、中途半端な形に仕上がってしまった。

 これは筆者の主観だが、ストーリー性を無視してコメディー路線で突き進んでくれていれば、面白くなっていただろうと思えてしまう。
 やはり、ストーリーが中途半端になってしまった原因は、主人公の「記憶喪失の王子」という設定のせいだろう。
 これを持て余してしまったせいで、結局主人公にどういった役回りをさせたかったのかが不明瞭になってしまった。
 終盤で王子である事が判明したときの、ドラマティックな展開を彼に期待していたのかもしれないが、プレイヤーは既にその事を知っている上に、ゲームの雰囲気もそういったドラマ性を求めていないのでは彼に一体何をさせたかったのかさえ分からない。
 コメディーかストーリー重視か中途半端にせずに、どちらかの色を強くしてゲームを作って欲しかった。

 それからこれは仕様だが、システム関係の設定がゲームを再起動させないければ有効にならない。
 その事が影響して稀に登録されていたCGが消えていたりする事があるのだ。
 恐らく、ゲームを起動させるたびにオートセーブやオートロードのデータを初期化しているので、そこから発生するシステムに付随する形のバグと思われる。
 筆者は一度しかならなかったので、もしかしたらあまり再現性のないバグなのかもしれない。
 しかし、気を付けるに越した事はないと思われる。


 ストーリーには全然関係ないのだが、OPでのナレーションにて「ここは俺たちの住む世界と少しだけ違う世界」といういきなり訳の分からない始まり方は笑いを取るためなのだろうか?
 そうでなければ、このナレーションは一体誰の主観によるものなのかが理解できない。
 「俺」という言葉から受ける印象は、主観的立場の人物からの視点つまり、「主観的立場=プレイヤー=主人公」という図式が成り立ってしまう。
 主人公が異世界からやって来たというのならば、この場合は正しいのかもしれないがそんなことはまったくないため、ここでは「私」という一人称にするべきだろう。
 シナリオライターの主観なのかもしれないが、最初見たときは新種の表現かと思ってしまった。


 コンシューマー版がリリースされたが、それとの兼ね合いからかメルンのシナリオでHシーンを挟みながらの告白までの流れが回りくどくなってしまっている。
 純愛系ゲームなのに、告白前にHシーンを二回持ってくるというのは明らかに変に思えてしまった。
 コンシューマー版ではHシーンは当然差し替えなのだが、それを意識したあまりにこのような流れになってしまったのだろうか?
 これでは、アダルト向けと一般向けどちらをメインにしているのか分からなくなってしまう。
 多くの人にプレイしてもらいたいというのは分かるのだが、それならばもう少し捻って欲しいものである。


 最後に、この店の名前である「little wish」と「魔法のメニュー」について触れたいと思う。

 「little wish」という名が示す通り、この店で出される魔法のメニューはささやかな願いを叶えるものばかりである。
 訳の分からないメニューも沢山在るが、それでもやって来る人々の悩みを解決して小さな幸せを与えているのだ。

 セレスは、多くの人々を幸せにしたいと言っていたが、この人々に与えている幸せこそが彼女の願いなのだろう。
 もしかしたら、レシピには壮大な願い事を叶えるメニューが書かれているのかもしれない。

 でも、彼女は絶対にそんなメニューは作らないと思う。

 もしも作ってしまったら、それを求めて多くの人々が集い結果として不幸な人が出来てしまうかもしれない。
 だから、彼女はささやかな幸せのみを作り続けるのだ。


 それが彼女の「little wish」なのだから。


(乾電池)



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