脅迫 〜終わらない明日〜
 
 新キャラを加えてWindows用にリニューアル!
 ヒント&答えシステムもバージョンアップして完クリも楽々♪
 
1.メーカー名:アイル
2.ジャンル:ADV
3.ストーリー完成度:C(新作部分だけならB)
4.H度:A
5.オススメ度:B
6.攻略難易度:E(ヒントなしでやるならC)
7.その他:とにかく新キャラの鷹司麗香がおいしい!
 
(ストーリー)
 高校生の秋山明日香は、ある日、同じ学年の神村良介から告白され、つき合うことになった。
 その翌日、明日香の下駄箱の中に封筒が入っており、オナニーしている明日香の写真と「神村良介と別れろ」というワープロ文字の手紙が…。
 
 それは、鷹羽の誕生日1週間後のことだった。
 「誕生日プレゼントです。比較評論書いてください」と虎徹氏に渡されたのは、『九拾八式・極』で鷹羽が書いた『脅迫』のWindows版だった。
 チクショー、鷹羽がやりたくないと言い続けて買わなかったものを、わざわざプレゼントしてまでやらせたいか?
 仕方ない、そこまでされてはやるしかなかろう。
…というわけで、鷹羽はプレイしたのでした。どうでもいいけど、虎徹氏も無駄な金使ってるなあ。
 さて、そういうわけでやってみた。
 実に残念なことに、PC98版の最大の問題点である『処女をあげないと離れていってしまう良介』は、健在だった。
 明日香と良介が結ばれるエンディング『陽だまりの中で』にしかエンディング曲が流れないことで、「ハッピーエンドはこれだけ」と宣言している。それ以外は、ベターエンドではあってもハッピーエンドではないのだと。
 WIN版の新キャラである鷹司麗香が絡むシナリオ以外はほとんどPC98版のままで、グラフィックが多少変更されてはいるが、あまり変わったという気がしない。
 しかし、麗香の参入は意外な効果をもたらし、PC98版を遙かに上回る完成度を与えてくれた。
 鷹羽は当初、お嬢様が加わると聞いて頭を抱えていたのだけれど、麗香が加わったことによる新作部分のデキが、思った以上に良かった。
 元々この『脅迫』というゲームの女の子達は、妙に後ろ向きと言うか、脅されるままにドツボにはまっていく傾向が強い。
 特に、ヒロインである明日香が一番その傾向が強く、(明日香の凋落物語ということもあって)妹までも引きずり込んでしまうような、果てしなく後ろ向きな奴だった。
 しかし、麗香の登場で流れは変わった。
 麗香は、元来思ったことをそのまま口に出してしまうという困ったちゃんな性格(友達いねーんだ、こいつ)のせいもあってか、不良達を前に、一歩も引かない。
 麗香の行動は一貫して、妥協を知らない一本気といった感じだ。
 例えば、不良達に襲われそうになると、まず金で解決しようとする。ここまでは、単なる金持ちのお嬢様の行動っぽい。
 だが一旦不良達に姦られてしまうと、麗香が金持ちなのを知った不良達に金を要求されても、金を渡そうとはしない。
 毅然とした態度で、決して屈しないという姿勢を見せる。
 まあ、結局はそのせいで、不良達が意地になって精神的に陵辱して行くわけで、単純に肉体的な陵辱だけのPC98版にはなかった“いやらしさ”が生まれている。
 例えば、バッドエンド「崩壊」では、麗香の家の運転手である田畑を捕らえた不良達が、麗香と田畑にそれぞれ目隠しをし、二人を繋げた状態で目隠しを取る。
 知り合い(しかも自分の家の使用人)とさせることで、麗香の精神は崩壊してしまうわけだが、無理矢理姦られちゃってるだけよりも、ずっと悪辣でいやらしい。
 まあ、そういうのを見ていい気分になる人は、あまりいないだろうとは思うが、麗香の性格を利用した上でのいたぶりとしては、巧い見せ方だと思う。
 そのほかにも、麗香が絡むことで物語の深みが増した部分は多い。
 麗香に関する部分はすべて新作なので、麗香が話に絡んだ時点で、すでにハッピーエンドはあり得ない。
 しかし明日香が麗香を庇って刺されたり、良介と別れて別の男と結婚したりと、PC98版ではハッピーエンド以外では状況に流されるだけだった明日香が、かなり能動的に動いているように感じる。
 一番いい例が、麗香編の解決編である『得たもの、そして失ったもの』だろう。
 このエンディングでは、綾を人質に取られ、明日香の目の前で弓子とHすることになった良介が、かつて付き合っていた頃の弓子への想いを蘇らせてしまい、結局明日香から離れてしまうことになる。
 悪い言い方をすれば、結局良介は、かつて自分に処女を捧げた弓子を忘れられなかったということになる。
 しかし、不良達から逃れるために親に助けを求め、ボディガードを雇って不良達を一網打尽にしてしまうなど、まともな行動を取って事件を解決する理性的な麗香の行動、明日香を麗香の友達と知って、(麗香が友達を作ったことに)ちょっと嬉しそうな顔をする麗香の父親、良介に抱かれて心底嬉しそうな弓子など、ダークなこのゲームの中で、一筋の光明となっている。
 実は、弓子の家はかつて借金取りから逃れるために夜逃げしており、その後色々あったせいで、今のような状態になったらしい。
 つまり、自分の意志と無関係に堕ちていく自分に対する思いなんかもあって、同じような状況に陥った女が気丈でいる姿を見たいのだ。
 だからこそ、ハッピーエンドでは弓子を哀れむ明日香を助けるし、精神崩壊した麗香を見て、「やっぱり、こんなもの…か」と哀しんだりするのだ。
 ところで、PC98版の頃からあった「ヒント&答えモード」だが、グラフィカルにパワーアップした『S-navi』によって、完クリが非常にやりやすくなった。
 あまりに簡単なので、ゲームを楽しむためには、特定のエンディングに行けないなど、余程詰まってしまうまで使わないことをお奨めする。
 『S-navi』を表示すると、『YU-NO』のADMSマップのような分岐図が表示される。
 各分岐点で、選択肢の上にカーソルを持っていくと、その選択肢を選んだ時に進むルートの色が変わるから、行きたいルートへ続く選択肢を選べばいい。
 これだけで、あっという間に完クリできてしまうのだ。攻略本なんかいらないね。
    
(鷹羽飛鳥)
 
 
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