黒雪姫
伝説の姫を巡る物語。
1.メーカー名:すたじお実験室
2.ジャンル:アドベンチャー
3.ストーリー完成度:D
4.H度:B
5.攻略難易度:D
6.オススメ度:C
7.その他:ネタや工夫は面白かったが…
(ストーリー)
ノアル(主人公・名前変更不可)は自分の生まれ育った国・アイゼネフを占領したジンク国の検非違使(けびいし)として戻ってきた。
裏切り者の黒い検非違使=黒使(こくし)と呼ばれ、民を震え上がらせる彼だったが、幼馴染のリアナと再会し、ノアルに興味を示す近衛の京佳とのやりとり、そして不思議な姫・紗由希(さゆき)との出会いなどで、それなりにまんざらでもない生活を送るようになってきていた。
そんな折、ノアルはまだこの国で健在な育ての親から、持ち主の運命を左右するという不思議な力を持つタロットの1枚を譲り受ける。
その後タロットは1枚、また1枚とどこからともなくあらわれ、彼の手元に増えていく。
暫く後のある日、不意にカードが光った。
そこへ図ったようにノアルに持ちかけられる、権師(ごんのそつ)からの将軍暗殺の依頼。
ジンクへの抵抗勢力が相手の大事な時期に、彼はまんまと罠にはめられ内通者として追われることになってしまう。
周囲の人を守りながら逃げるノアルは、その人たちを利用した罠で追いつめられていく。
それを助けたのは、ノアルがジンクの兵となる以前から彼の影で動き回る不思議な女性、サリエルだった。
彼女は「この国の王にしてあげる」と言い、そのためには紗由希を抱いて子を宿せと言う。
そこで語られる、国を追われた姫の悲劇の復讐劇「黒雪姫」の伝承。
ノアルは、そして紗由希はどうなってしまうのか?
タロットはノアルの運命を導くように光る。
そしてノアルの選択する未来は…
このゲームは占領された国が舞台のADV。
ノアルは裏切った母国で、彼が関わる女の子と共に激動の波に流されていく。
まず目に入るのは、ジンクの特徴である平安朝の建物や服装をした人達は支配階級にあり、カタカナで呼ばれるアイゼネフの人達や街並みは占領下に置かれたものという、はっきりした区別が付けられている所。
このため、もともとアイゼネフ出身のノアルはカタカナの名前に漢字の役職(検非違使)という、支配側であっても「浮いた存在」であることが伺われる。
更に彼はジプシー(ここではアイゼネフの街からを外れた貧民街のこと)の出身であり、占い師に育てられていることから、彼が運命を左右される状況にあるかもしれないという予想ができる。
他にも、サリエルの服が一人だけ白のタキシードだったりするなどの和洋折衷の雰囲気がある。
これらが、一辺境国内では終わらない出来事を予想させる下地として、ふんだんに用意されているのだ。
システムは多くのADVと同じく、表示された選択肢を選ぶことによって話を進ませていく。
選択肢はセリフだけでなく、街中の移動場所の指定だったり、タロットカードの表示を変えるという異なった方式を組み込んであり、場面ごとのメリハリがついている。
中でもタロットカードの22枚の大アルカナを用いた選択は独特の味がある。
ただ、このゲーム内でのタロットは占いをするために用いているのではなく、あくまでノアルが関わる出来事に対する象徴的なものとして描いているだけに留めている。
カードの表示変えは基本的に二択の選択肢と同じ意味しかないが、カードの持つ意味になぞらえたものになっているところが面白い。
カードはゲーム当初は持っておらず、序盤で最初の1枚(正位置の「フール(自由)」)をもらって、以降ゲームを進めていく間に「拾う」という形で、シナリオに関わるもののみが数枚入手できる。
更に入手した時点で正・逆の位置が決まっていて、シナリオ上の特定の場所で、位置を逆にする「逆転」か、カードそのものを別の絵柄に変化させる「改変」を行うかどうかの選択が、カードの自動的「発動」と言う形で発生する。
プレイヤーはこのとき位置を逆にするか、あるいは変化することを許可するかを選択し、その結果で他の選択方式と同様にストーリーの流れは変わっていくのだ。
カードを利用した単なるYes/No方式の二択とはいえ、発動したカードに対する決定権が「プレイヤーに委ねられている」というシチュエーションのため「運を天に任す」ように運命に従う、逆らうといった気分になれる。
例えばゲーム前半、国を操らんと目論む高官がノアルを利用しようとするシーンがある。
ノアルはそれを突っぱねることで追われる身となり追い詰められるが、そこでカードが発動。
この場面で発動するのは「ジャッジメント(挫折)」カードの「逆転」。
ゲーム中での設定では、このカードの持つ意味は正位置が「覚醒」逆位置が「挫折」となっている。
このカードは入手時には逆位置だが、これが発動することで正位置へと逆転できるようになるのだ。
その結果、逆転直後にサリエルがその本性を現して助けに入り、ノアルは無事逃げることができるが、もし発動時に逆転させなければ彼はそこで帰らぬ人となってしまう。
また紗由希シナリオでは、クライマックスに彼女が黒雪姫を目覚めさせるための生贄にされるシーンがある。
そしてノアルが阻止できるかどうかの瀬戸際にカードが発動し、その選択の結果でエンディングが変わる。
ここで発動するのは正位置で入手した「エンプレス(母性)」の「改変」で、行うと「ワールド(完成)」に変化する。
改変しなければ紗由希はノアルとともにこれからの厳しい道を歩んでいくが、改変すると彼女は「黒雪姫」となり、彼を覇道の道へと導く者となる。
つまり、入手したカードが示す意味を知っていると、入手した状態から話の前後の繋がりを推測することができ、ゲームオーバーからの回避やキャラ攻略の目安にできるのだ。
解りやすい展開のゲームはよく「先が読めるのはつまらない」と叩かれるが、このゲームではカードを利用して、提示されたストーリーの展開を匂わせる情報を用意することによって、先を読もうとするプレイヤーに対して先手を打った。
大雑把な方向性の提示は、あらかじめ見せておくことにより、深読みをしようとするプレイヤーの思考を抑える。
そしてプレイヤーは余計な事を考えることなく話の中へまっすぐに引き込まれるのだ。
更に、例えば「首が飛ぶ直前」のような場面でカードを発動・選択させるのではなく、その場面に辿りつく前にあらかじめ「逆転」や「改変」が発動する設定だったならば、プレイヤーはもっと「ノアルの未来が変わった」という実感が持てただろう。
そして、ゲームの流れ全体を把握するために「フローモード」を採用した。
これは「脅迫〜終わらない明日〜」のS-naviや「河原崎家の一族2」のナビマップの様な感じのフローチャートを用いて、シナリオをマップ化したもの。
このマップ上に、各シナリオで選択が発生した場所・進んだ方向がマークされていく。
これはプレイヤーのクリア状態を把握するためのもので、失敗した時のやり直しや、CG回収などのための繰り返しプレイを手助けするため非常に有効なシステムだ。
しかし、やり直す時に自由にポイントを指定できないのが問題だ。
一度クリアしても、やり直すためにロードした時の場所がシナリオの途中であれば、それより以前の場所にしか移動できないし、別のキャラのルート上に移る場合は更にその分岐点まで戻らなければならない。
つまり、クリア直前のデータで未分岐の場所を確認できても、自由に行き来できないという難点があるため、一見楽になりそうに見えても実はあまり有効ではないのだ。
結局、カードによる前後の関係を匂わせた選択肢とフローチャートによる全体の把握はプレイ環境を楽にしているが、その反面、カードは選択肢以上の働きをしていないし、フローチャートは自由度が足りないので、どこか今一つといった物足りなさを感じる。
シナリオの方はどうかというと…
まず、タイトルにもなっている「黒雪姫」の話でつまずいている。
その「黒雪姫」とはどのような人物なのか?
言い伝えにおいて、人間型の生き物は「雪女」から「口裂け女」まで見ても判るように、少なからずその容姿や仕草、行動などを事の真偽にかかわらず含んでいる。
そのインパクトがあるからこそ長く人の間に語り継がれ、文章化だってされるのだ。
それなのに、まず「黒雪姫」を伝えるの話がマニュアルに載っていないのだから根本的に何か間違っている。
彼女の伝承を要約(あまり短くなっていないが)するとこのような話になる。
『黒い髪と雪のような白い肌を持ち「黒雪姫」と呼ばれていた姫が国を追われ、深き森に生贄として差し出される。
その後、姫は森の精霊の子を生し、その子は母親の追われた国を攻め滅ぼして王となった。
しかし、王は自分の母親を「人を食らう悪霊」と思い悩み、殺してしまう…』
「黒雪姫」とはそんな言い伝えを持ち、子供を叱る時に「黒雪姫に食べられる」とまで例え怖れられる非情の姫で、後半のサリエルの話に拠れば、この世界ではるか昔に実在した姫だという。
で、エンディングで確かに復活するのだから本当にいたわけだし、CGでは確かに人の腕を持って口から血も滴らせていた。
しかし、伝承のどこをどう捉えればそう言う姫だったと判断できるのだろうか?
現われた本人は恐るべき姫だったが、それは彼女を見て初めて判る事であって、文章からは「黒い髪で白い肌の人」だと判断できても本当に人を食べたのかは判らない。
何しろ「人を食べる」くだりが丸々無いのだから。
王の悩みは書いてあってもその場面を見たからでは無さそうだし、まして、自分も人を食べたくなるのでは? と思わなかったのだろうか?
むしろ、「母は人食い、と勝手に思い込んだ王のご乱心故の悲劇」にも見えるのだが…
国を追われた原因が「人を食べたから」とか「精霊と同じ時を生きるには人を糧としなければならなかった」というような一文でもあれば判らなくも無いし、「実はサリエルが自分で振れ回っていた」という告白でもしてくれたなら、実は普通の姫なのに「人を食べていたと言う意図的な意識操作がされていた」という裏づけができて納得がいっただろう。
いくら後半にしか話が出てこないからといっても、伝承不足はあまりに大きな落とし穴ではないだろうか。
かくして、どのエンディングでも、この「黒雪姫」は復活する(紗由希だけ復活しないエンドあり)のだが…
前述した様に「黒雪姫」の話が出てくるのはかなり後半。
そうなると、前半では何の前振りも無いの伝承は、何のために用意されたのか解らないということになる。
しかも、この話の続きは『姫を殺されたことに怒った精霊が、姫の髪の様に真っ黒な雪を降らせて国を不毛な土地に変えてしまった』と締め括られるのだが、この1節はゲームのどこにも絡まないので、ますます訳がわからない。
これでは、怖いのは姫ではなく、森の精霊ではないか。
一応、メインの紗由希ルートでは復活するシーンと伝承の元となった話が語られるが、それはエンディング直前になってやっとの事だし、しかも復活したかしないかで「人を食らう悪魔」と「本当は悲劇の姫」という全く異なる描かれ方をしているために、本当はどちらが姫の本来の姿だったのかも判らず、結局「黒雪姫」とはどんな姫だったのかがどうにもはっきりしない存在になってしまっている。
そのため、紗由希以外の2人を絡ませることができず、シナリオの流れは国内の不穏な空気がメインとなり、更に黒雪姫の存在理由が薄くなるという悪循環に陥ってしまっている様だ。
攻略できる女の子はメインヒロインでジンク国の権力者の娘の紗由希、同じくそれに次ぐ権力者の娘で男勝りの京佳、そしてノアルの幼馴染のリアナの3人。
話はキャラごとに分かれるが、占領下のアイゼネフの動乱と黒雪姫復活をベースに進む事自体は変わらない。
リアナとの再会、出仕で顔を合わす京佳、権師(ごんのそつ)が連れてきた彼の娘・紗由希姫との出会い。
抵抗勢力のあぶり出しや野心を抱いていた戦友との対決など、それぞれのシナリオに共通の出来事を通して紗由希が黒雪姫として覚醒する間に、ノアルは紗由希と共に覇王として生きる道を選ぶか、京佳と共に紗由希の力で混沌としていくアイゼネフを離れひっそりと暮らすか、あるいはリアナとともに放浪の旅に出るかを決めなければならない。
三人のシナリオは初期の段階で分岐してしまい、更に京佳とリアナが紗由希のシナリオでは陵辱される(紗由希以外のシナリオでは誰もそうならない)ことで話の中心から外れていくため、一見すると独立しているように見える。
しかしその陵辱シーンや他一部を除けば、それぞれのシナリオは紗由希が国に利用される側、京佳が反抗組織を抑える側、リアナが反抗組織に与する側の様子を描いているだけなので、三つを併せても一つの話として成り立たせられるのだ。
いっそ、一本の太いシナリオにまとめてしまったほうが話しの厚みが出てよかったと思う。
なぜなら、メインの紗由希のシナリオは片手落ちな部分が目立つからだ。
例えば、紗由希はノアルと出会うことを運命付けられていたはずなのに、それを匂わせるような前振りは何も無い。
また後半、実は紗由希は黒雪姫として覚醒させるために権師が連れてきた、出所不明の女性だと解る(プレイヤーが文章上で知るだけでノアルは知らない)が、なぜそんな娘がいたのかの説明もない。
ゲームの根本ともいえる黒雪姫の伝承と、それにまつわる3本の大樹の話はCGも無く、サリエルが語るテキストのみで済まされてしまう。
逆に京佳のシナリオは、組織との話が中心なので「紗由希姫が以前と違うように感じる」というセリフだけで黒雪姫に関する話は終わってしまうし、リアナのシナリオでも自身の秘密や裏で手を引くサリエルとのやり取りばかりになってしまい、やはり本筋は曖昧なままで終わる。
全てを見てはじめて、黒雪姫とアイゼネフの行く末とサリエルの行動などの全貌が解るのだ。
でも、合わせても問題が完全に解決するわけではない。
ゲーム内の世界設定がプロローグでやたら詳しく流れたり、後半の黒雪姫の言い伝えとその真実においてのノアルの関わりが不明瞭である事など、三つ合わせてもまだ何か足りない感じさえする。
ゲームはテキストを追いかけていくだけなので、ただまとめただけでは非常にダレた作りになってしまう。
それを避けるためのゲーム全体のバランスを取ったシナリオ分割なのだろうが、結果として消化できているとは言い難い作りとなってしまったのが残念。
システムは選択肢にひねりを入れているし、フローチャートというプレイヤーが把握し易い工夫もあるが、使い勝手が今一つ。
シナリオは生まれた国に背を向けるノアルの立場、占領下に置かれた国の不満や不安、本国から離れた支配者達の野心、サリエルの狙い等、いじるのに面白そうなネタがあるのに説明不充分。
面白さが生かしきれず、消化不良を起こしている感じのゲームだ。
(総評)
情勢の落ち着かない国をベースに、戦争で名を成した主人公。
しかし、彼すらも実は振り回されるだけの存在でしかなかった事や、どのキャラでも未来に対する不安を暗にほのめかして終わるラストシーンなど、テキストを追いかけている間に「ほほう」と思える所は何度もあった。
でも結局国内のごたごただけで終わっているから、アイゼネフの背景―数年に渡る大陸の国家間の攻防―を最初のうちに事細かに説明されてもほぼ役に立たない。
だから、話は面白いんだけど一度通して見れば十分という良くも悪くもさっぱり味の印象しかない。
キャラ毎のシナリオを分岐させて黒雪姫の復活を三方から攻めるはずが、紗由希シナリオ以外、最後に「ああ、復活しちゃったのね」状態で、京佳シナリオではノアルは彼女と共に国を捨てるし、リアナの時にも周囲の状況そっちのけでエッチにふけるか、人間をやめてしまう(京佳はED1つで、リアナは2つある)ので、結局話の方向が「てんでばらばら」になり、まとまりを欠いてしまった。
これなら中途半端に黒雪姫にかかわらせず、シナリオ完全分割の方がすっきるする。
これで、それこそ選んだ女の子によって黒雪姫のあり方や国の行く末が大きく変わるなら、黒雪姫の存在価値も上がったと思う。
また、謎の女性・サリエルの描かれ方が弱かったことも不満を感じた理由の一つ。
サリエルはジンクがアイゼネフへ侵攻した時だけでなく、大陸のあちこちで動き回っていたらしいということがゲーム中ちらほら書かれる。
そのことから、ノアルのみならず、ゲーム中で少なくとも主要キャラの半分以上に何かしらの手を貸しているはずなのだ。
それなのに、面識ある者達のわずかなセリフがあるだけで彼等の前に出没する描写はまるで無い。
そのため、サリエルの影響力や力(人間じゃ無いことだけは判る)がどれくらいあるのかはっきりせず、終盤でノアルに向ける言葉も特別なものと感じられないのだ。
しかも彼女の関心は、人に手を貸す事以上に黒雪姫に向けられているらしいのだが、まさに「らしい」だけで何の説明も無く終わっているため「何だかなあ」といった感じしかしない。
正直な所、リアナのシナリオで彼女の「思い」の強さに感動した以外、BOO的には満足の行くものではなかった。
システムとシナリオに集中して上では書かなかったが、HCGはそれなりに濃いので、枚数が少なめなことを差し引いても絵的にこれはこれで悪くないと思う。
しかしHを繰り返すことが多い割に、テキストが「Hに不慣れなバージョン」と「H慣れしたバージョン」の2種類しかなく、変化した後はまるっきり変わらないので、プレイすればするほどやる気を無くす。
ストーリーの流れで、一昼夜の間に最高3回(まだ抱き続けますか? の選択肢を除く)連続Hをするのに、一回こなす毎に同じ文章で「なんだ、震えてるじゃないか」「だって…」「俺に任せろって」とか繰り返されても困る。
しかも、選択肢が“一つ選択すると別の選択肢が出てくる”といったように段階を追って増えるため、再プレイ時には結構つらいものがある。
CGをコンプリートする気の無い人は「Hシーンを省略しますか?」と省略できてもよかったのではないだろうか。
はっきり言ってCG以外文章・作り共に「手抜き」としか取れず、論じる以前の問題だ。
これじゃCGが泣くよ。
さて、この「すたじお実験室の」ファンタジーものは、どうもあらかじめ独自の世界を構築した上で時代と地域を変えて作られているように見える。
解り易い例が「瞳裸」シリーズ。
「1」と「3」がヨーロッパ周辺で、年代は不祥だが錬金術師が主人公なので中世あたり。
「2」がそれより100年ほど後で、舞台はアジアとヨーロッパの真ん中あたりにある崑崙山脈寄りのシルクロードの交易点。
「漂泊者の子守り歌」は「瞳裸」から更に数百年未来の話で、やはり同一の世界をベースにしたとスタッフが語っている。
このゲームの舞台は未確認だが、港を目指す旅なので、「2」の山間の舞台とは対照の位置での話と考えられる。
そして「黒雪姫」はゲーム冒頭の説明から考えて、大化の改新あたりの時代で、場所はノアルがいたジンク国が日本を、アイゼネフ側が百済か新羅をモチーフにしていると思われる。
文中でもジンクの役職が検非違使(けびいし)、帥の宮(そちのみや)、権師(ごんのそつ)など日本よりの漢字で統一され、衣装も奈良・平安の貴族のそれ(微妙におかしなものもあるが)だ。
対するアイゼネフの住民は名前がカタカナでヨーロッパに通じるような服を着ている。
この「黒雪姫」の時代と舞台を「瞳裸」の世界に当てはめてみると、時代はともかく、舞台はしっかり「瞳裸」シリーズで描かれていない場所に位置していることが判る。
しかも、冒頭の説明で出てくる国々はほぼ中国全土に広がっていて、「瞳裸2」に出てきた「東の大国:ロハン」の位置(チベットあたり)と隣接するような状態になるのだ。
スタッフが同じ世界だといっているわけではないので断言はできないが、時代こそ違えど、ゲーム毎の舞台をだんだんアジアの方にずらしてきている所を見ると、同じ世界をベースにしているために、以前の作品と設定がかぶらないようにしているのではないかと思えてしまう。
だとすると、次回ファンタジーが作られるならアメリカかオーストラリアをモチーフにするのだろうか?
注目してみたいところだ。
のらねこ長屋氏の絵にひかれてこのメーカーのソフトをプレイしてきたが、4本目にして初めてのADVだった。
出来としては「まあまあ」な感じの印象を受ける。
でも、メーカーの「ファンタジーに対する独自の世界観の構築」に興味を持つ人や、「CGがOKなら多少の疑問は気にしない」人以外はあまりお薦めできないかな。
何度も書くように設定やスタイルは悪くないと思う。
更に黒雪姫の本来の名前が「イシュタイル」だったり、三本の大樹はそれぞれ「過去」「現在」「未来」を現しているなど、神話に興味がある人をニヤリとさせる楽しみもあるし、ノアルの名前が「ノワール(Noir:フランス語男性形。『黒、黒い』の意。また『不吉な、邪悪な』という意味合いもある)」から取ったものなど、ちゃんと意味を持たせているのもいい。
ただ「広げようとしている世界観を消化しきれていない」だけなのだ。
消化するためにメーカーが対決すべきは制作時間なのか?
CD一枚に収めなければならない等の何かの制限か?
あるいは独自の世界が設定されてるなら、その時代毎に起こった出来事をあらわすタイムテーブルか?
ぜひ解決の糸口を見つけて欲しい。
次にファンタジーを出してくれるなら、何か見えてくるかもしれないと思う期待はある。
まだまだ楽しませてもらいたい。
(Mr.BOO)