誤解された状態のまま(発勁の誤解について)


 何かひけらかしの様にも思えるので書くか書かないか迷ったのだが、一応ココだけ解説しておこうかと。

 発勁というと漫画・映画・ゲームなどで比較的なじみの深い言葉だが、中国拳法で言うところのそれとはかなり意味合いが違うものとなっている。
 日本のメディアで登場する「発勁」は、どちらかと言えば何かしらの常軌を逸したパワー(通常は「気」が主)による圧倒的な破壊技を意味している。

 触れてもいないのに、拳を突き出す動作だけで相手を突き飛ばす。
 掌打で相手に即死に近いダメージを与える。
 自分の周りに気のフィールドを張って相手をはじき飛ばす。

 形は様々だが、みなこれらの「固有技」を発勁と呼ぶことが多い。

 漫画ならば「押忍! 空手部」の爆裂発勁や、技名こそ違うが「鉄拳チンミ」に登場する通背拳がイメージとしては挙がるだろうか。
 今回の「鬼哭街」でも「電磁発勁」は固有技としての呼び名となっている。

 しかし実際のトコロ、発勁というのは技の名前でなく「その技(攻撃)を出すときの力の源」の事を指す。
 更に詳しく言うならば「勁」という概念そのものに触れなければならないのだが、そんな事を書き始めたらページがいくらあっても足りないので割愛させていただくとして、ここでは上記の認識で構わないと思う。
 例えば有名な八極拳の「震脚」は鋭く重い踏み込みによって拳や掌にその力を上乗せする技法のことだが、これこそが八極拳の「発勁」である。
 八卦掌という流派は「走圏」と呼ばれる相手の周りを円を描くような軌跡で動くことによって、その円運動を利用しての背後からの攻撃や遠心力を利用した掌技を「発勁」として用いる。

 「中国の体操」という事であまり強そうなイメージがない太極拳も、実は相手の力を利用しつつ柔らかい体から捻りを加える「纏糸勁」という発勁を用いることで、恐ろしい実践向けな拳法になるという。
 良くテレビで見かけるあの動きを見れば、どことなく想像は出来まいか?

 発勁については、中国拳法の本を読めば基本概念として必ず記載されていることなので、興味のある方は一読してみてはいかがだろうか?

 漫画ならば、昔少年サンデーで連載されていた「拳児」がオススメだ。


→戻る