Justice Slave 〜星となれ、悪組織〜
俺っちの友人K(以下、K):「やあ、元気かい? 本名が貴之の梨瀬成君」
俺っち(以下、梨):「何だよ、やぶから棒に」
K:「いやー、いいゲームが手に入ってねえ」
おもむろに、ホレっと俺っちにソフトを渡すK。
梨:「なになに、ジャ、ジャスティススレ…イブ?」
K:「タイトルなんかどーでもいいんだよ〜、ストーリーのところ読んでみぃ」
梨:「えーと、とある悪の秘密組織の下っ端戦闘員貴之は、ふとしたはずみで封印された破壊神を解放し、その力を手に入れた功績により、幹部に昇進し…うんぬんかんぬん」
………
……
…
梨:「ま〜た、貴之かい!!!?」
K:「もう、これは君の為のソフトだね〜」
梨:「勘弁してくれよ〜(泣笑)」
K:「ちなみに、早く解いて、私に返してくれたまえよ。イヤガラセのためとはいえ5000円以上の大枚をはたいて買ったソフトなのだからねえ。さっさと売りたいのだよ〜」
梨:「どうでもいい事に金使ってんな、オマエ」
K:「ちなみに、買い取りたいというのなら、喜んでここに置いていくけど〜?」
梨:「いらんわい!!」
1.メーカー名:ティアラ
2.ジャンル:ちゃぶ台返しADV
3.ストーリー完成度:C
4.H度:C
5.オススメ度:C
6.攻略難易度:D
7.その他:全くの余談なんだが、この作品のあとに「30days」という作品もプレイしたのだけど、これの主人公も平仮名で「たかゆき君」でした。
なんだかなー…もー、頭イテー。
(ストーリー)
主人公・西川貴之は、悪の秘密結社シャドウダストの下っ端戦闘員。
とはいうものの、自分なりの美学をもって誠心誠意組織に属する男だ。
上層部からの命令で伝説のオーパーツを求めるため、長い旅の末に古代の遺跡にたどり着く。
しかし、そこには同じ悪組織の一つが潜入しており、弱小組織のシャドウダストの戦闘員たちはたちまち壊滅状態に…
自分の非力さを呪いながら逃走を続ける貴之の前に、破壊神の封印された彫像が発見される。
他の組織や、彼らの敵・聖護天使たちへ対抗できる力…強大な力への渇望が、貴之に封印を解かせようとしていた……
うーむ。
実は結構オーソドックスで面白いんだな、コレが。
新しい試みもあるし、結構、俺っち自身の評価は高い。
ただ色々な点で中途半端な所が目立ち、「小粒な佳作」といった印象が拭えない。
この作品は言ってしまえばギャグ作品だ。
ただ「プロスチューデントGood」みたいな露骨なギャグではない。
どちらかと言えば「やってる本人大まじめ」的な、少しブラックユーモアに近いタイプのギャグなのだ。
例えば、主人公が所属する悪組織「シャドウダスト」の描かれ方などは秀逸だ。
総帥から幹部、果てはザコ戦闘員まで異様にアツい!
とてもワルモンだとは思えない程の描かれ方は結構徹底的で、とても戦隊モノのパロディ物とは思えないのだが、そのギャップが単なるおバカで、お気楽極楽なギャグ作品とは一歩違った笑いを提供してくれる。
これは評価に値すると思う。
また、ゲームを面白く演出するアイデアも見逃せない。
その筆頭がちゃぶ台返しシステムだ。
主人公が幹部同士のやりとり等でストレスが溜まってしまうと、俗に言う「プッツン」状態になってしまうのだが、一回この状態になると、いかなる場面でも…そう、それが上司との会話の途中であろうとも「キレる」事が出来るのだ!
言うなれば、常に選択可能な第三の選択肢といったところか。
これはアイデア的には非常に面白く、また、この選択肢を選んだ時の主人公以外の登場人物の対応も面白いので、成功だと思う。
ただ、どうもゲーム的な扱われ方としては、主人公に憑依している破壊神ラウルのストレスを抑えるという側面にしか捉えられていないのが、少々芸がないというか、残念なトコロではあったが。
ちなみにラウルのストレスがMAXになると、主人公の意識を押しのけて強制暴走するのだが、強制イベントでこれが起こったりする場面もあり、なかなか笑わせてくれる。
キャラクターは、主人公が幹部になった事により側に付き従う様になる、従者インプドリアがおいしい。
ひたすらお茶目でわがままな彼女に、主人公が戸惑いながらも翻弄される様は見てて妙に微笑ましい。
このほのぼの感がいい感じなのだが、でもこれ、悪の秘密組織内での話なんだよな……アレ!?
数種類あるエンディングのうち、最もたどり着きやすいインプドリアエンドは、結局のトコロ一番トゥルーエンドっぽくて、なかなかに良い。
あとは、敵の聖護天使・センカとのストーリーは、主人公・貴之の心の葛藤が描かれていて結構いい感じ。
残念なのはインプドリアエンドの時、再び倒してしまったセンカに対して、主人公が何の感慨も沸いていなかったらしいトコロか。
ここら辺はシナリオライターの甘さでもあるので、出来うることならもうちょっと突っ込んで欲しかったのだが。
でないと、センカと対峙する前の貴之の心の葛藤が、イマイチ活きてこないのだから。
さて、少し問題点にも触れよう。
とは言うものの、この作品の問題点は一つに集約される。
それは、お手軽すぎる点だ。
この作品はかつてのアリスソフト「宇宙快盗ファニーBee」の様に、いくつかの章仕立てになっている。
だが、一話一話の密度がそれほど濃くない上、何と四話目で最終話に突入してしまう。メッセージスキップを使えば、一時間かからない。
だが、基本的に選択肢以外は同じ文章ばかりが続くため、再度プレイは意外とかったるい。
そして、先で述べた「ちゃぶ台返し」システムも、アイデアは良いのに短いシナリオのため、イマイチ活きているとは言い難いのだ。
ほとんど負けがありえない戦闘も、短いシナリオを無理矢理縫合するための、結構みっともないものになっている。
体力とストレスの回復である「心の安らぎ」「セクハラ」も面白いアイデアなのだが、これでラウルがどうこうという程シビアなものでもないので、緊張感には欠けると思う。
第三章の戦闘は選択肢型だったり、ボス戦などは工夫しているものもあったので、努力だけは認めるけどね。
ただ、各マップ間の移動時のイベントを戦闘以外にもっと増やしてあげるだけで、作品の印象はだいぶ変わったと思うんだけどなあ。
結局お手軽さが全てネックになって、小粒なこぢんまりとした印象を与えてしまうのは、痛いマイナスだよ。
(総評)
佳作。
しかも、メーカーもハナから大作を作ろうなんて考えてはいなかったのだろうから、もうこれは、なるべくしてなった「佳作」だ。
なんか、最近こういうの多いなあ。
ただ、必ずしも大作が良いという訳ではない。息抜き用という意味も含めて、この作品にはこの作品なりの意義はあると思う。
そして、そういう観点で見るのならば、決して悪い作品じゃあない。
私事になっちゃうけど、この作品をやる少し前[鈴がうたう日]「Kanon」と立て続けにシリアスな作品をやってしまったため、しばらくお涙系のシリアス作品を敬遠していたのだ。
現に「加奈 〜いもうと〜」は、それが理由で手を付けなかったのだしね。
だが、そんな俺っちにこの作品はいいリハビリになった。
だけど上でキツい事を書いちゃったのは、いいアイデアを持った作品だっただけに、やっぱりもうちょっとシッカリ作ってもらえればなあ、という俺っち自身の惜言なのである。
(後日談)
梨:「おーい、Kよ。これ結構面白かったでえ」
K:「やっぱ、自分とおんなじ名前の主人公だと感情移入出来るだろう?」
梨:「だーかーらー」
K:「さて、それじゃ返してもらおうか?」
梨:「その前に、オマエもやってみれば?」
K:「攻略のってる本あるか?」
梨:「いんや、ない。しかも、いつの間にかCG100%でオールクリアしていたから…」
……
……
K:「さ、秋葉原行こうか? ハロ〜ソフ×ップワ〜ルド♪」
梨:「え〜、売るの〜? もったいないよう。どうせなら俺っちにくれ」
K:「だー、だまらっしゃい! あー!! もう!! 離せ! 離すのじゃ! 三太夫!!!!」
(梨瀬成)