風雨来記

 『久遠の絆』に激ハマリし、なおかつ、そのキャラデザの人の絵をこよなく愛する元締こと後藤夕貴が、なぜか「なぁ〜んか、やる気しなぁ〜い」と言って、ほっぽらかしていたF・O・Gの新作。
 じゃあ私がやりますか…と勝手に借りてやってみたら…。

1.メーカー名:F・O・G
2.ジャンル:ツーリングモード+ADV
3.ストーリー完成度:エメラルド(Aを越えた宝石クラス)
4.H度:Dくらいはある気がする…
5.オススメ度:一人だけ攻略するならA、全員攻略派の人には…C
6.攻略難易度:C
7.その他:完成度が高くてもおすすめできないゲームがあるんだと解った作品。
…もう絶対F・O・Gのゲームなんかやらないぞ…。

(ストーリー)
 主人公:相馬轍(変更可)は、旅雑誌『ふうらい』のライター兼カメラマン(本人はルポライターと言っている)で、これからそのWEB版『風雨来記』の取材のため北海道へ向かっている。
 かつての親友“アイツ”の形見のバイクを駆って、野宿の気ままな旅を記事にして、雑誌のオリンピック『心光展』WEB部門上位入賞と自分にとっての最高の1枚を撮る事を目指す。 
 かつて“アイツ”と目指しながら行く事のできなかった北海道で、新しい出会いが待っていた…

 まず、スタッフの方がアウトドア&ツーリング&北海道大好きというのはビシビシ伝わってきました。
 背景を実写取り込みとする事で、かなりいい雰囲気のバーチャルアウトドアin北海道に成功していると思います。
 システムに少々難がありますが、シナリオの完成度も高く、キャラクターの描写も良く出来ており、主人公も、自分にとって好感の持てるタイプでした。
 EDも思い切った展開で、かなり感動できます。
 本来なら私はこんな褒め所いっぱいのゲーム、手放しで絶賛するでしょう。
 …ですが残念ながら、それができないのです。
 それも、以下に述べるシステム上の難のせいでは無く、“完成度の高いシナリオ”と“思い切った展開で感動を呼ぶED”のせいで…。
 いくらなんでも、思い切り過ぎたんじゃないか、コレ…?

 先にシステム上の欠点に触れておきます。
 これについては、さんざん『投稿九拾八式・御意見箱』で愚痴った通り、コントローラーを操作して東西南北にバイクを走らせる“ツーリングモード”システムに大変とまどい、全然行きたい所に行けなかったので、とてもストレスがたまりましたわ。
 最後にはだいぶ慣れましたが、まだ上手くいけない事もあります、とほほ。
 単に私がニブイだけ?
 まあ女の子攻略中が進むと、オートナビ状態で、勝手に次の目的地へ向かってくれるのでだいぶ楽になるんですが、じゃあなぜ一度行った他の場所に自力で行かされるのか、大変疑問です。
 最初の一回は“バイクで走っている”イメージをつけるためにも自力で行った方がいいと思うけれど、再訪する場所へはオートナビでもいいのでは…?

 それから、攻略対象キャラクターが隠れキャラも含め4人と少ないとはいえ、ADV部分にスキップモードが無い点もマイナス
 “撮影システム”がある関係上、テキストのすっとばしがやりづらいのは解りますが、やりようはあったと思います。
 何分、あまりにも私が文句を言ったため、元締と揉める原因になったのは笑えない事実だし…。
 鷹羽氏も某ゲームのせいで夫婦仲が危うくなったそうですが、私もこのゲームでは危なかったよぅ。
 ケチばかりつけていますが、我慢できない程ダメダメシステムな訳ではありません。
 ただ、シナリオが“重たい”のだから、せめてもっと快適に進めさせて欲しかったです。
 なお、『投稿九拾八式・御意見箱』で書いていた「ヒントが少ない」というのは、私の進め方に問題があったらしいです。
 後で確認したら、ちょっと考えれば何とかなるレベルだったので、この点に関してはラーメン同様(謎)前言撤回させていただきます

 次にシナリオについて。
 シナリオの完成度は、全体的にかなり高いです。
 ところがこの出来のいいシナリオが、ゲーム最大の欠点(でも本当)!
 つまり、シナリオ評価をよく使われる“ダイヤモンド”とせず、色石の“エメラルド”に例えているのは、一般的に最高級とされる宝石“ダイヤモンド”とは言い難い理由がちゃんとあるからなのです。
 ちょっと話は逸れますが、天然のエメラルドには必ずと言っていいほどゴミのような物(インクルージョンと呼ぶ)が入っていて、それが無い物は人工と思って間違いないらしいです。
 私はこのゲームのシナリオにそんな印象を受けました。
 このゲーム、テーマは『出会いと別れ』との事。
 解りづらい例えで申し訳ないのですが、「宝石(ギャルゲー)に必ずゴミ(別れという結末)が入っているなんて許せない!」という人には、まぁ〜ったくおすすめできないという事です。
 私個人としては、その“インクルージョン”があったからこそ、シナリオを高く評価しているのですが…
 それでも単純に「素晴らしい!」とは思えませんでした。
 確かに、一つ一つの話を単独で見る分には“インクルージョン”といえる『別れ』も感動できる要素となります。
 ですが、どのキャラを攻略しても延々『別れ』をテーマにされてしまっては、どうしても通常ゲーム完クリ時に感じるはずの“達成感”が無く、その代わりに“挫折感”が襲ってきます。
 しかも攻略本を見る限り、スタッフは確信犯でそれをやっているようで、オフィシャルコンプリートワークス(以降、スタッフの方のご意見はすべてこの本から引用しています)のインタビューで、企画の浅野氏が「娯楽としてのゲームではかなりヘビーなテーマを描いた」とおっしゃっています。
 でもでも、必ずしもヘビーなテーマのゲームが達成感の無いゲームになる訳ではないので、これはゲームとしては致命的な欠点ではないでしょうか?
 なんというか、救いが無い感じなのです。
 それも、ファンタジー世界や鬼畜エロゲーにある様な、「実際にはあり得ないが、救いが無い」というシロモノならまだしも、妙に現実的なシナリオなので、主人公が味わう“別れの痛み”が、ダイレクトにプレイヤーにも伝わってきます。
 また、この出会いと別れによって、主人公が“前向きになった”のが救いの部分なんだ…と言われてもちょっと首をかしげてしまいます。
 と言うのもこの主人公クン、純で一本気、常に真剣だからキザなセリフも臆せず言う、加えてこちらの気分を害さない程度にちょっとスケベで、外見も○…と最初からずいぶんと好感度の高いキャラとして描かれており、か〜なり、元から前向きな印象を受けます。
 確かに死んだ親友の事を引きずっており、実は後ろ向きなキャラなのですが、それによって何もできなくなった状態ならまだしも、ここまで立ち直っている状態の彼をさらに前向きにしなくても(あ、かえって後ろ向きになっちゃうEDもあったや)、そのうち自力で立ち直りそうな気が…。
 実際、誰ともくっつかないEDではそうなってるし(苦笑)。
〜ご注意下さい!〜
 ここから自分にしては珍しく各キャラクターごとにシナリオを評価してみようと思いますが、かなりのネタバレが含まれますので、まだ未攻略のキャラは読み飛ばして下さい。
 特にこのゲームはオチを知ってしまうと、ダメージ半減…じゃなくて、つまらなくなりますから。
※攻略した順です。

1.斉藤冬(夏)ED 総合評価:C(何も知識が無ければB)

 双子の姉に当たる冬と、妹にあたる夏。
 おとなしくてちょっとトロイ冬。明るくて少々キツイ夏。
 轍の書いた記事のファンだと言う冬と轍はだんだん惹かれ合うようになるが、妹の夏も主人公を好きになってしまい…?

 ちょっとカンのいい人なら、だいぶ早くから「この二人は同一人物ではないか?」と気が付くシナリオ。
 なにしろ、絶対二人一緒に出てこないんだから当然でしょう
 ところが轍は鈍感な上にまっすぐなモンだから、なかなかそれに気付かないのが笑えます。
 結局、轍の愛した冬の人格は消えてしまい、夏も彼の事は忘れてしまう…というラストはけっこういい感じです。
 しかしこのシナリオには自分にとって大きな問題点が二つあり、素直に評価する事ができませんでした。
 一つは、“同一人物”という関係上、夏に一生懸命からむ様に進めても、轍は冬の事を好きになってしまうという展開にシフトしてしまう事
 「待て、轍! 私は夏を落としたいんだ!!」と画面上のキャラクターにいくら語りかけてもムダで(当たり前じゃ)、勝手に冬に「俺は君が好きなんだ」とやり始めるのには頭が痛いです。
 前出の浅野氏が「ああいう設定である以上、冬と夏の話は二人で一つだから、夏単独のEDは無い」という様な事を答えていましたが、単に「二重人格の本当の人格部分と恋愛関係になり、その後それが治った場合どうなるか」が思いつかなかっただけなんじゃないか? などと勘ぐってしまいます。
 意地の悪い見方ですが、私がこう考えるのには理由がありまして…。
 私は、諸事情により精神科関係に関わった事があるんです。
 その関連で知っているのですが、症状のハッキリした患者が旅行に出る時には、厳重にこう注意されます。
 「親御さんかそれと同等に信頼できる人間が常に付き添う事」と。
 …ね? 
 医者にかかっているはずの夏が、一人であっちへフラフラこっちへフラフラ…。
 しかも肝心の医者が、いくら考えた上での事とはいえ、平気でシロウト(轍)に彼女を任せてしまうのは、結果オーライだったからいいモノの、本来責任問題が生じてもおかしくないはず。
 まあこの時森岡医師は、家を飛び出した嫁はんの事で頭がいっぱいだったろうから(爆)、ちょっとおかしかったのかもしれないけれど。
 ようするに、ちゃんと勉強した上でこのシナリオを書いたのか? が曖昧。
 もし勉強したというなら、表面的な部分だけ都合良く抽出して書いている所が気になります。
 いっそ、冬を幽霊にして、夏に取り憑く形で二重人格を引き起こしていた…とでもしてくれた方が良かったかも。
 樹とネタがかぶっちゃうけどね。

2.時坂樹ED 総合評価:A

 編集長の言葉に従って向かった摩周湖で、轍は神秘的な美女と出会う。
 まるで摩周湖の青に溶けていってしまいそうなほど、透明で憂いを帯びた彼女を見て、轍は思わずシャッターを切る。
 必死に頼み込んで彼女に正式にモデルになってもらい、二人で色々な所を巡るうちにお互いに相手を好きになるが、樹の過去の傷に触れる事件が起こり、彼女は行方不明になってしまう…。

 このシナリオは樹が幽霊(だよなあ、あれは…)なので、最後の別れのシーンは必然、素直に感動できました。
 また、バッドEDの方でもキレイな別れが待っており、少々冗舌過ぎるトゥルーEDより個人的にはこちらの方が好き。
 特にバッドEDでの、はっきり真実を語らない樹の事を、感覚的に幽霊であると気付きながらも追求せずに黙って別れる轍には、こみ上げてくる物がありました。
 このEDに素直に感動できるという事は、やはり『別れ』を後味が悪く無いように描くにはファンタジー要素が入っている必要があるという事かもしれません。
 ただ、トゥルーEDで幽霊と契るのはどうかと思うぞ
 まあ、F・O・GだからSEX描写はあると思っていたけど…。

3.滝沢玉恵ED 総合評価:客観的に見てA、個人的にはアレなんだけど…

 北海道に渡るフェリーの上で出会った明るくて天然ボケライダーの女性、玉恵。
 轍は行く先々で彼女に会う事になる。
 ひょんな事から、『風雨来記』を彼女と二人三脚で作る事になり、その結果、二人はつき合い始めるが…。

 ハッキリ言って、ここまで実際に居そうな“何不自由無く与えられてきたお嬢様”と実際に起こりうるレベルでの“まずい料理”を描いた話は、今まで見た事が無い!
 なぜかお嬢様というと女王タカビー風か、おとなしくて従順というステロタイプが存在しているが、玉恵はそのどちらにも属さない所もGOOD。
 明らかに自分でも失敗したと解っている料理に「おいしい」と答えてもらえなければスネる…なんていうのは、周りがチヤホヤしてきた証拠だと思います。
 また、その失敗した料理に関しても“ミートソースせんべい”だの、“殺人チャーハン”(←内輪ネタはやめい!)だの極端な物ではなく、出てくるのは最初から弱火で焼き続けたステーキゆで過ぎた温野菜という、いかにも初心者がやってしまいそうな失敗料理。
 こんなちょっとした描写でも、この『風雨来記』にはリアリティがあります。
 だからこそプレイヤーに与えるダメージがでかい訳なんだけど。
 ところでこの玉恵は、4ヒロイン中唯一、再会してまたやり直す事が可能なキャラクター。
 あはは、でも由美もバッドEDしか見てなかったら、やり直せそうに感じるかも(無理だけど)。
 それは置いといて、せめて玉恵くらい『Treating2U』の蛍子や誠美シナリオのように、その後結ばれた形にしても良かったのでは? 
 結局オーロラは見えなかった…という展開は気に入ってますけどね。 
 そういえばこの話、実話が元になっているそうで、のたうちまわるくらい恥ずかしくて生々しい展開はそのせいなんだな、きっと。

4.森岡由美(隠れキャラ)ED:総合評価:B、これも個人的にはソレなんだけど…
 

 北海道に滞在して約20日。

 轍は編集長命令で川歩きを取材するため、然別湖へ向かっていた。
 その途中、バイク上で伸びをした彼は、飛び出してきた牛をよけきれず、反対車線を走っていた車と事故を起こしてしまう。
 彼と車の運転手、由美には大きなケガは無かったものの、由美は一部の記憶を失っていた…。

 由美に対して轍は、他のキャラより強引な迫り方をしている気がします。
 ま、ただまっすぐに告白するだけなんだけど…。
 実際、これには参ったな。
 あっ、いや、悪い意味で言っているのではないです。
 由美も言ってますが、轍みたいな男にこうストレートに告白されたら、たいがいの女性は落ちるだろーな、という意味の参っちゃうなの(照)。
 この話では、轍が強引に迫る形にしないと由美がマズイ立場に追いやられてしまうため、仕方なくそういう展開にしたんだろうけど、とにかく轍がカッコイイ(ただし、途中まで)し、全体に物憂い雰囲気が漂っているのもいい感じ。
 ところでこのキャラクター、『みちのく秘湯恋物語』のキャラクターだそうで、彼女自身たまに『みちのく〜』ネタをふってきます。
 『みちのく』ファンの人達には嬉しいかも。
 いや、一概にそうとは言えないか、あの展開では…。
 とにかくその関係で花札で勝たないと、撮影をさせてくれません。
 再登場キャラクターである以上、以前のゲームとからめようとするのはいいんだけど、唐突に花札をやらされるのはちょっと気になるかな。
 もっとも、イベント上必要な写真は勝たなくても撮らせてくれるからいいんだけどね。

 それともう一つ、ご都合主義的に記憶を抜け落ちさせている所が評価Bの理由
 この話、どちらかというとレディースコミック的です。
 「昔の恋人が忘れられなくて、ふと今の夫から離れた旅先で、その恋人に似た年下の男の子から告白され、つい“行きずりの恋”にハマるが、それでも自分を支えようとしてくれた夫の優しさに触れ、結局は元のサヤにおさまる
 …どう考えても、「そりゃお母様が喜ぶマンガだーっ!」(『サルまん』より)展開。
 ヌキエロゲーならともかく、ギャルゲーで現在進行形の人妻という設定は、大多数のプレイヤーである男性に嫌われないかどうか心配。←余計なお世話(汗)
 轍の強引さと、ご都合主義の記憶喪失というファクターは、嫌われないようにするための配慮だと思いますが、その程度ではどうかと思います。
 事実、自身妻帯者である元締は、かなりの難色を示したしね(←と人ゴトのよーに書く私…)。
 
5.アイツ(主人公単独)ED:総合評価:困った事にこれが最高…AAA

 もうすぐ旅も終わる。
 一昨日、自分の元から去っていくアイツの夢を見た。
 呼び止めようと思ったが、必死にそれをこらえた。
 昨日見た夢の中でアイツは、笑って「またね」と言った…。

 とんでもない事を言うようですが、どの女の子とも関わらずに一ヶ月過ごすと出るこのEDが、このゲーム全体のトゥルーEDなのではないでしょうか(理由は後述)? 
 ところで、主人公にバイクの前輪(これが無ければ走れない)とまで言わしめた“アイツ”の描写は大変素晴らしいです。
 多勢に無勢のケンカに挑もうとしていた“アイツ”に加勢しようとした事で仲良くなり、どこに行くにも一緒で、色々な所を冒険した。
 中学生の時、二人だけで北海道にオーロラを見に行こうとして失敗した事がある。
 主人公の乗っているバイクは、その人の形見である…とこう来たら、普通は男性を想像する。
 ところが話が進むにつれて、プレイヤーに、「もしやこの人は女性なのでは…?」と思わせるように描かれています。
 これは純粋にすごい描き方だと思いますね。
 …で、同じ女性として言わせて貰いますが、こんな完璧な想い出の女性には最初から勝負を挑む気にはなりませぇ〜ん!! 
 もし、この主人公とつきあうような事になったとして、「彼女の事より私を好きになって」と言える女はよほど自分に自信があるか、よほどのアホかのどっちかでしょう。
 それでも大概の女性は、自分を「馬鹿だ」と解った上で、このセリフを口にするでしょう。
 …が、それは不可能に近いのでは…?
 なぜなら“アイツ”は最初から主人公の半身と言ってもいい存在で、しかも死んでいる事で、その存在をさらに昇華させてしまっているのだから…。
 その事を理解した上でこの主人公を包み込める女性以外は、彼とつきあい続ける事はできないでしょう。
 でも人間、“最初から自分を一番好きになってくれる可能性が低い”相手と、恋人としてつきあい続けるのは 、かなりキツイんではないかと…。
 私見ですけどね。
 「“愛人”でもいいからこの人と過ごしたい」って願望を持つ人も世の中にはいる訳ですから。
 ただ大概バレて離婚だの慰謝料だのになる事を考えると、やはり人間は“自分を一番好きでいて!”という気持ちが強いんじゃないかなーなんて思いますけど。 
 そういう意味で、この主人公、最初から失恋しやすい背景を持っています。
 だからこそ、誰とも関わらずに自分一人で“アイツ”をふっ切れるこのEDが、さわやかで気持ちの良い物になっているのでしょう。
 このEDの後からなら、彼は本当に“今の自分にとって最高”の女性と巡り会える予感がします。
 私がこのEDを真のトゥルーEDと言うのはそのせいです。
 もし、他のキャラとのEDでこのゲームに“後味の悪い”印象しか持てなかった方には、ぜひこのED(※最後の選択肢で呼び止めない方がいいEDになるぞ)を見て欲しいです。
 だいぶ救われると思うから。


(総評)
 …とこの様に、個別のシナリオに言いたい事はありますが、斉藤冬(夏)シナリオを除けば、評価そのものは全体的に高いのです。
 ごく個人的にはEDすべてを『別れ』という形で締めた事と、全体的に漂うムードの良さを評価したいのですが、どうしても「ゲームとしてはどうか?」という疑問にぶち当たってしまいます。
 そんな訳で、自分の評価にまったく自信が無く、けっこう色々なサイトでこのゲームに対する意見を見てきました。
 結果、樹シナリオしかまだやっていないという人が、「感動した」「素晴らしかった」と絶賛しているのに対し、玉恵や由美のシナリオを経過した人は、「とにかく後味が悪い」という意見がほとんどの様です。
 ゲームを終えて、昔読んだ少女マンガの入門書に「『失恋』というテーマは、どう描いても後味の悪い物だから、とても難しいテーマなので安易に扱わない方がいい。ホラーやサスペンスですら、読者はどこかに救いがある事を望んでいるのに、もっとも身近なテーマである恋愛で、後味の悪い物は避けた方がいい」というアドバイスが載っていたのを思い出しました。
 しかもこのゲーム、失恋の後味の悪さのみならず、もう一つの夢、心光展の入賞も叶わないままで終わってしまうのです
 せめて別れを経た後、それを乗り越えた先に心光展の入賞があるならまだ救いがあるのですが、それもうまくいかない。
 最高の一枚が取れなかった=入賞できなかったという図式にしたいのは解りますが、じゃあそれまでそのためにWEBページ作成システムを黙々とこなしてきたプレイヤーの立場って一体…?
 何度も言いますが、難しいテーマにあえて挑んだという点は評価します。
 ですがスタッフの方は、「自分がプレイしたい理想のゲームができた」と胸を張って言えるのでしょうか?
 スタッフの方の意見で一番不思議なのは、「旅ネタは必ず“君に会うために旅をしてきた”というオチになって、主人公はもう旅をしなくてよくなってしまうのが納得いかなかった」という物です。
 月並な意見になりますが、「これから二人の旅が始まる」という考え方もあるとは思わなかったのでしょうか? 
 それとも「男は一人で行く物さ〜♪」という事や、由美の言っている様な、「女は港」的発想が言いたかったのでしょうか? 
 だとしたら“アイツ”とも、“アイツ”が女性である以上、二人で旅をし続けるのは不可能という事になりますが…。
 あ、だから死んでるのか(爆)!
 このゲーム出来そのものは本っ当にとても良いのですが、残念ながら“ユーザー置いてきぼり”という感じがした、というのが正直なトコロです…。

(柏木悠里)


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