Ethos 〜天使(ゆき)の降る場所〜
  冬の街角で君は天使と出会う。

1.メーカー名:forte
2.ジャンル:ロマンチックADV
3.ストーリー完成度:F
4.H度:E
5.オススメ度:F
6.攻略難易度:D
7.その他:せめて一貫性は持って欲しい。


(ストーリー)
 主人公「日野森光流(名称変更可)」は、アルバイト中に風変わりな格好をした不思議な少女「フェイ・ラン」と出会う。
 フェイは天使で「幸せの雪」を降らせるために、天界からやってきたと光流に打ち明ける。
 だが、理由は分からないがフェイは幸せの雪を降らせる事が出来ないので、降らせる事が出来るまで居候させて欲しいと光流に申し出る。
 人の良い光流はこの申し出を断ることが出来ずに、渋々ながらも承諾するのであった。
 そして、光流とフェイの奇妙な共同生活が始まるのであった。


 パケ買いシリーズその4、いい加減内容を吟味して買うべきかもしれないと痛感させられた。
 感想なんぞ、正直「パッケージに騙された感しかない素敵なゲームをありがとう」の一言で語り終えてしまえそうな内容だ。
 しかし、それでは購入代金6800円が報われない。
 せめて、この元くらいは取らせてもらわないと非常に悔しいので、今回はこの地雷ゲームを評価してみたいと思う。
 以下本文にて、愚痴と取れるくらいの評価を見て頂きたい。

 このゲームでプレイヤーは主人公「日野森光流(ひのもり・みつる)」として、天使フェイが「幸せの雪」を降らせる為の手伝いをしなければならないのである…多分
 別に冗談で多分と書いた訳ではないのだが、本当に冗談と思えてしまうほど序盤の展開と終盤の展開に整合性が見えないのである。
 そもそも、序盤では散々「幸せの雪」というものをプレイヤーに印象付けているのだが、中盤以降は一切「幸せの雪」というものに触れないのである。
 もしも、このゲームがマルチエンド型のADVだったならば、各ヒロインのシナリオ毎に違う展開が用意されていてもおかしくは無いのだが、このゲームはあくまでも一本道でフェイを中心に展開しているので、フェイの主目的である幸せの雪を深く掘り下げていく必要があるはずだ。

 ここで問題の「幸せの雪」とは何かを考えてみたいのだが、残念な事に作中ではフェイが神の命令でそれを降らせなければならないという事以外は、ストーリー中並びにエンディングでも一切その説明が成されていないためどのような現象なのかも推測する事は出来ない。
 それに、降らせなければならない理由というものも一切説明されていないのだ。
 そのためプレイヤーには、「特に理由もないのに幸せの雪という訳の分からないもの降らせる事」がフェイの使命としか受け取れない。
 本来ならば、常にプレイヤーにフェイの目的を意識させなければならないのだが、それが成されていない為にストーリー中で必要な筈の幸せの雪が全く必要ではなくなってしまった。
 当ゲームは「ほのぼの系ゲーム」なので、フェイがこれから幸せの雪を「降らせる」のでなく「降らせた」ことにすれば、幸せの雪を特別説明せずとも「ほのぼの系ゲーム」としてのストーリーを無理無く展開出来た筈である。
 だが、当ゲームはストーリーの構成上どうしても「フェイが力を使い続ける描写」を挟まなければ成らない為に、幸せの雪を「降らせた」ことにする事が出来ないので、どうしても幸せの雪をストーリーに絡めなければならないのだ。
 中盤にてフェイが天使としての力を失い始めるのだが、この「フェイが力を使い続ける描写」が有る事に拠ってプレイヤーに様々な憶測をさせる事に成功しているので、一見唐突な展開ながらもこれには充分意味が出てくるのである。
 しかし、フェイの力が弱くなった事に対するその後のフォローの仕方に問題が有る所為で、この部分の成功が完全に死んでしまう事になったのは残念としか言い様が無い。
 力が弱くなった事に対してフェイは当初「このままでは人間になってしまう」と言っているのだが、暫くすると「このままでは死んでしまう」と発言しているのである。
 しかも、光流を含めた全キャラクターが前者ではなく後者の発言のみを認識しているのだ。
 プレイヤーは当然の事ながら、二つの異なる情報を与えられているためにどちらの情報を信じて良いのか分からずに取り残されてしまう。
 もしもこれが、「どうなるか分からない、最悪死んでしまうかもしれない」という発言だったならば、プレイヤーもどうなるか分からない今後のストーリーを推測しながら楽しむ事が出来るのだが、既に結論とも言える二つの結果を提示されてしまったために、今後の展開を容易に想像出来るという不具合を生じさせてしまった。

 更に悪い事に、この時点でシナリオの流れが当初の「幸せの雪を降らせる」から「フェイの力が弱まった原因を解決する」を経て「フェイが死んでしまうかもしれない」と移行しているために序盤の展開さえも無視してしまう結果となった。
 個人的見解だが、やりたい事のみを詰め込むのではなく要所要所をキチンと纏めておけば、このようなストーリーの破綻を招く事は無かったと思うので残念でならない。

 当ゲームはフェイが中心になって展開されるメインストーリーから分岐した形で、美雪以外のそれぞれのヒロイン毎にショートストーリが設けられている。
 エンディングはそれぞれのヒロイン毎に用意されているのだが、残念な事に久美子はフェイのBADEND的扱いであり、美羽・美卯はほぼ同一ストーリーと言っても差し支えない展開だ。
 だが、その他のヒロインは充分に本筋とは違った独自の面白さを作り出す事に成功している。
 特に翠と馬鹿の二人のシナリオは、不思議な事など一切起こらずに光流も完全に脇役となって二人の関係を見守る展開である。
 本来このような展開では、主人公キャラが一歩引いた扱いとなってしまうために微妙に違和感が付き纏うものだが、元々光流は積極的な性格ではないために一歩引いていても違和感無く脇役としての役割をこなしているので、メインの二人の存在が充分引き立てられているのだ。
 そのため、翠と馬鹿のENDは本編以上にストーリーテーマである「ほのぼの」を体現している。
 逆に光流とのENDは、翠のストーリーの雰囲気をぶち壊しにするくらいの出来となっており、有る意味BADENDと呼ぶに相応しいエンディングとなった。

 そして麻奈のシナリオは、当ゲーム中最高の完成度を誇っている。
 何故完成度が高いのかと言うと、その理由として麻奈シナリオの完成度と光流の主人公としての有り方の二点が挙げられる。
 他のヒロインのシナリオでは、終始受身な姿勢のために光流に対してストレスばかりが募るのだが、麻奈のシナリオでは光流が積極的に麻奈に対して関わりを持とうとしているので、ゲーム中にて唯一主人公としての役目を全うしているのだ。
 それに、フェイの天使としての設定も麻奈シナリオにおいてのみ十二分に生かされている点も評価したい。
 逆に、メインストーリーであるフェイシナリオと美卯&美羽シナリオでは、光流は主人公でありながら脇役としての立場しか与えられていないのだ。
 そもそも、主人公に脇役的な立場を取らせる必要がある場合というのは、脇役達が主人公として活躍するサブストーリーとしてならば容認できるのであるが、プレイヤーの主観が主人公のままで脇役達が独自に行動する展開というものはプレイヤーに対してストレスしか与えないのだ。

 ちなみに翠と馬鹿のシナリオでは、光流はシナリオ展開上どうしても脇役とならなければならないのだが、美卯&美羽シナリオにおいては本来光流がストーリーの主導権を握らねばならないはずの展開でありながら、美卯&美羽の葛藤に重点を置いているために結局光流には脇役としての立場しか与えられていない。
 そのため、美卯&美羽のシナリオでは光流がどちらに好意を持っているのかがラスト付近まで判明せずに、ラスト付近にて美雪にどっちが好きかを問われる選択肢があるのでそこで選んだ方のENDを迎える事になるのだが、これでは態々二人のシナリオを用意しなくても良いようにしか思えない。
 同様にメインのフェイシナリオでは、光流は終始久美子に引っ張り回される展開となっている。
 久美子メインのシナリオ展開であるならば、光流がどれだけ久美子に引っ張り回されても久美子の光流に対する一途な思いがあるために微笑ましいで済ませる事が出来るのだが、これはあくまでもフェイのシナリオなのだ。
 それなのに光流が受身の姿勢で脇役的な行動しか取れない展開では、もし話が綺麗に纏まっていたとしてもプレイヤーはストレスしか感じる事が出来ない。
 これでは余りにも光流の立場というものが存在していない。
 更に各ヒロインが光流に対して好意を抱く理由がハッキリしていない事も、光流が主人公でありながら脇役としての立場しか与えられない事に影響を与えているのだ。
 各ヒロインが光流に対して好意を抱くに至った経緯というものが、ハッキリとしないのである。
 一応、美羽と麻奈はそれぞれ「一目惚れ」と「自分の支えになってくれた」と好きになった理由を受け取る事が出来る。
 充分とは言えないが美羽と麻奈はそれぞれ無理がないようには受け取れなくも無い。
 だが、フェイ、久美子に至ってはハッキリとしていない。
 ゲーム中に与えられる情報のみで推察すると、フェイは久美子に対する対抗心、久美子は理由が不明ながらも昔から好きだったというようにロクな理由ではないのだ。
 もう少し掘り下げてやれば充分に納得できる理由を付けてられたはずなのではないのだろうか?
 例えば、フェイならば一緒に暮らしているのだから好きになる理由を作るに充分なイベントを用意してやれば良いだけである。
 久美子ならば、回想という形でも好きになるに至った理由を描写すれば良いだけである。
 これらの描写を加えただけで、フェイと久美子のキャラクターに更に深みが増しその後のストーリーにも充分に説得力が生まれるはずだ。
 どうもこの辺りの描写を省いているので、手抜きをしているような印象しか受けない。

 少し話はずれるのだが、美卯に関しても描写が変な部分がある。
 それは、他のヒロインの時には一切光流に対して好意を抱いているような場面がないにも関わらず、美羽が光流に対して好意を持った事で未だに自分が光流を好きな事を知るのだ。
 これでは、美卯は光流が好きなのでなく美羽に対する対抗意識でのみ光流を好きになったとしか、プレイヤーは感じる事が出来ない。
 このような問題を解決するには、他のヒロインの時にも光流に対して未だに好意を抱いているような描写を挟めば良いだけなのだが、それを怠っているためにこの部分が変に目立ってしまうのである。

 各キャラクターの扱いに関しても残念な部分が目立ってしまった。
 それぞれのキャラクターが、本来果たさなければならない役割を果たしきれずにストーリーが展開するために、キャラクター本来の魅力を充分発揮しきれていないのである。
 一番酷いのは久美子だろう。
 本来は無邪気さと一途さを兼ね備えて、光流に振り向いて欲しいがために一生懸命頑張っている姿を描きたかったのだろうが、やっている事が自己中心的な行動となっているのでキャラクターの魅力を完全に減殺してしまっている。
 酷い言い方かもしれないが、目障りとしか感じられなかった。
 もう少し久美子の行動が控えめだったならば、こんな事にはならなかっただけに残念で成らない。
 

(総評) 
 どうも全体的に厳しい評価となってしまった。
 絵は柔らかい感じがよく出ているので良いのだが、イマイチキャラクターを生かしきれていないために絵だけのゲームという印象しか受けない。
 ストーリーも、複線を張っていながらそれを消化せずに新たな複線を張るのでプレイヤーを置き去りにしてしまっている。
 シナリオ重視のスタイルを取っているのに、見せるべきシナリオを充分見せきれていない部分も残念としか言えない。
 このようなスタイルならば最低限プレイヤーに、何を「見て」何を「思い」何を「感じて」欲しいのかくらいは訴え掛けてくるようなゲームでなければならないのでないだろうか?
 それが出来ていないのは本当に残念としか言いようがない。

 このゲームが普通のマルチEND形式のADVだったならば、もう少し違った評価となったかもしれない。
 そのため、個人的には典型的な地雷ゲームという評価しか下せなかった。
 
 後、OPムービーに宣伝テロップを入れたままにしておくのは、手抜き以外のなにものでもない。


(乾電池)


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