超昂天使エスカレイヤー 〜BeatAngelEscalayer〜
  某月某日、エルトリアと梨瀬成は評論対象にするソフトを探すべく秋葉原に繰り出していた。

エルトリア(以下、エ):梨瀬成さーん、この「いもうとブルマ」はどうでしょう! ブルマ好きの梨瀬さんにオススメの一本ですよ。
梨瀬成(以下、梨):オマエ! そうやって、いきなり人々の誤解を招く発言してるんじゃない!
  だいぶ前に「汁ぶるま〜夏〜」出たときも同じ事ゆーとったやんか!!
エ:(空々しく)はあ!? とんと覚えがないですが、「ぶるまー2000」にあれだけ入れ込んでいた梨瀬さんの台詞とは思えませんね。
梨:別にブルマ自体に入れ込んでいたわけじゃないわい!
  オマエ、そーゆー事ばっか言ってると、いまそこの「滅せ三オー」「きのこ〜禁断の治療薬〜」予約して送りつけるぞ!(エルトリア君は究極のきのこ嫌い)
エ:べつにやってもいいですけど、そんな事したら、梨瀬さんとは絶交ですからね。
梨:「絶交」なんて単語聞いたの20年以上ぶりダヨ…
エ:(む…この拮抗状態を崩すには、どうすれば…きょろきょろ)お、ちょっといいものが…
 ずいずいと店内の奥に入っていくエルトリア。
 数分後、でかい箱を俺っちにぐいと押しつける。
エ:はい、プレゼントです。これなら大丈夫でしょう。
梨:オイ、「超昂天使エスカレイヤー」じゃねーか。なんで、俺っちがやんなきゃいけねーんだ?
エ:だって、アリスソフトだし…
梨:かんけーねーじゃん
エ:DVDオンリーだし…
梨:オマエだって持ってるじゃん。
エ:(おっしゃー、起死回生のネタ!)いやー、この手のジャンル好きかなと思いまして。

梨:………!?

エ:変身ヒロインモノですよ、梨瀬さん!
 「魔法少女アイ(しかも+も)」「魔法戦士スイートナイツ」を完クリしている梨瀬さんなら喜んでくれると思いまして!!
梨:………
エ:確か「魔法戦士スイートナイツ」のCG達成率が…
梨:ああああーーー!! 分かったよう。皆まで言うな!
  そんならやったるわい!CG100%だろ!? 臨むところよ!
エ:(自ら墓穴を掘りましたね…計画通り)
梨:何か言った?
エ:いーえ! 何も!


1.メーカー名:アリスソフト
2.ジャンル:SLG
3.ストーリー完成度:C
4.H度:S
5.オススメ度:B
6.攻略難易度:B(イージー系を選べばD)
7.その他:CG100%にすんのにプレイ回数がのべ11回…コスパがいいのは確かだね。


(ストーリー)
 夏休みに入ろうとしているある日、主人公・柳瀬恭平のクラスに1人の転校生がやってきた。
 彼女の名は高円寺沙由香、恭平のかつての幼なじみだった。
 久々の再会に喜びすぐに声を掛けた恭平だが、彼女にはまるで恭平のことなど憶えてない様に振る舞われ、恭平は大いにショックを受ける。
 その翌日、日本は突如現れた異星人「ダイラスト」の侵略を受けた。
 ダイラストの怪人が暴れ回り、町が壊されていく中、周囲の人間を後目に沙由香が1人姿を消す。
 不審に思い、後を付けた恭平が目にしたものは彼女が誰もいない場所でオナニーに耽る姿だった。
 驚く恭平の目の前で彼女は絶頂に達し、その瞬間、彼女は変身を果たしていた…
 超昂天使エスカレイヤーに!


 アリスソフトにしてはやたらとウケ線の絵柄(後で知ったけど「ダークロウズ」と同じ人なのね…)と濃いH、DVD先行発売と話題には事欠かない作品だったので、やってみようかなぐらいには考えていた作品だったのだけど、エルトリア君からのプレゼントはまさに渡りに船という感じだった(ちなみに、今回の前置きは90%ぐらい、ホントにあったやりとり)。
 しかし、全部CG見ようと思ったら、まあ手の掛かること手の掛かること…結局、全EDを見てもCGは埋まらず更に2回プレイするハメになった。
 つまり、それぐらい凄まじいボリュームの作品だったという事だ。
 DVD先行発売を実行し、DVDでやる事を大前提にしてあるのも、納得である。

 かように、今回はとにかく「Hシーンを見せる事」に重点が置かれており、その大半が沙由香がエスカレイヤーに変身するために必要なドキドキエナジー(性的興奮)を得るための調教シーンだ。
 そして、そのドキドキエナジーを利用しエスカレイヤーに変身して戦う戦闘パートや、調教の難易度を下げるための純愛度・鬼畜度を上げるためのADVパートなどが、実に上手に絡んでいる。
 今まで調教系のゲームは色々やり込んできたものだが、これほどシステムが完成しているものはかつての名作「殻の中の小鳥」以来かもしれない。

 「トレードオフ」という言葉をご存じだろうか?
 あまり耳慣れない単語かも知れないが、要するに「何かの力を得るとき、その代償に別の何かを求められる」事だ。
 それは大体が得たものの正反対であるものであったり、正のものを得たときに求められる負のもの(あるいはその逆)だったりするものだ。
 例えば、ちょっとヘンな例えだが、有名な「Wizardry」シリーズのとてつもない破壊力を誇る「蝶のナイフ」は、その代償として一度身につけたら外せなくなってしまうという呪いがかけられていた(しかも、一つも装備品を付けていないと自然に防御力が上昇すると言う特殊技能を持つニンジャ専用武器だ!)。
 このトレードオフが「超昂天使エスカレイヤー」では実に上手く作用しているのだ。
 その最たる例が、調教時のさいころ判定に良く現れている。
 このゲームの調教シーン、それぞれに難易度数値が設定されているのだが、それをさいころ1〜3個振って出目が上回れば成功という方式をとっている。
 当然、さいころの数が多くなると恭平のリビドー値(簡単に言えば恭平のHPだ)をより多く消費してしまうため、すぐに休憩を挟まなければならなくなる。
 初期に難易度の高い調教はそれなりのリスクを伴うし、低いものは安全に調教シーンに突入できる=ドキドキエナジーを得られやすい訳だ。
 だが、このさいころ判定で失敗しても1ターンを無駄に消費してしまう代わりに、調教の難易度を下げることが出来るのだ。
 調教難易度は純愛度・鬼畜度の数値によって純愛系・鬼畜系・通常系(純愛系と鬼畜家の平均値)の調教に補正がかかる訳だが、この補正はADVパートでのみ上げることが出来るので、結果的に時間でしか解決出来ない。
 1ターンを犠牲にしてまで…と考えてしまうかもしれないが、実際これは侮れない。

 例を挙げてみよう。
 とある純愛系調教を朝に行い、難易度が補正を含めて9だったと仮定する。
 さいころ判定は3+4で7で失敗。
 ここでまずこの調教の難易度が-2で7まで下がる。もう一回同じ出目を出せば成功する数値だ。
 更に昼のデートでの選択肢で純愛系の選択肢を選べば、町の治安度が高ければ純愛度に+2されて純愛系調教全体の難易度が-2。
 そして、そのまま戦闘シーンに入りフラスト系の怪人を倒せば、純愛度に+1されて更に純愛系調教全体の難易度が-1になる。

 さて午後の調教パートは同じ調教をするならば-2、-2、-1で計-5の補正をかけられ、難易度は一気に4まで低下。パーセンテージにしてみれば25%から67%に一気に成功確率が上昇してしまうのだ。
 こんな調教の基本システム一つとっても、これだけのトレードオフがしっかり設定されている。大したものだ。
 敵に敗北して犯されてしまったときにドキドキエナジーが+100も上乗せされるのも良いアイデアであり、しっかりとトレードオフが作用している。
 この作品のシステムのキモはやはりドキドキエナジーの貯め方とその使い方にある。
 ドキドキエナジーは戦闘シーンに突入した時にアーマー(HP)をセッティングするのに必要だし、エスカレイヤーの各種能力を上げるのにも必要不可欠だ。
 言ってしまえば、RPGで言うところの経験値に相当するものなのだが、これをエスカレイヤーの能力を十分に上げるほど貯めるのは、正直かなりゲーム進行上ギリギリのセンなのだ(ノーマルモードの場合)。
 戦闘シーン、特にフラストと呼ばれる怪人クラスの敵と戦う場合、技の使い方によっては敗北も十分にあり得る
 敗北にはもちろんペナルティーがある。
 純愛ENDの道は遠のくし、鬼畜度は上がるし、何回も敗れればそのままBADENDに直行なのだ。
 だが、この敗北することによってドキドキエナジーを稼げると言うことは、言うなれば経験値を得られる=エスカレイヤーを強化出来る=次は同じ敵に勝てる突破口になる、という恩恵にも直結している訳だ。
 もちろん純愛ENDを目指せば、この敗北というのは極力抑えなければならない。
 だからこそ、ハッピーENDと言える純愛ENDはこういった点でも若干難易度が高いと言える。それだけドキドキエナジーを得る機会が減るからだ。
 ただ、シナリオの展開上偽エスカレイヤーであるFM77には必ずHされるし、ノーペナルティーのルーイとのHシーンでドキドキエナジーは稼げる。ここらへんのバランス取りは流石と言うべきだろうか。

 じゃ、鬼畜ENDは簡単なの? と問われれば、これまた結構難しい。
 先にも書いた通り、何回も怪人にHされればBADENDになってしまう訳だから、これまた気を使わなければならなくなるのだが、こちらはHされた回数が6回と明確に判明しているためコレを回避してしまえば、まあ問題はない。
 だが、今度はエスカレイヤーのドキドキエナジーの稼ぎ過ぎが課題になってしまうのだ。
 敗北時の稼ぎは+100、結構バカには出来ない。
 エスカレイヤーのパワーアップにはもってこいなのだが、これで強くなったエスカレイヤーが怪人に連戦連勝状態になってしまうと、町の治安度がぐんぐん良くなって鬼畜度が上げにくくなってしまうのだ。
 特に鬼畜トゥルーEDの条件は鬼畜度の数値がMAXの50になっていること。
 怪人とのHも重要な稼ぎポイントだけに、鬼畜度の上昇のしかたには結構気を配る必要があるし、あんまり怪物をのさばらせ過ぎれば治安度が低下し、そのままゲームオーバーにも直結する。
 純愛ルートにしろ、鬼畜ルートにしろ、こういうバランス取りと作りの精密さは大したものだ。 
 本当にやり応えがあるよ。

 またとにかくスゴイのが、いくらHする事が主目的なゲームとはいえ、よくぞここまで様々なHシーンを用意したなと言うことだろう。
 純愛から陵辱は言うに及ばず、近頃のH系のゲームやマンガのネタは殆ど使っているんじゃないかと思うほどのバリエーション
 ざっと思いつくだけでも、ファミレス制服、コスプレ、触手、ふたなり、3P、SM、etc…
 おまけにどれもこれもやたらと濃いし…アンタ、ホントにドキドキエナジー貯めるためだけにやってんの? と問いたくなってしまう程。
 そんな経緯があってか、どーも純愛系より、鬼畜系EDの方がしっくりくるんだよねえ…この作品。

 さてEDの話に触れたんで、若干シナリオにも触れておこうかと思う。
 いつもの評論の様にシナリオから入らなかったのは、実はワザとだったりする。
 と言うのも、実はこの作品、シナリオは無いに等しいのだ。

 若干ルートに影響のある選択肢が混じるイベントは登場するものの、他のADVパートは単純に純愛度や鬼畜度を上げるための選択肢を決める定型のイベントに過ぎないし、場合によっては同じプレイ中に、まったく同じイベントを二度三度見る事にもなる
 イベントは要所要所でやってきて、他は調教プレイ・戦闘・ADVパートに費やすというのは、感覚としてはイベント以外は仕事によるパラメータ上げに執心しなくてはならないPiaキャロシリーズに近いが、実際主なイベントはOPとEDを除けば各ルート2〜5個というお粗末の一歩手前だ。
 要するに、一部を除いてこの作品のEDは全て調教結果とその数値に左右されるのだ。
 これでは、ねえ…
 もちろん老舗アリスソフトの事、各イベントにおけるキャラの個性付けは申し分なく上手で、これがお粗末なシナリオを一歩直前でくい止めている要因でもある。
 加えて言うならば、コレに似たタイプの作品は上でも挙げた「殻の中の小鳥」もあり、こちらも調教シーンの間にイベントが差し込まれるタイプだった。
 だが「殻の中の小鳥」は背徳的な調教行為に、悲しい宿命を背負ったメイドとの交流をイメージを一切損なわず描き、そしてそれに沿った雰囲気の良いEDを迎えたため、非常に作品として統一感があった。
 だが、これも上でも書いたが、この「超昂天使エスカレイヤー」では様々なHシーンを描いている。
 その上に、ギャグやシリアス、パロディなどが混在しており、お世辞にも統一感があったとは言えない。
 また、正体バレバレな遼子や、マドカの最後の方のイベントがもうミエミエでイタいイタい…まあ、マドカEDは比較的良かったのが救いだったが…
 この統一感のなさに、シナリオ性が希薄なのはどうもね…
 正直、レベルとしてはフォスターのSEAGと大して変わらないような印象を受ける。
 あそこまでゲーム性皆無じゃないにしろ、シナリオに関しては期待外れもいいトコロだった。
 あれだけ素晴らしいシステムを持っていながら、オススメ度Bにしたのはコレが理由だ。

 最後に、絶妙なバランス取りながら、クリアの手助けになるイージーモード、ベリーイージーモードを搭載した事を評価しておこう。
 こういうプレイヤーに対する気の配り方は、申し分ないと言っていい。現に俺っちは難易度はイージーモードぐらいで良かったんじゃない? 位に思っている。
 これで、読み返しと既読スキップ、常時セーブさえあればなあ…(まあ、常時セーブにしなかったのはワザとだろうけど)


(総評)
 いや、全く…感心するやら呆れるやら…
 よくぞ、ここまで遊べる作品を作ったモノだ。
 毎回、アリスソフトの作品には唸らせられるが、ここまでシステムの秀逸なゲームも珍しい。
 ありとあらゆる事が計算ずくめで設計されており、これを考えたスタッフにはただただ頭が下がるばかりだ。

 Hゲームというジャンルは主に4つの要素をはらんでいる。すなわち…
1.Hシーン(CGもここに含む)
2.シナリオ
3.演出(BGMの善し悪しもここだ)
4.システム(ジャンルからバランス取り、基本システムまで)

 だいたいこの様に配分されると思うのだが、コレを全て高いレベルでクリアしている作品はかなり稀だ。
 今回の「超昂天使エスカレイヤー」はシステム面が特に素晴らしかったが、シナリオを除けば全て高レベルでクリアしており、なかなかの良作だと言っていい。

 最近ますます磨きがかかってきたアリスソフト
 と言うわけで次回はいよいよ…


エ:「DALK外伝」ですね。通販申し込みはしましたか?
梨:のわああああーーー!! びっくりしたぁ!!
エ:天下一DALKでも取り上げるんですよね? もうウカウカしていられませんよ。
梨:当然、バッチリ申し込みしたさ! 今度秋葉原行ったら予約特典次第では予約してGETしちまおうかな、とか思っているけど。
エ:DALK病ですねえ…
梨:何とでも言え。そういや、秋葉原行ったついでに「きのこ」も予約しといたろか?
エ:おっと、そんな事したら梨瀬さんの手元に「いもうとブルマ」が行きますよ〜
梨:(ニヤリ)何、その心配はない。
エ:(ギクリ)な、なんですか、その笑い、は…!?
梨:この前、自転車買ったよね〜、FONDORIESTのMEGA…アレでいくらすっ飛んだだっけ?
エ:うぐ…
梨:当然、そんな余裕ね〜よな〜
エ:でもそんなコト言ったら、梨瀬さんだって、この前GIOSのPURE買っちゃったじゃないですか。アレって結構痛かったのでは?
梨&エ:………
梨:今日のトコロは引き分けだ!
エ:そうですね…

 そのむなしい戦いを遠くから見つめる影がぼそりと呟く。
後藤夕貴:あーやだやだ、自転車オタクの会話はよお…


(梨瀬成)


戻りマース