D〜その景色の向こう側〜
 
 みんなを助けるために、その少女の笑顔のために…何があろうとも、僕は未来を変えてみせる。
 
1.メーカー名:Pure Platinum(ピュア・プラチナム)
2.ジャンル:ADV
3.ストーリー完成度:D´(基本ストーリーはB)
4.H度:D
5.お薦め度:B´
6.攻略難易度:D
7.その他:線路は続くよ、どこま〜で〜も〜♪…
 
(ストーリー)
 列車最後尾のデッキから見る夜空、綺麗な星がたくさんあるな。
 だが、何か変だ。
 冬なのに、どの星も瞬いていない。
 ところで僕は何故、こんな所にいるんだ?
 いささか飲みすぎたらしい。
 まあ、みんなのところに帰れば分かるだろう。
 まてよ、みんなとは誰なんだ?
 そもそも僕は誰だ? 名はイルマリ、それ以外覚えがない。
 そして振り返ると、そこには背中を撃たれ、すでにこと切れた男性の遺体が。
「大変だ! 早く、みんながいるラウンジへ行って知らせなくては…」
 だが、それは列車と乗客の運命全体を変える、冒険への始まりであった。
 
 
「前の車両へ行くごとに、過去に会った人々や出来事に遭遇する」
 発売前、雑誌の作品紹介などにはこの様な事が書かれてありました。
 この“ある種”興味を誘う説明と、なかなかの絵の綺麗さから、本作品を購入候補に入れていた人、結構多いのでは?
 とまあ、かくゆう私もそれに“踊らされた”一人であるんですが…
 
 最初、「過去の人に会う」や「運命を変える」といった設定を見たとき「自分のご先祖や子孫と一緒にラスボスを倒して、滅びの未来でも救うのかな」などと思っていたら、格好当たっていましたよ。
 さすがに先祖や子孫ではありませんが、他の乗客と一緒に謎を解きつつ、死の運命を回避するというのが、物語の最終目標でした。
 で、その謎が「なぜ過去に行けるか?」から始まり、「あの人たちの関係は?」「なぜ、もっと過去に死んだ人が生き返る?」「あの怪物はなんだ?」などなど、やたらたくさん有ります。
 主人公の存在すらも謎の一つです。
 このゲーム、構成の八割が謎で出来ていて、さらに雪だるま式に増えていきます
 途中、ちらほらと事実が出てくるのですが、残り二割でまだこちら側(プレーヤー)が完全に成すべき事、自分の位置が見えてきていない状態なのに「ああ、こうすれば良いんだね」という感じで、一気にエンディングに向かって加速していきます。
 しかも、それでも全てが解決するわけではなく、物語の肝心な部分がいまいち見えてきません。
 思いっきりネタバレなんでくわしくは書きませんけど、「イルマリよ、どこから来て、どこに行くんだ? というより、いくら了承が得られたからといっても他の人の命を使って生き返るのはどうかと思う」というのが感想です。
 それに、どうもストーリー途中の回想シーンを見たかぎりでは、主人公のイルマリは、ヒロイン・シャルロットがまだ母親の体内にいたときに消えた双子の兄弟であるような気がしてならないのですが…気にしない事にします。
 
 そうそう、「ヒロイン・シャルロット」と書きましたが…本作品、他に結構いいキャラがいると思うのに、浮気不可です。
 たとえ浮気をしたとしてもHシーンにはならずに、口でしてもらったりとその程度(…充分Hシーンなのでは…?:編集)。
 シャルロットとのHシーンにしたって、いきなり回想シーン風になったと思ったら、彼女の叔父さんがシャルロットを陵辱しようとしているシーンになります。
 そこで「そのまま身を任す」か「ふざけるな」の二択が現れます。
 「そのまま〜」だと一通り陵辱された後に体がイルマリに変わり、イルマリは血を吐いて死亡
 「ふざけるな」を選ぶと、そこでイルマリと体が入れ替わって「助けに来たよ」だそうです。
 この事が、彼女が男性恐怖症になった原因だと思うのに、こんな思いきり時間を無視した解決法でいいんだろうか。
 私が思うにイルマリって、乗客全ての命を救うために、シャルロットの魔力を媒介として、彼女がいつも読んでいる本に出てくる「女の子の願いをかなえる為のやって来たサンタ」が具現化した姿だと思うのですが、なぜそれが列車に乗る以前の出来事と関われるのか、もう少し明確な理由が欲しかったです。
 
 基本となる物語は、国と国との諜報活動に巻き込まれた乗客を事故死に見せかけようとする…だけど本当は、自然を破壊した人間に向けて山の神が事故を起こして、みんなを殺してしまうというものです。
 物語の基本の流れはそれなれにしっかりしているのですが、途方もなく一本調子で、訳がわからない事だらけなのにいきなり脇道にそれて、ややこしいことを増やしていく。
 伏線をこれでもかという程出して、それを無理やり束ねて解決を図るといった姿勢が、この作品をかなり駄目にしています。
 ちなみにこの作品、ゲーム性はほとんどありませんでしたね。
 小説と言ったほうが、遥かに当たっています。
 始めてからしばらくは、まったくといっていいほど選択肢が出てきません。
 しかも出てきたと思ったら、車両の客室を調べるための選択肢
「A室を調べる」
「B室を調べる」
「C室を調べる」

  の三つ。
 しかも、どこから調べてもストーリーにまったく関係ないです。
 それが6車両分も続きます。
 何の為にこんな事させるのだろうか…意味のある選択肢のほうも明らかに、当りと外れの二つだけしかありません。
 下手な選択肢しか出てこないのなら、はっきりいって付け加えてくれないほうが、まだすっきりします。というか初めての選択肢が出てきた時に、このゲームの最大の欠点をまざまざと見せ付けられた気がしました。
 まだ選択肢に意味がない事がわからなかったとき、どの部屋から調べるかすごく迷います。
 そこで“セーブ”をして、1個ずつ調べていくのが普通ですよね。
 それなのに、この作品たら
「ばかもの〜! なぜ選択肢が出ている場面でセーブしようとすると、エラー起こしやがるんだー」と、とってもお茶目なことをしてくれました。
 まあ、他の人の所ではどうだか分からないのですが、この欠点はどうしようもないでしょ。
 私はむかついたので、この後ノーセーブでやりました。
 
(総評)
 ゲームにしたのは失敗です。
 軸となるお話がなかなか練りこまれている分だけ、かなり落差が激しいです。
 かといって、やたら話しのテンポは悪いので、ゲ−ム性がないと間違いなく途中で飽きます。
 なんと言っても、ストーリーの関係上強制的に始めからやり直しをするように受け取れる箇所があるので、どうしてもそこでやる気がなくなってしまうと思います。
 ストーリーの途中やエンディングで、それらを含めた謎が解決はするんですが、納得して終わるというより、無理やり納得させて「ほーら、こんな感じで綺麗に終わるんだよ」といった感じがします。
 それと始めの方で書いた通り、イルマリが生き返るためには、シャルロット付きのメイドのメルが消えてしまう事になります。
 「ちょとまて、確かメルって子供のころの回想シーンがあったよな? それがなぜ、本の栞になってしまうんだ?」といったところです。
 イルマリが消えてしまうエンディングの方が、よほど綺麗に終わっているような気がしました。
 
 それと、あるイベントなんですが、多分ウケを狙ったんでしょうけど、シャルロットがイルマリの杖を奪って叩くシーンが、全編通して20回くらい出てくるんですが、やりすぎです。
 この事も、テンポを悪くしていると思われます。
 また、国と国との諜報活動、無音手榴弾などの兵器、魔法、山の神なんかがストーリーに結構関わってきます。
 おそらくシナリオライターさんは、ファンタジーに現代の思考、武器などをうまく織り交ぜたかったんでしょうが、まったくもって二つはかみ合っておらず、お互いに足を引っ張るだけです。
 
 結論としては、単なる小説として読むなら面白いですけど、それに付随するシステム、ゲーム性、特殊なイベントなどが邪魔でしょうがないです。
 多分ゲームではなく、本という媒体で出したほうが売れるような気がしました。
 
PS:
 この物語に出てくる列車・マジックアロー号は、仮死状態の魂を運ぶ列車みたいに物語の中で言われています。
 私の感想は「フェニックスの尾で一発・魔列車だ(FFYより)」といった感じでしたね。

 
(エルトリア)


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