チェリーボーイにくびったけ
 おねぃさんに囲まれたモテモテラブラブ学園生活


1.メーカー名:ACTRESS
2.ジャンル:姉萌え学園恋愛ADV
3.ストーリー完成度:C
4.H度:B (〜ってゆーか、やらしい ^^;)
5.オススメ度:C
6.攻略難易度:D
7.その他:年上の女の子に甘えてみたい人には吉。


(ストーリー)

 主人公・羽田翼(はねだつばさ)は何かと自分の世話を焼きたがる義姉たちから離れ、静かな高校生活を送ろうと画策していた。
 しかし、知らない間に義姉たちと同じ私立大鵬学園に願書を出されてしまったため、やむなく受験する事になったのだが、到底受からないと思われたその高校に、翼は会心の一撃で合格してしまった。
 …そんな経緯があって、彼のささやかな野望は叶えられることなく大鵬学園に通う事になり、以前と変わらぬ生活が続くはずだったのだが…


 既読スキップに音声リプレイ機能付きバックログなど、ほぼ標準といえる環境を備えており、セーブエリアも20×3頁と充分すぎるほどの数を有している。
 システム面の安定性も高く、ストレスを感じさせるような煩わしさは無かったが、時々ゲームの最中に原因不明のプログラム停止現象が起きており、修正バッチを含めこれに対する対処の方法が全くない。
 しかし、頻繁に起きる現象でないことも確かなので、何が原因で起こるのか特定出来ない以上、こまめなセーブ以外に有効な手段が無いとはいえ、それほど神経質にならなくても大丈夫なようだ。

 本作の基本設定だが、翼を生んだ両親は既になく、亡き父親が後妻に迎えた麻衣(まい)と連れ子である未来(みき)と愛音(あいね)といった家族構成で、翼は血の繋がらない家族に囲まれた生活を送っている。
 こういうシチュエーションで制作されたシナリオは割とありふれており、これといって目新しい点があるわけでもなく、斬新な設定がなされているわけでもない。
 購入動機は単純に、『チェリーボーイにくびったけ』という“20年ぐらい前”にあったようなタイトルに惹かれただけであり、姉萌えゲームだからとかいう理由ではなかった。
 この義姉達がなぜ翼を溺愛しているのか、その理由となる所が全く解らないのだが、生来母親似の所謂「女顔」である翼を、親の再婚で初顔合わせした時の第一印象で可愛いと感じた事に端を発する物ならそれほど不自然ではない。
 しかし、そういった件の話が一切無いため単純に少年の成長を嬉々として見守るショタな姉心だけだったのか、それとも昔からある程度「異性」として意識していたのか判断がつかないのが残念だ。
 目上の女性に囲まれ、すべてにおいて主導権を握られイニシアチブを発揮する機会のない生活を送る翼だが、シナリオはこれに終始しているわけでなく、ヒロイン達との関係を築く課程で精神的にも成長を遂げ、やがては完全とまではいかないものの女性をリードしてゆく逞しささえ身につけてゆく。

 しかしながら、翼に対し好意以上の感情を持ったヒロイン達の中にあっての事、容易に「純愛路線」から逸脱してしまう。
 普段から過剰ともいえるスキンシップで誘惑じみたやり取りが多い事も原因だろうが、ちょっとしたきっかけで踏み外してしまうのだ。
 シナリオのルート次第では、それが一度きりの関係であったり悪戯半分の遊びであったり様々だが、そういったシチュエーションをふんだんに取り入れたイベントが、各ヒロインのルートシナリオに絡ませ甘い罠となっている。
 しかし、ルートシナリオの構造自体はそれほど複雑ではないため、ゲームとしてはどう転んでもお手軽にHなシナリオを楽しめる作りになっている。

 ところで、本作は翼の独り舞台であるのだが、男性のサブキャラクターが3人登場している。
 大鵬学園に入ってからの友人である仁川丈太郎(にかわじょうたろう)は見事にボケ役であり、翼の引き立て役以外の何者でもない。
 底抜けにお人好しで陽気なマッチョ。
 分類上は間違いなく「変なヤツ」に仕分けされてしまう様なキャラクターだが、その人間性はとても好ましいものがあり、彼が報われるシナリオがひとつでもあればよかったと本気で思えたほどだ。

 ヒロインのひとり・彩乃(あやの)の父親である喫茶店Rapidのマスター早坂辰海(はやさかたつみ)は、翼の父・大地(だいち)の親友であり、当然翼とも旧知の間柄だ。
 若い客層の影響か心身共に若作りな人であり、そのため翼にとっては年の離れた兄のような頼れる存在で、父亡き後の良き相談相手なのだ。
 このマスターが丈太郎と待遇が違う最大のポイントは、【彩乃ルート】で長年に渡る努力とその誠実さが報われる所だろう。
 これについては後述するが、このおかげで本作を斜に構えて見ずに済んだともいえる。

 残るひとりは翼の父・大地だが、想い出でしか語られない故人を引き合いに出すのも、本作においてこの人物の位置付けがとても大切であり、シナリオの“かなめ”として大切な点をいくつも踏まえている。
 そのため故人であるにも関わらずシナリオの牽引役として充分な働きをしており、翼がヒロイン達と綴ってゆく物語を、まさに影から支えているといえるのだ。
 特に大地に関しては、息子として翼が憶えている「父の姿」と、後妻の麻衣だけが知る「男性としての姿」、そしてマスターだけが語る事の出来る「親友の姿」と、異なる視点から捉えられた思い出話でその人物像が克明に語られているわけだ。
 これらを踏まえて流れを見ていくと、単純に『女の園に囲われた羨ましいヤツ』の話で終わっていない事が解るだろう。


■ 羽田未来 ■

 翼よりふたつ年上の義姉で、毎朝翼をたたき起こして一緒に登校する事を日課としている。
 成績優秀・スポーツ万能で眉目秀麗、料理や家事も「平均以上」の腕前を持つ。
 絵に描いたような才媛だが、そんな「外面」とは裏腹に翼には強権を行使する暴君。
 幼い頃に経験した両親の離婚が原因で、どんな時も気丈に頑張り続ける性格に育ち、母の再婚後も妹や義弟の為に“自分がしっかしなければ”という義務感を持ち続けている。
 翼に対する必要以上の過保護ぶりも、そういったものの一面だと思われた。

 メインヒロインである未来のシナリオは、ほぼ一直線だといえる。
 未来の態度が自分を大切に想うあまりの事だと理解し、そんな未来と共に歩んでいきたいと翼が願うようになるまでの課程は、立場的な差こそあれ普通の恋愛物と大差はない。
 年上だからこそ「守ってあげたい」という保護欲求と、頼られ求められる事の悦びを全面に押し出したシナリオだが、同居家族であるからこそといったイベントに偏っていない、シナリオのバランスの良さは高く評したい。

 この【未来ルート】は、翼の父・大地から繋がる因縁と想いの物語でもある。
 目の前で事故に遭った先妻を助ける事が出来ず、その無念さをずっと胸の内に隠してきた大地は、何の因果か再び迫る危機にさらされた後妻の麻衣を庇い、自らが命を落とした。
 翼は未来とのデートの帰り、羽田家に三度迫り来た危機を察知し、父同様に未来の身代わりとなったのだ。
 大地が今際に遺した言葉は、「今度の母さんは守ったぞ」だったが、彼が亡くなった事で麻衣に深い悲しみと後悔を遺してしまった現実…
 しかし翼は最愛の人を守り、そして生き残ってみせた。
 父が成せなかったその想いを受け継ぎ、翼は未来と寄り添って生きてゆく。
 さすが主シナリオだと唸らされた、感動できる終演だったと思う。

 このルートには、TrueEnd以外に、「義姉弟以上恋人未満」のエンディングもあるが、こちらはつかず離れず気が向けば肌を重ねる、そんな曖昧な関係に落ち着いたものだった。


■ 羽田愛音 ■

 姉と同様に翼をとても大切に想っているが、しかしいつも姉に後れを取って、好意を素直に表現出来ない。
 愛音は成績優秀で料理の腕も卓越しており、容姿も引けを取っていないのだが、常にポジティブな未来に劣等感を感じ続けている。
 そのコンプレックスから自分に自信が持てず、すべてに於いて消極的であり、過度の恥ずかしがり屋である性格も要因になっている様だ。
 そんな愛音も、ピアノには一日の長があり、これだけは音痴の未来には負けないと自信を持っているものだ。
 これはイベントにもしっかりと組み込まれており、印象の強い未来のおかげで希薄になりがちな愛音に、確固たる個性を与えている。
 翼よりひとつ年上なのだが、立場的に義姉を演じているに過ぎず、どちらかといえば翼を同じ年の男の子の様に見ていると感じられた。
 そして彼に対し、明らかに一定以上の感情を抱いていた事も確かで、ただ翼に自分を異性として見て貰えないと思いこんでいた様に思えたのだ。

 【愛音ルート】の大きなテーマとして、彼女のコンプレックス…未来や麻衣と自分を比べ自虐的になる性格を矯正し、自信を持たせる事にあるのだが、そのための方法によってルートが分かれている。
 とにかく強引な姉に対し、押しに弱い愛音は良くいえば優しい性格なのだが、頼まれると断れないためこれが原因で翼が暴走してしまうルートでは、どんな要求にも応じてくれる事に気をよくして彼女を調教してゆく。
 当然行き着く先は破滅的な結果にしか繋がっていないのだが、そんな幕引きであっても、未来に対してのコンプレックスだけは払拭していている。
 翼との破綻した関係を未来に見せつけ、「こんな事出来ないでしょう?」と妖艶に笑ってみせるのだが、その結果がどうなってしまったのか、それが語られる事はなかった。

 先の鬼畜EndとTrue Endの分岐点は、学校の授業で愛音のブルマ姿を見た翼が情欲を抑えられるか否かであり、翼自身の自制心が問われているわけだ。
 純愛を貫いたTrue Endでは当然ながら調教といった形では性格矯正はなされない。
 ここで翼の幼なじみである彩乃が重要な役割を果たしているのだが、長年翼に想いを寄せていた片思い少女の失恋がきっかけで、愛音が義理の姉弟である自分たちの関係を正常化するべきだと口にする。
 だが翼は、未来や麻衣と比較し釣り合いが取れないともいう愛音に、選んだのは自分だからと言い聞かせた。
 学力も才能も女としても魅力も勝てないと思っていた未来や麻衣ではなく、自分が選ばれた…必要とされている事を知った事で、愛音ははじめて自らに自信を持てるようになった。
 すべては“翼のために”ではあるが、料理や化粧といった事に至るまで積極的に学ぶようになった愛音の姿に、以前の様な陰りは見られない。
 そんな何気ない変化が見ていて嬉しくなれる、そんなシナリオだった。

 …ちなみにこのルートは、選択肢を正しく選べなかったら関係の破局〜Bad Endもありえる。
 愛音との逢瀬はくれぐれも慎重に。


■ 羽田麻衣 ■

 後妻として嫁いできた麻衣は、娘をふたりも持つ母親とは思えないほど若々しく、穏やかな微笑みを絶やさない女性だ。
 翼が義母と呼ぶ事を躊躇い、未だに「麻衣さん」と呼ぶ翼に嫌な素振りを見せることなく、娘と分け隔てなく接している。
 家事万能でのんびりした性格に見えてもそつなくなんでもこなす、良妻賢母の鑑のような女性であり、これでいて脱いでもスゴイんです(爆)。

 この【麻衣ルート】も、大地の思い出話が鍵となっている。
 翼にとっても麻衣にとっても、大地の死はすでに過去のものであり心の整理は付いているのだが、ふと感じた寂しさに人恋しく思うことは無理無い事だと思う。
 特に、成長するにつれ亡き夫に似てくる翼に、麻衣は心揺れていたのだろう。
 些細なきっかけで、彼女の中にある悪戯心に火がつき関係がはじまってしまったのだが、それでも正確な意味で「男女の仲」となったのは、深夜に亡き夫を偲んで涙していた麻衣の姿を、翼が見てしまってからだ。
 この時はじめて、義母である彼女をひとりの女性として愛してしまった事に気付いたのだが、それでもはじめは麻衣の寂しさを癒せればいいというぐらいにしか考えてなかったと思う。
 それがいつしか、亡き父の代わりにはなれなくとも、麻衣を守っていきたいと強く願うようになっていった様だ。

 【麻衣ルート】そのものは、これといって特筆出来るようなイベントが組まれているわけではない。
 ただ、後述する【彩乃ルート】での“彼女の立場”と対を成す、そんな仕上がりになっているため、こちらのルートを先に解いておいた方がいいように思えた。


■ 早坂彩乃 ■

 喫茶Rapidの看板娘で、翼のひとつ年下の幼なじみサン。
 ずっと言い出せないでいるが幼い頃から翼に惚れていて、来年は彼と同じ高校へ進学して、ゆくゆくは公私ともに結ばれるために日々努力している。
 割と感情がすぐ態度に出てしまうタイプらしく、ころころと変わる表情は見ていて飽きないのだろうが、残念な事にカットの表情バリエーションが少ないため、それを堪能する事が出来なかった。

 いきなりだが、【彩乃ルート】は丈太郎の悲恋と背中合わせである。
 いや丈太郎の失恋は、このルートシナリオに限った事ではないのだが、翼に連れられて来たRapidで彩乃に一目惚れして、異性に対してはどうにもこうにも奥手すぎる彼がようやく一世一代の決意で告白したものの、「好きな人がいる」ためにふられてしまうのだ。
 いうまでもなくその相手は翼なのだが、他のルートではあくまで実る事のない「彩乃の片思い」のために玉砕してしまう。
 【彩乃ルート】での翼は彼女の告白を受け入れ、兄妹のような間柄であったそれまでの関係からゆっくりと恋人同士へと、より親密になっていったのだ。
 そして丈太郎の玉砕は、まさに彩乃に告白され彼女と肌を重ねた後の出来事だった。
 よって他のルートでは「予想通りの失恋で可哀想」だけで済んだのだが、【彩乃ルート】では「どうしても言い出せなかった」ためにギクシャクした感じになってしまい、翼は丈太郎に負い目を感じてしまう。
 この丈太郎の人間性を大いに評価したのは、この後翼の心情を察した彼が、自分こそ失恋して心を痛めている筈なのに、翼を気遣うためにもその失恋をひとつの経験…いい思い出として割り切ってみせた所にある。

 話を戻すが、【彩乃ルート】は彼女自身が「長年の片思い」を成就させる事にあるのと同時に、父・辰海の幸せを願う娘心の話でもある。
 先に述べたように、中間試験のテスト勉強に託けて翼に勉強を教えて貰う約束を取り付け、そのチャンスを逃さず長い間想い続けた翼に告白した。
 ずっと妹のように思ってきた少女が、知らない間に“女性”として成長していた事に戸惑いつつも、ひたむきな想いに答えたいと感じたわけだ。
 こうして「ふたりの関係」は始まったのだが、しかし羽田家と早坂家の関係は父親の代から家族ぐるみの付き合いであり、今更劇的な変化が望めるわけでもなく、ましてマスターとの間に確執があったりするわけもない。
 ふつうの父親にとって娘は宝物のようなものであり、その恋愛などに対しては必要以上に敏感になったりするものなのだが、このマスターは柔軟で奔放な思想の持ち主であり、娘の恋愛に首を突っ込むような野暮はしたくないと考えているし、まして相手が親友の息子〜気心の知れた翼である事は、彼にとって願ってもない縁組みだったのかも知れない。

 シナリオはここから他ルートの共通イベントでもある海へ家族旅行に出かける事になるのだが、【彩乃ルート】では未来と愛音がそれぞれ友達との先約のため参加出来ず、代わりに早坂父娘を誘う事になる。
 この旅行の間に、ふたりきりで差し向かいで話す事の無かったマスターは、野暮と知りつつ娘との仲を訊いてみたりするのだが、その流れで麻衣との事を訊き返されてしまう。
 相手は亡くなったとはいえ親友の奥さんだ、たとえ惹かれるものがあったとしても、お互いに家庭を持つ者同士なのだ、そう軽々しく出来るものでもない。
 そう考えるマスターと麻衣の間を取り持てないものか彩乃とふたりで考えた末、翼は不器用な大人同士を向かい合わせ、晩酌しながら募る思い出話をさせる事に成功した。
 このふたりがその後どうなったのかは語られていない。
 ただ、近所のRapidに出かけるだけなのに“おめかし”して出かけるようになった麻衣の行動からも、ふたりの心境に変化があった事だけは確かな様だ。

 購入当初は、姉萌えゲームの中に、それ以外のニーズ(妹属性対象)を組み込んだだけのおまけ的物かと思っていたのだが、主軸である未来のシナリオよりも、八方丸く収まったシナリオであったことには驚かされた。
 なにより、サブキャラクターといえど、その扱いにまで行き届いたシナリオであった事は、本作を評価しなおすに充分な出来であった。


■ 長田まりも ■

 翼が所属するテニス部の先輩で、部のアイドル的存在。
 容姿・性格ともに申し分なく、なにより屈託のない人当たりに翼も密かな想いを抱いていた。
 口癖で「うにぃ」と付けてしまう舌足らずな口調にロリ顔。
 相反してモデル体型である罪作りな可愛さだが、その思考回路は少し幼く天然がかっている。

 運動部に所属していながら、その実まりもは体を動かす事そのものが苦手だった。
 かくいうテニスの腕前も、先日ようやく“ラケットに球が当たった”というぐらいだから相当なものである。
 何もない平坦なグランドでよく転ぶ姿を目撃されているが、アレは素だったらしい。

 【まりもルート】は、彼女に憧れる翼と、そんな後輩に心揺れながらも、今ひとつ自分の気持ちに確信が持てないまりもが、お互いの本当の気持ちを確かめるためにもつきあい始める事から始まっている。
 その経過で、まりもの心が離れてしまうと、所謂ノーマルエンドへと流れて行くのだが、彼女の心を掴んだTrue Endでは、彼女の偏った恋愛観に裏打ちされた行動に青ざめてしまった。
 肌を重ねるたびに「男の人はこういうのを好む」というアヤシイ情報の元に、下着を付けずにいたり今日はお口でと決めているなど、到底普段のまりもからは想像の付かない事ばかりをしている。
 やがて翼との交際に確たる物を感じたまりもは、彼に中出しを懇願してきたのだ。
 それというのも「どうしても恋人になって欲しかったら、中に出して貰いなさい」と書いてあったからという、無責任極まりない内容に沿っての行動だったからだ。
 もし妊娠してしまったら、まりも自身にも負担がかかるし、まして生まれてくる子供も、望まれないなんて不幸すぎる。
 そう考える翼は、まりもを窘めながら、もし子供が出来てしまった時の覚悟を決め、まりものすべてを受け入れたのだが、ここでふと問題を感じてしまった。
 翼の考え方はとても真摯で立派な事だが、他のルートでは平気で中出ししてたぞ、キミわ。
 しかも、問答無用で中に出した事も多々あり、このルートだけ立派な事を口にしても、その言葉に説得力を感じられなかったのだ。
 もっとも、「安全日」などという迷信を信じて中出ししても、妊娠しないわけではないのだから、この話は避妊具そのものを使用しない翼の行動にこそ問題があるわけだが。

 しかしあれだ、まりもの生理がくるまでのひと月の間、安易に堕胎を望まずふたりして子供の名前を考えていたなんて、このカップルはきっといい親になれるだろうと思えてしまった。


■ ノーマルエンド&3Pエンド ■

 本作は主ルートから外れると、未来か愛音との日常エンドへと繋がっている。
 共通イベントである海への旅行へ出かけ、行動を共にした相手と「一度限りの関係」を交わしてしまうのだが、その後も特にギクシャクとした関係にはならず、それまでと変わらない日常が続いていったという締め括りになっている。

 3Pエンドルートはその旅行において、無礼講で振舞酒を飲み明かした未成年組は完全に理性を失った。
 保護者(麻衣)が就寝前に一風呂浴びにいった隙に、未来と愛音が翼にどちらが好きかと詰め寄り、返答に困った彼を押し倒してしまう。
 日頃押さえ込んでいた情欲を解き放った行動に本能が目覚めてしまった翼は、ふたりまとめて相手をしてしまった。
 その関係は旅行の後も続き、時間を持て余した夏休みの間、翼の求めに応じて義姉達はその躰を預けてしまう。
 その行為は、やがて麻衣にも目撃される事となり…。

 本作がお手軽にHイベントを楽しめる所以はここにある。
 ルートシナリオをクリアしなくても、このようにエロエロなイベントが用意されているのだから(笑)。


■ おまけシナリオ ■

 このルートは主軸が分岐していて、基になっている状況が異なる。
 とある日曜日、いつものように好きなだけ寝過ごしている翼を、いつものように未来がたたき起こす所からはじまる。
 リビングに降りた翼が、今日の予定があったかどうか、その選択次第で分岐するわけだ。

 一方はまりもと彩乃の二股がけでつき合っている設定であり、しかも彩乃とデートの予定の日にまりもとRaipdで鉢合わせ、互いの関係がバレてしまうお約束な展開から、それでも彩乃を気遣うまりもが一緒に“する”ことを提案したことから、3Pが成立する。

 もう一方は未来・彩乃・麻衣それぞれと関係を結んでしまった挙げ句の状況であり、母子の総意により4Pが成立する。
 状況からして、[未来・愛音3Pエンド]の続きと受け取れる。
 シチュエーションだけなら、おそらく本作最大のエロイベントだろうと思う、多分。


(総評)

 寝起きの悪い主人公と、それを起こしにくる女の子。
 良くいえば王道…使い古された感のあるパターンから物語が始まる本作も、期待通りにコメディー色の濃い軽快なテンポのシナリオ運びが、攻略の労を軽減してくれている。
 可愛いキャラクターに、その魅力を最大限に引き出してくれた声優陣の質の高さも特筆すべき点であるといえよう。

 問題点としては冒頭でも述べたが、義姉達がなぜ翼を溺愛しているのか、その理由となる所がはっきりとしていない点。
 これに日毎亡き夫に似てくる翼に心揺れる継母の想いも重なって、思った以上に複雑な人間関係になっている。
 彩乃とまりものルートは、対外的になんの後ろめたさもない恋愛として、その羽田母娘と対を成すシナリオだ。
 この分類の根拠はこれだけでなく、翼の行動にも差が出ている。
 体裁や背徳感が常に付きまとっていた義母娘との恋愛と、普通の恋愛では差が出て当然なのだが、翼自身の考え方や自主性にまではっきりとした差が出ているのには戸惑いさえ感じる。
 彩乃やまりもに対し、積極的にリードしている事を鑑みてみると、義母娘に対してはわざと甘えて選択を委ねている様にも思えたのだ。
 未来の性格上、逆らってもムダという理屈も成り立つのだが、しかし翼がしっかりとした見解を持って行動する事にまで、未来は無理強いしていないのだ。
 このあたりの詰めがもう少ししっかりと成されていれば、本作の評価として文句なしの太鼓判を押したのではないだろうか。

 最期にもうひとつ駄目だしをするが、衣服は胸を強調したデフォルメ的デザインとなっているのだが、洋裁を知っている人ならピンと来るだろう。
 ああ見えるためには、胸のラインにそって立体裁断し形状を整える必要がある。
 “デフォルメ的”といったのは、脱いだ服が普通の衣装と同じ形状だったからだ。
 胸元に伸縮素材でも多用してないかぎり、いくらなんでもありえない形状変化だろう。
 細かい事だが、萌えを優先するあまり、常軌を逸した形状にするのも善し悪しである。

 ジャンル的にすべてのユーザー向けに仕上がっているわけではないのだが、シナリオ・構成・デザイン共に優秀な作品であるといえるものだけに、ACTRESSが今後送り出してくるだろう作品にも大きな期待を持てそうな、そんな逸品だったと思う。



(あおきゆいな)



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