まじかる・アンティーク
 
 魔女と一緒に、骨董品店を経営しよう!
 
1.メーカー名:Leaf
2.ジャンル:経営SLG+恋愛ADV
3.ストーリー完成度:C
4.H度:C
5.オススメ度:C’
6.攻略難易度:A
7.その他:『Littlestone』と『歩み』のフルコーラス版が欲しいよ〜
 
(ストーリー)
 主人公:宮田健太郎は、海外旅行に出掛けた両親によって勝手に大学を休学させられて、家業の骨董屋「五月雨堂」の経営を任されることになる。
 その上、魔法世界グエンディーナから、人間界に半年間の研修にやってきたスフィーとぶつかってしまい、死んでしまった。
 スフィーの魔法で蘇生した健太郎だったが、100日くらいの間は、スフィーからの魔力の供給を受け続けないと生きられないため、スフィーと同居することになった。
 更に、スフィーの妹のリアンまで人間界にやってきて…。
 
 
 このゲームは、行動選択ができる土曜日のADV部分と、1日ごとの行動予定を立てて骨董屋「五月雨堂」を経営する、日〜金曜のSLGとからなっている。
 基本的に五月雨堂で売る骨董品は、土曜日にフリーマーケットや骨董市・骨董祭から仕入れてくることになるが、同時にスフィーの魔力回復や、結花・リアンの好感度稼ぎに必要な「HONEY BEE」来訪も、この曜日にしかできない。
 そして、土曜日は3回しか行動できないが、骨董品が多く入手できる骨董市は2回分、骨董祭は3回分の時間を消費するなど、効果が大きいものほど時間を多く消費する。
 要するに、土曜日の行動をどう割り振るかが、このゲームのキモとなるわけだ。
 
 では、いつものように寸評から。
 
(スフィーシナリオ)難易度A/評価A
 健太郎の身体が完全に回復するまでは、スフィーから30m以上離れることは出来ない。
 魔力を貯蔵できる腕輪を付けているにしても、数時間離れていられるのが限度だ。
 そんな生活を続けているうちに、健太郎とスフィーはお互いに側にいて欲しいと思うようになる。
 しかし、スフィーの研修期間は半年。
 その時が来れば、スフィーの身体にかけられた帰還魔法が発動し、強制的にグエンディーナに帰らされてしまう。
 スフィーとリアンは、必死に帰還魔法に抵抗するが…。
 
 スフィーの魔力回復具合によって、Lv1〜4までの4段階あり、Lv2〜4ではHシーンが違い、Lv1ではHシーンが存在しない。
 このLv1EDがトゥルーエンドとなっているが、スフィーの成長を上手く操らないと各レベルでのEDを迎えることは難しく、レベルによって起きるイベントも違うという、変わった構成になっている。
 特にLV2でのHシーンは、「どうだソフ倫! これでもこの娘は21才だぜ!」と言わんばかりのお子様体型だ。
 CGを揃えようとすると、イベントの起きる時期、その際のレベルなど、色々試さねばならず、相当苦労する。
 スフィーとの恋は、ずっと一緒に過ごしてきたが故に生まれた恋であり、双方の想いが納得できるいいシナリオだ。
 
 
(リアンシナリオ)難易度D/評価B
 スフィーを追って人間界にやってきてしまったリアンは、結花の好意で「HONEY BEE」で暮らすことになった。
 やがて、リアンは健太郎に好意を持つようになり、健太郎もまた…。
 けれど、リアンもまたスフィー同様、帰還魔法をその身に受けていて…。
 
 内容的にはとても薄いし、五月雨堂の経営状況はまったく関係ない。
 ただ、健太郎がリアンに言った「本当に欲しい物は、自分から欲しいと言わなければ手に入らない」という言葉を受けて、後にリアンが健太郎に告白するのは上手いやり方だった。
 また、最後にリアンだけが帰還を免れ、スフィーが留まれないのもなかなか。
 でも、“終盤に長瀬の店に行かないと解けない”という落とし穴があるので注意。
 
 
(江藤結花シナリオ)難易度E/評価D
 物心つかない頃から、健太郎と一緒に育ってきた幼なじみの結花。
 健太郎の隣にいるのは、永遠に自分だと信じてきた。
 しかし、成り行きで健太郎と同居し始めたスフィーが元の姿を取り戻すにつれ、結花は健太郎を取られそうな危機感に襲われ、ヒステリーを起こして…。
 
 突然現れたライバルによって、安心しきっていた幼なじみとの仲が脅かされるという、定石どおりのシナリオ。
 父親が健太郎に「早く嫁に貰ってやってくれよ」などと言う辺りも、結花の安心感のバックボーンだったはず。
 その安心感が破られて突然パニックを起こす結花など、なかなかいい感じだ。
 …このシナリオだけ見るのなら
 残念ながら、スフィーのLv4シナリオなどでは、結花がヤキモチを妬くシーンはない。
 考えてみれば、結花と健太郎は今更「HONEY BEE」に毎週通ったくらいで変化があるような、ヤワな付き合いではなかったはずだ。
 結花は、最初から健太郎のことが好きだったのだから。
 ほかのヒロインのシナリオで、結花からの海への誘いを断った場合、本当に誘いたかったのは健太郎なのだということを匂わせるくせに、その後健太郎が他の娘と付き合うようになっても、結花の態度に変化はない。
 そのため、このシナリオでだけ結花が取り乱すのは、かなり違和感がある。
 結花がヤキモチを妬くに至る経緯を、何か別のイベントとしてきちんと用意するべきだったのではないかと思う。
 
 
(牧部なつみ)難易度B/評価C
 ある時から、五月雨堂によく来るようになった女子高生のなつみは、実はグエンディーナの魔女の血をひく魔女だった。
 なつみの父は童話作家で、妻ミュージィとの恋を題材に絵本『グエンディーナの魔女』を書き、なつみが小さい頃から実話だと教えていたが、父の死後、母をよく思わない祖母に育てられたなつみは、コンプレックスから自分が魔女の血をひくことを認めようとしなかった。
 そんななつみの心の一部が分身(ココロ)となり、魔力を司って暴走したため、なつみ自身の生命力が削られていく。
 このままでは、なつみは死んでしまう。
 なつみを救うため、健太郎は…。
 
 こうやって書いてみると判るが、このゲーム中最も内容の濃いシナリオだ。
 なつみは、本人も知らないが魔女であり、幼い頃に父親から、母親が魔女であること、『グエンディーナの魔女』は実話であることなどを聞いていた。
 しかし父の死後、何も知らない祖母によって、それが嘘であると教えられ(要するに常識を与えられたわけだ)、その自己矛盾がココロという分身を生み出した。
 そのココロが親友の彼氏を誘惑したが故に、親友との仲が壊れてしまい、なつみは健太郎と付き合うことで自分の居場所を得ようとした。
 なつみが魔女の血をひく娘であることに健太郎が気付く経緯もなかなか上手で、なつみがココロを受け入れる過程がまるっきり読めてしまうにもかかわらず、納得のいくものになっている。
 また、なつみとのHシーンは、本音の化身ココロがいるため「普通そんなことは思っても言わねーよ」というセリフをバンバン言ってくれて、大変笑えた。
 Hシーン見ながら大笑いしたのって、随分と久しぶりのような気がする。
 ただし、母がグエンディーナにいると判った時点で、EDは母娘の対面だと読めてしまうので、ちっとも感動できない。
 それにしても、グエンディーナでの魔法使いのレベルが「ねずみ」「ねこ」「いぬ」「マウンテンゴリラ」って…、健太郎じゃなくても、グエンディーナに対する印象が暴落すること請け合いだ。
 
 
(高倉みどり)難易度A’/評価D
 五月雨堂の常連である高倉財閥のお嬢様:みどりと、ひょんなことから両想いになった健太郎。
 しかし、それがみどりの父に知れ、大反対を受けてしまった。
 健太郎は、みどりとの交際を認めて貰う条件として、クリスマスまでに五月雨堂を大繁盛させてみせると啖呵を切ってしまった。
 そのためには、長瀬の持つ朴斎の美人画を飾って話題を作るしかない。
 訳を長瀬に話すと、11月30日までという期限付きながら、1,000万円という破格の安さで譲ってくれることになった。
 なんとか期限までに貯めなければ…。
 
 みどりは、このゲームで唯一、五月雨堂の経営状態が攻略の条件になっているキャラだ。
 しかも条件は、11月30日までに所持金を1,000万円以上に、12月24日までに評判、掃除、整頓の3つのレベルを最高ランクである10にしなければならないという恐ろしいほどの過酷さ。
 しかし、1,000万円貯まらなかった場合はいいとして、レベルが10に満たない場合の店の状況はかなりヘンだ。
 みどりの父は、閉店間際の五月雨堂にやってきて、客がいないから繁盛していないと言って、みどりとの交際を禁じてしまうのだ。
 閉店間際の骨董屋に客がわんさかいるなど、ちょっと異様な光景ではあるまいか。
 それを求める方も実現する方も相当ヘンだと思うのだが。
 だって、こん時の11月期の売上、2,500万円よ!?
 純利益だって1,000万超えてんのよ!?
 これが大繁盛でなくて何?
 
 ま、それはさておき、このみどりのEDでは、スフィーが帰ってこない。
 そのためなあなあで終わってしまい、抑揚に乏しいEDになってしまった。
 話には聞いていたが、「あれだけ苦労してクリアしたのに、この程度か」という雰囲気が確かにある。
 ここは割り切って「イエーイ! この貯金残高を見てくれ! 家だって建っちゃうぜ!」といったタイプの満足感を得るためのシナリオだと考えた方が、精神衛生上良さそうだ。
 ところで、みどりシナリオの攻略法について一応書いておくので、参考にどうぞ。
 
 
 このゲームは、基本的に“いかに土曜日を有意義に過ごすか”に主眼を置いた構成になっており、イベント数が少ないため、残念ながら各シナリオが薄い。
 この傾向は、知り合ってから間もなく、特に事件も起きないリアンのシナリオに顕著だ。
 なつみは、例のココロの事件のお陰で、健太郎がなつみに惹かれていく状況に納得できる。
 みどりの場合は、内容など全くないが、とにかくシミュレーション部分をどう攻略するかがメインなので、この際放っておこう
 
 このゲーム最大の欠点は、各シナリオ間で脈絡のない展開をすることだろう。
 先に挙げた結花シナリオの欠点は、多かれ少なかれ全てのシナリオに共通する問題だ。
 なつみを除く全員が健太郎に好意を持っているのに、他のキャラのシナリオの時にヤキモチなどの事件がちっとも起きないのだ。
 スフィーだけが、悲しそうな顔をすることで反応してはいるが、それ自体が何かをもたらすまでには至らない。
 鷹羽は、キャラクター同士の相互干渉が起きないのは、やはりつまらないと思う。
 あと、長瀬さんの正体について言及されてないのもマイナスね。
 
 
(総論)
 システムの面から言うと、シミュレーション部分とアドベンチャー部分が遊離し過ぎている。
 みどりとスフィー以外のキャラで、五月雨堂の経営部分がシナリオの進行に全く関係ないというのは、どういうものだろう?
 恋愛アドベンチャーにしては、自由時間が週1日しかないため、シナリオが薄すぎる。
 さりとて五月雨堂がどんなに繁盛しても、なつみは落とせない。
 各パートの融合に失敗したのが敗因だろう。
 
 とは言え、全体的なデキは決して悪くない。
 段階を追って原稿を書くだけだった『こみっく・パーティー』に比べて、“どの商品をどんな状態でいくらで売るか”を自由に設定でき、しかもそれが如実に店の経営状態に反映されるというのは、確かにやっていて楽しかった。
 また、各ヒロインごとにエンディング曲が違うパターンで流れるというのも効果的だった。
 OP曲『Littlestone』もED曲『歩み』も、実に効果的な使われ方をしている。
 特に、結花ED・スフィーLv2〜4EDで、帰ってきたスフィーが画面に映ると同時に流れる『Littlestone』は、本当に嬉しかった。
 やっぱり、EDでの曲の使い方って重要だよね。
 
(鷹羽飛鳥)


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