ANGEL PARASITE
 
 98年7月頃の発売の作品。なぜ、発売時期なんか表記するのかというと、“なぜ、今更こんな時期になって…?”と、思わず考えこんでしまう内容だからだ。  ところで、ジャズの名曲「FLY ME TO THE MOON」って曲が、アニソンになったんですが、何の番組の主題歌だったかご存知ですか…?
 …って、つまりはそういう事だ。
 トホホ…
 
1.メーカー名:Loverace
2.ジャンル:育成SLG&ADV
3.ストーリー完成度:…なんだけど…
4.H度:
5.オススメ度:圧倒的に
6.攻略難易度:。ただし、全エンディング確認となると、その不明瞭さ故に一気にまで上昇する。詳しくは後述。
 
 今回は、本当に参った。
 手っ取り早く言い切ってしまえば、「遅れてやって来た、“なんちゃって”エヴァンゲ〇オン」だよ、このゲームは。もう、誰がどう見てもエ〇ァそのもの。
 一応、オリジナル要素もあるにはあるのだけれど、要約したストーリーを説明したら、どう聞いてもアレにしか思えない。
 ちなみに言って置くけど、コレは一方的な意見ではない。
 私の周囲の人間にも、全く同じ感想を抱いた奴等はいたのだ。
 とにかく、全世界の人口がとある事件から大幅に減少(死滅)、世界各地にあらゆる既存の生命体とも共通点を持たない、巨大な怪物が都市を襲う。
 それに立ち向かうために、新たな独立組織が結成される(しかも、所在地南極)。
 そしてその組織は、唯一怪物達に対抗できる巨大人型兵器を、(よりにもよって)3機所有しており、パイロットはまだ年端も行かぬ子供達
 しかし、その兵器にもそれを取り巻く組織内部にも、何やら隠された秘密があるらしい…。
 ……ハイ、これが、正真正銘“エンジェルパラサイト”というゲームの内容です。
 本当の本当です! 捏造は、一切してないんだってば!
 よくもまぁ、ここまで完璧にパクったものだと関心すると同時に、呆れてしまう。
 世間に大嵐を巻き起こした「エヴァン〇リオン」から、早や3年。
 よもやまさか、こんな怪作が潜んでいたとは、驚かされました。
 なにせ、メインの人型兵器“エンジェルパラサイト(以下、AP)”や、敵の“デビルパラサイト(以下、DP)”のデザインなんか、モロにアレ。
 面白いのは、APはどちらかというと量産型伍號機テイストなデザインである事かな。
 とにかく、パッケージ裏の解説を読むだけでも、エ〇ァという柳の下のどぜうを狙いまくっているのが、良くわかる。しかも、こんな時期になって。
 さらには、肝心の絵がヒドイ。
 もう、荒くって荒くって見てられない。
 キャラクターは全員、可愛くも格好良くもないし(それでいて、そういう風に描いている努力はしているみたい…)、当然HCGもダサい。デッサンも狂いまくっているし。
 彩色の人の努力の跡が空しく輝いているのが、哀愁をそそるんだよね。
 …そう、とにかくパッと見の印象は、すこぶる悪い。
 いったいどれくらいの知名度を得たのか、ちょっと不安になってくる。
 ただそれはそれとして、このゲーム「脱・エ〇ァンゲリオン」を目指した部分も多く、その中には、なかなか馬鹿に出来ないものも含まれている。
 まぁ、全員が女性であるAPパイロットは、それぞれ操縦端子を女性器内に挿入し、シンクロ率を高めて起動させるという設定があり、そのための訓練という形で、3人娘のHシーンを見る事が出来る。
 ただ、APはこの3人しか操縦する事が出来ず、他の一般人(と、いっても軍人だけど)では起動だにさせられないばかりか、女性器やら子宮やら、女性としての機能に甚大なダメージを受けてしまうという設定がある。
 物語中盤に登場する、女性工作員は元・APテストパイロットであり、当然これと同じ状態になってしまっている。
 そのため、望む望まないに関わらずアナルセックスしか出来ない身体になってしまった。
 こういう部分は、個人的には気に入っている。
 この工作員、始めに主人公にAセックスを頼むのだが、その理由を正体が判明した後に説明している。これは、結構唸らせられた。
 また、APとDPがいわゆるオーパーツ(現代考古学では説明不能の、太古の高水準の発掘品)という事になっており、パイロット自体も、APを操縦・制御するためのユニットの一部であり、人工生命体であるという真実が隠されている。
 それが最後近くまで隠されており、その事実に辿り着くまで奔走する主人公の姿は、なかなか赴き深かったりする。
 言い忘れたけどこの主人公、組織ネル……もとい、ストライク・バックス(以下、SB)の最高司令官という立場にあり、すべての監督・指揮権を持っている。
 物語は、すべてこの主人公の指揮の元に進行し、同時にストーリーは彼自身の単人称で語られる。
 そのため、真実に辿り着けないもどかしさなどは、主人公を同感覚で味わえる。
 まぁ例えるならば、ヒゲメガネの権限を持った、ビール女の男性版と思ってくれればいいでしょ。
 でもなぜか、名前が最後までないままだったりする。珍しいなぁ。
 主人公をパイロットに設定しなかったため、物語への疑問は全体的に大きな事柄へと向けられる。
 そのため、全体的に情報収集戦の形式を呈してくる。
 全体を把握するためには、少々の用語をメモしておく事をオススメする(やるっていうならね)。
 それらの事から、本編のイメージは意外にアレに引っ張られていない。それが、せめてもの救いというものか…?
 ところがゲーム全体の印象としては、まったく別の悪い点が多く見え隠れして来る。
 例えば、異常としか思えないほどのテキストの使い回し
 パイロット3人娘のHシーンなどは、一部を除いて各人使い回しで、主人公の台詞はおろか、彼女達の台詞すらも名前の所以外は全くおなじだ。
 一部、SLGっぽいシステムに絡んでくる場面での、主要キャラクター達の台詞が同じなのは仕方ないにしても、いちいちコマンドを選択する度に、ボイス付きで同じ“自己紹介”をされるのはイラつく。
 よってボイスは常にOFFになるという、もったいない結果となる。
 ADV部分の文章は、それなりに良く出来ているだけに、それが余計に目立つんだよね。
 よく通過する部分だからこそ、工夫が必要であるべきだと思うのだが。
 また、肝心の戦闘システムも、問題が山積み。
 敵の出現条件が一定時間の経過か、育成により、パイロット達の特定ステイタスが一定値をオーバーすると出現する。
 そのため、APやパイロットの回復が間に合わないのは、まぁいい。
 問題は、それらタイミングを微調整した上で臨む対戦が、余りに不条理だという事。
 とにかくAPは弱く、出撃時のメンバー選択は、ほとんど意味がない。全員出撃させなければ望みは薄く、かといって全員出撃するとアッサリとケリが着く。
 DPの攻撃力は、常時一体しか狙わないものの、皆異常なまでに攻撃力が高い。
 そればかりでなく、APの防御能力をMAXまで上昇させても、敵から受けるダメージ値がほとんど変わらないのは、かなりマズイ。
 まして、どんなに速度を上昇させても、DPよりも早く攻撃する事は不可能に近い
 さらには、一回攻撃を受けると必ず身体の一部が大破損を起こし、右腕や左腕の装備が、すぐに使えなくなってしまう。
 これは、防御していても同様。
 ATフィールドもどきの“障壁展開”という能力があるものの、ダメージが軽減するだけですぐに壊れるわ、身体の破損の確率は変わらない。困ったもんである。
 まともにステイタス調整などをしていたのでは、いつまでたっても満足した結果が得られないため、「速度」「回避」のポイントを最低値まで下げて、その分を他のステイタスに回した方が、楽勝でクリア出来ちゃったりする。
 だが、この戦闘システムにはさらに重大な問題があった
 グランドエピローグとおぼしきエンディングを目指す過程にある、かなりキツイ条件がそれ。
 APの回復については面白い設定があり、本来はバクテリア状であるAP素体の急速培養で、全長30M級の身体を作り出しているのだが、再分解・再構成により、HP回復・能力値変更を行うというもの。これ自体は、なかなかのアイディア。
 その際の能力調整は、戦闘経験値の振り分け方式を採用しているのだが、DPに止めを刺したAPのみその経験値が倍になるうえに、パイロットランクという隠しパラメータが1つ上昇する。
 先のエンディング条件では、誰かお目当ての娘のパイロットランクを、9以上にまで高めなければならないという物がある。全12戦中9戦も、一人のキャラクターが倍増経験値を独占するのだ!
 そのため、とてつもない能力のバラつきが発生し、戦闘状況はさらに悪化してしまう。
 ましてラスボス戦はかなりの難戦であり、連戦状態に必ずなってしまうため、能力のバラつきは致命的となる。非常に不親切なシステムだ。
 ついでにいうと、その上に“信頼度”というパラメータを91以上にまで上げなくてはならない条件まで付いてくるのだが、なんと、これも隠しパラメータ
 もちろん、パイロット以外の女性キャラクター達にもこれは存在し、彼女達全員とHしなくては辿り着けないエンディングまであるのだ。
 これらは、非常にストレスの溜まるプレイが義務づけられる事であり、同時に、こんなしちめんどくさい条件のエンディング設定でありながら、一番重要なステイタスがすべて隠しのために、一切確認出来ないままで進行せざるをえないとは、何事なのだろうか?
 ましてパイロット3人各自のエンディングは、画面のごく一部と文章中の名前が違うだけで、あとはすべて使い回しだ。
 ここまでくると、ちょっと正気を疑ってしまう。あれだけ苦労させといて、結末がこれではまったく報われない。
 なおこれらの条件はすべて、某雑誌の攻略記事があったからわかった事で、説明書やゲーム中の文章すべてを読んでも、全く解らない要項であるという事実を表記しておく。
 攻略難易度の件は、こういう事ね。
 とにもかくにも、ここまで難点が多いゲームも珍しい。
 オススメ度が、自分が担当した近年のものの中で圧倒的に最低なのが、わかってもらえましたかな?
 
(総評)
 これはまったく私の想像なのだが、プレイ中ずっと感じていた事がある。
 恐らくなのだが、このゲームの企画が初めて立った時点で、エ〇ァンゲリオンを踏襲した(と、いうか丸パクリした)物語のゲームにしようと、上層部の方で一方的に決定がなされたのではないか。
 そして、実際にそれを制作するスタッフに伝わった段階で、「何だコリャ?」という事になったのではなかろうか。
 何故ならば、このゲームもっと素直にエ〇ァをパクる事が出来た筈なのに、なんか妙にオリジナルの設定や解釈が盛り込まれているからだ。それも、妙に重要な部分に集中しているし、それはそれで立派なオリジナルアイディアだからだ。
 私は、この限られた環境内で可能な限り“脱・エ〇ァンゲリオン”に努めた結果ではないかと信じている。
 もちろん、それは悪い事ではない。
 上記の事が仮にすべて事実だったとしたならば、制作班の努力は、認めるべき事ではある。
 いずれにしても、今更エ〇ァもどきなんか出しても、世の中には全く受け入れられないという事実を、一番把握していたのはスタッフだったのではないだろうか
 私は、どうしてもそんな考えから脱する事が出来ない。
 だがしかし、だからといって肝心のゲームシステムがここまでおざなりでは、せっかくの努力(この場合は、諸設定の発案といおうか?)が水泡に帰してしまう。
 かなり雑な作りが目立つ、とても98年に出たゲームとは思えない酷さだ。
 再プレイになると、いくらスキップ機能があるとはいえ、たった45分程で終わってしまうというのも、マズイではないか。
 つまりは、別エンディングを目指すつもりのプレイでも、ラストだけ見られれば、後はどうでもいいという事。これじゃあねぇ…。
 パクりうんぬんを度外視したとしても、本来マイナーではあるが、それだけに一番力を注がなければならない部分をあえて手を抜いた作品…。そんな印象だ。
 なんせ、ほとんどのソフト運営をWIN95に依存しているもんだから、なんか画面に違和感がある。
 フルスクリーンにすら出来ないんだもんねぇ。
 

     
(後藤夕貴)
 
 
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