儚想 〜あねもね〜
 
 目の前に現れる不思議な少女。
 自分の中で目覚める何か。一体何が起きているのか?
 
1.メーカー名:PEARL SOFT R
2.ジャンル:ADV
3.ストーリー完成度:D
4.H度:C
5.オススメ度:E
6.攻略難易度:E(一本道、バッドエンドなし!)
7.その他:ああ、もう! 絵的には好きなのに、好きなのにぃ〜っ!
 
ストーリー
 祖母の一周忌を終えたばかりの主人公神邑達矢は、時々意識が飛ぶようになった。
 それと時を同じくして、月依(つくより)と名乗る少女の幻影を見るようになる。
 月依は達矢を兄と呼び、何を聞いても「御存知です」としか言わない。
 達矢の身に一体何が起こったのか、月依の正体は?
 
 なんつーか、何がやりたいのか、さっぱり判らんゲームだった。
 謎を撒き散らかすだけで、ちっとも説明しやしない。
 まず、達矢は夜韻とどういう関係なのか、生まれ変わりの類だったとして、なぜ今目覚めるのか、耀晄(ようこう)は勇樹として現れる前は、どこでどうしていたのか、智子と優子の罪とは何か、そして何より、過去に耀晄と夜韻(やいん)、月依の3人の間に何があったのか。謎は尽きない。
 過去の3人の間のことは、わずか5枚の絵によってしか語られない。
 睦まじい3人、耀晄が月依を怒り、夜韻が庇っている図、父親らしき人に食ってかかっている耀晄、血に染まった剣を手にする耀晄、そして夜韻を支えながら、誰かを睨み攻撃する月依…。
 これだけで何があったか判ったら、大したものだ。
 何と言っても、智子、優子の前世らしき姿はどこにもない。
 幼い頃の優子と月依のイメージがダブってはいるものの、月依が封印を受けて眠り続けていた以上、優子が月依の転生ということはあり得ないのだ。
 しかも、最後に耀晄を刺して「今度は間違えなかった」などと言われるということは、夜韻を刺したのは優子の前世ということになりそうだ。
 実際、月依は「また騙されていた」などと言っているから、優子の前世が、耀晄に何らかの形で利用されて、夜韻を刺したと考えるのが正解っぽい。
 すると問題になるのは、耀晄が握っている剣が何かということだ。
 夜韻の死体に刺さっていた剣とは形が違うし、そもそも、どうやら夜韻(達矢)や耀晄の使う剣は、自分の手と一体にして使うもののようだ。
 このことは、優子が耀晄(勇樹)を刺した剣が達矢の手首と繋がったままなことからも判る。
 達矢が使った剣は、夜韻に刺さったままだった剣のはずだが、達矢の手と繋がっているのだ。
 このように、謎が解決されないまま残されまくっている(てゆーか、謎を明かす気なんてこれっぽっちもない)というのが、このゲームの最大の問題点なのだ。
 ついでに言っとくと、達矢は女の子にだらしなさ過ぎ。
 智子、椎名、優子、月依とめぐみ以外全員に手を出し、最後まで1人にしぼれない。
 最終的に智子は脱落するものの、それは智子自身が身を引いただけのことだ。
 大体さあ、一本道のくせに女の子出し過ぎなのよね。
 せっかく途中に選択肢があるのに、ちょっと文章が違うだけで、結局本来のルートに戻ってしまう。
 どうしてマルチエンディングにしなかったんだろう?
 それぞれのシナリオで、そのシナリオのヒロインとの因縁話を語るだけでも、随分と印象が変わるはず。
 それにこうすれば、前述の謎の方も解き明かせるだろうに、それをしない。
 そもそも、こうやって散々ドタバタやっておいて、いったい何の実入りがあったのさ?
 勇樹は死んじゃったわ、椎名はいなくなっちゃったわ、智子なんて、明日から教壇に立てないんじゃないの?
 生徒に強姦されかかって何日も休んだってことは噂になってるハズだもんね。
 そん時勇樹に操られてた不良3人組なんて、重傷よ、重傷。
 その前に、ホントにめぐみを強姦しようとしたって経緯があるからいいようなもののさ。
 めぐみはめぐみで、恋人を失ったことすら忘れさせられちゃったわけで、可哀想なんてもんじゃない。
 真実先生も行方不明だし、消化不良なこと甚だしい。
 鷹羽が思うに、この事件の真相は、こういうことでしょ? 
 遙かな過去、夜韻が死んで封印された後、いつの日か夜韻が復活(転生)する日を待つために、月依は自らを封印した。
 夜韻の復活の時が近づき、眠りについていた月依は、魂の一部を外界に放って、情報収集することにしたが、その魂は、椎名という人間の姿を保つためにその力のほとんどを費やし、月依としての記憶を失ってしまった。
 一方耀晄は、過去に夜韻を死なせてしまったことについて後悔していて、けじめを付けるために、夜韻かその関係者に殺して貰おうとして、夜韻の依代(よりしろ)となるべき達矢に近づくため、記憶操作によって達矢の従兄弟、神代勇樹となって、その時を待ち続けた。
 そして復活の時が近づき、勇樹は裏でそのお膳立てをしながら待ち、優子の手によって罪を清算して、眠りにつくことができた。
 …と、まあ、ある程度の想像はつくものの、それをプレイヤーの想像に任せっ放しでいいのかという大問題を抱えているわけだ。
 オマケに、結局は全部、耀晄の自己満足のためでしかなかったわけだし。
 前にもどっかで書いたけど、余韻を残すエンディングと、ブッた切るエンディングとは違うんだってば
 とにかく、こんな中途半端なもの作ってちゃダメだよ。
     
(鷹羽飛鳥)
 
 
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