魔法少女アイ
 
 「魔法少女」というタイトルとは裏腹に、その内容は触手モノ!
 何か、一昔前のエロアニメみたいだ(笑)。
 
1.メーカー名:colors
2.ジャンル:ADV
3.ストーリー完成度:C
4.H度:A
5.オススメ度:B
6.攻略難易度:C
7.その他:このHゲーム世界(特にWinになってから)では、意外とありそうでなかった完全触手モノです。色んな形の触手があるなあ…よく考えるよね、ホンマ。
 
 
(ストーリー)
 最近、主人公・岡島秋俊の住む町では猟奇犯罪事件が多発している。
 しかし、そんな物騒な世の中にあっても淡々と平凡な学生生活を送る秋俊。
 事件の事など、まるで遠い次元での出来事程度にしか思われないほどに…
 いつものように何故か自分を「おにいちゃん」と慕ってくる大見結亜とともに登校する秋俊だったが、見知らぬ女学生にふと目がいった。
 転校生かと思い、同級生に聞くと…彼女の名前は加賀野愛、昔からいる生徒だという。
 強烈な違和感を憶える秋俊。
 そして、その頃から彼はこの町で起こる怪事件に次第に巻き込まれていくのであった。
 謎の少女・加賀野愛、いや異世界からやってきた戦士アイとともに…
 
 
 本来ならば今回のレビューは、Hゲーム界でも異色のSTG「アメリカンセクシーチャンネル3」をとり上げる予定だった。
 が、相次ぐ攻略失敗(2クール目に入る条件が分からない)のため、原稿が出来ない状況になってしまい、急遽この「魔法少女アイ」が浮上してきたのだ。
 正直、もともとは「選ばれないソフト集結」用のストックだったのだが、ここ最近のストックの中ではかなりマシな方だったので、拾ってみることと相成った。
 
 とりあえず内容はオーソドックスなADVであり、要所要所で出てくる選択肢を選びながら進むタイプだ。
 一応、ルートとしてはヒロインが複数(5人)いる割には2つしか存在せず、メインヒロインのアイと主人公の妹分である結亜のルートのみとなる。
 まず、このゲーム最初に「すごく、最近のゲームらしくないなあ」と思わせる所がある。
 ヒロインの数だけEDがないというのもその一つだが、実はこの作品、ちょっとした選択肢ミスですぐにゲームオーバーをボロボロ食らう
 もちろん、その大半は触手による陵辱CGなので、全CG回収を目的とするのならば避けては通れない道なのだが、まあ、ありとあらゆるところにそういう箇所がちりばめられているため、2本しかないシナリオの割にはそれなりに楽しめる。
 この選択肢ミスはもちろんやってしまえばBADだが、こまめにセーブをしていけば、それ程大事に至る事はないので神経質になる必要性はない。
 
 シナリオは意外と長く、如何にもヤルだけゲームっぽい雰囲気とは裏腹に、しっかりとストーリーを構築している。
 特に、一回ゆらぎを倒してアイと別れた後にもう一回アイが出てきて、主人公を助けてくれる展開はかなりオイシイ。
 また、謎が謎を呼ぶ展開も、なかなか飽きが来ない。
 死んだはずの内藤や亨が再び出てくるあたりの展開は感心だ。
 またベタはハッピーエンドにならないのも、意外という事も手伝い結構しんみりさせてくれる。特にアイエンドはあそこまでラブラブ状態になった二人なのに、最後にはアイ自身が主人公とともに生きることを拒絶する、なかなか哀しいお話になっている。
 ED自体がシンプルで「何で!?」と一瞬思わせるのだが、アイは結局の所人間とは違う異界の人間でしかない…戦士という立場、住む世界、寿命…全てにおいて普通の人間である主人公とは異なっているのだ。
 主人公の記憶を消すのがアイにとっては最もツラい選択だったはずなのだ。
 だが、アイはそれでも主人公の記憶を消した。
 それが愛する者への最良の道だと信じたから…
 ED一番最後の、記憶を失った主人公が結亜とともに歩いているところを一人佇んで見守るアイの姿は、こういう観点から見るとかなり感慨深い。
 と言うわけで、このアイシナリオからEDの流れは個人的にはかなり気に入っている。
 
 ただ、惜しむらくは画面の切り替えなどの演出があまり上手でなかったり、曲数が少なく同じ曲が延々と繰り返されるシーンがかなり多い事。
 こういう点は一種の職人芸的な技術が必要な所でもあるので、今後に期待だろうか。
 欠点も若干あるものの、ストーリーの起承転結を良く心得ており、次第に紐解かれていくシナリオは評価に値する。
 ちょっと残念なのが、その展開上で次々と新しい情報が露呈されるにとどまっている所だ。
 基本的に敵の正体「ゆらぎ」に関する知識など主人公にないものだから、どうしてもそこらへんをアイが解説する事になる。
 こういう所は、もうちょっとストーリーに絡めてプレイヤーに理解を促す展開にした方が良かったんじゃないかな?
 まるで「アイ先生のゆらぎ講座」にしかなっていない。

 あとは主人公がそれほどアクティブに動いてくれないのもマイナス。
 コレは片方のヒロインである結亜の相手を主人公がしなくてはならない事に起因している。
 四六時中ひっついている結亜が、主人公の行動にとんでもない制限を課していることには間違いなく、結局情報収集とかはアイの独壇場になってしまう。
 しかし、この作品はあくまでも視点が主人公のものなので、アイがどういう情報をもたらしたのか、またそれを得るためにどういう手段を使ったのかなどはまるで語られないし、結果自体も、まるで事の顛末を知った程度の効果しか得られないのだ。
 あと欲を言うのなら、最後の最後で出てくる超重要キャラクター・愛(めぐ)をもう少しキチンと描いて欲しかった。
 彼女のことをしっかりと描写するだけで、主人公が何故特殊な能力を持っているのかや、ゆらぎの大元である学校に生えている大銀杏を更に的確に表現する事が出来たはずだし、アイが、この町に来た理由も納得しやすい。
 これに関しては出し惜しみのしすぎとしか言いようがないが、アイルート・結亜ルートどちらを選んでも意外と救いのないEDを迎えるこの作品に於いては、もう少しちゃんとしたエピソードの出し方をして欲しかったなあ、と思うのだが。
 特に結亜エンドを際だたせるためには重要だったと思う。
 
 キャラクターとしてはやはりアイがヒロインだけに、その存在感はずば抜けている。
 異界(魔法世界みたいな所らしい)からやってきた彼女は、幼少の頃から厳しい戦士としての訓練を受けており、彼女らの敵である「ゆらぎ」を葬るためならば多少の犠牲などまるで厭わない。
 こういう設定は結構徹底しており、聡恵がゆらぎによって精神を破壊された後に「敵に利用される恐れがある」という理由だけで殺そうとするなど、かなりデンジャラス。
 しかし、それらの行為は命を懸けて戦っている彼女らにはむしろ当然なのであり、こういう点をシナリオに絡めているのは結構上手だと言っていい。
 普段の無口な態度と戦闘時の激しい口調にかなりギャップは感じるが、vs亨戦の時に自分の体に雷撃の呪文を浴びせ、触手から逃れるといった大胆ながらも冷静な戦い方も披露してくれる。
 またビジュアル的にも凝っていて、ある一定イベントで見れる登場&変身シーンなどはかなり気合いが入っていて実に良さげ。
 このシーンはもうちょっと入れて欲しかったな、と思うぐらい。
 何だかんだ言って、カッコいいヒロイン。十分、魅力的に描けているのでは? と思う。
 
 ただ、2ヒロインのうちの結亜は正直かなり頭イタい。
 既存の作品にもお子様キャラクターは数多くいたが、セリフの殆どがひらがなというのは正直読んでてかなり堪えた。
 ノーテンキなテーマBGMが、これまた拍車をかけてくれるし…
 正直言うと、ただうざいだけのガキに、何でシナリオがあるのかイマイチ分からないし、この作品のメインヒロインであるアイに牽引力がないとは思えないんだけど。
 これなら、アイのEDを複数にした方がよっぽどマシだ。
 
 
(総評)
 実は触手モノという事であまり多くは期待していなかったのだが、しっかりとしたストーリー構築や設定、なかなか読ませるシナリオなど、スタッフの地力は決して低くはない。
 少なくとも、以前やった触手モノ「封魔神社」に比べれば、遙かに出来がいい。
 キャラクターデザインなども癖が強く、決して一般ウケはしないだろうが、CGがキレイなだけの三流ゲームに比べればヤル価値は十分にアリなのでは? と思う。
 バラエティがどんどん増えてきた、このHゲーム業界、そんな中でこういう良く出来た作品が出てくるのは嬉しい限りだ。
 
 
(梨瀬成)


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