やどかりタイフーン!
 伝説の楽園目指し、我は行かん大海原へ!!

1.メーカー名:CACTUS(ORBIT)
2.ジャンル:ADV+プチ戦闘
3.ストーリー完成度:B´
4.H度:C´
5.オススメ度:C
6.攻略難易度:D
7.その他:おまけのトランプに書いてあった「一粒300メガバイト」という言葉が妙に頭に残る…


(ストーリー)
 主人公・リカード=ストラディスタは、海賊船フルゲイル号の船長である。
 船長なのだが…、何故か甲板の掃除をしている。
 それと言うのも、リカードが面白がって舵をきってしまい現在位置がわからなくなってしまったため、副船長のフィレットに罰掃除を命ぜられたのだ。
 しかし懲りないリカードは、掃除を適当に切り上げてしまう。
 そしていざサボろうとした時、頭の中に直接、少年の声が響いてきた。
 慌てて辺りを見回し原因を探してみるが、特に何も見当たらない。
 が上を向いた瞬間、額に衝撃が走り気を失ってしまう。
 フィレットに起こされ目を覚ますと、額には意思を持つ赤い宝石が埋まっているのであった。
 フィレットの話によると、意志を持つ宝石「シーマスター」を持つ物は、至高の楽園「リバティリア」にたどり着けるという…。
 『ノア』と名乗る宝石をめぐって引き起こされる、リバティリアへの波乱の旅がここに始まるのであった。


 何と言いましょうか…パッと見は判断を下すのが難しいゲームだと感じました。
 このゲームで一番強調していると感じた点は、「漫才のような展開」です。
 しかし、その他の面で何か特異な物があったかと言えば否でしょう。
 話の題材は「楽園(リバティリア)を目指し、仲間と共に航海をする」というあまり目新しさもない冒険モノです。
 この「リバティリアを目指す…云々」が一本しっかり用意されてるので、ヒロインが絡む話も主題に沿った形で進むように思われます。
 またシステムも普通のテキスト・選択肢形式なので、こちらも有象無象のものでしょう。
 一文で書くと、「笑いの雰囲気で場を盛り上げる冒険劇」といったところです。
 後は「ゲームの軽いノリについて行けるか?」と「ヒロインの人数回数分同じ展開を見ることに耐えられるか?」という要素で、このゲームの印象は大きく変化すると思います。
 仮に誰ともくっつかない時のエンディングをバットエンドとすると…笑いは楽しめたけれど、バットエンドを見た方がやりたい事が全て解るのはどうかと?
 とまあ大方こんな物が負の方面から見た意見でしょうか。

 違う見方をすれば、同じ展開を飽きさせないために笑いがあるとも考えられます。
 途中に強制エンドもなく、どのような形でも丸々一周プレイする事になりますが、クリアし終わった後に面白かったと感じさせるのは、やはり笑いに徹した所が大きいからなのでしょう。
 また、その「笑い」から出るキャラクター性(言い換えれば性格)も大きいように感じました。
 主人公やヒロイン達は多かれ少なかれトラブルメーカーな性格で書かれているので、何かしらの掛け合い漫才が続きます。
 内容も殆どお約束のようなノリが多く、ブラックは少なかったので素直に楽しめました。
 いや「体全体にフナ虫がまとわり付く」なんてある意味惨たらしい物はあったけど…まっ、見なかった事にしましょうか。
 ちょっくらヒロインごとに思ったことを書いてみましょうかね。


(フィレット)
 フルゲイル号の副船長にして、このゲーム中唯一の常識人だと思われます。
 ギャグ主体のゲームにおいて「常識人」イコール「苦労人」を指す傾向が強いですが、この作品でもしっかり当てはまります。
 リカードがハメを外した時に、すかさず鉄拳制裁を喰らわせるナイス・イです。
 このようなパターン化されたキャラ像は、大きく外されない方が安心感があって良いです。
 トラブルシューター的なキャラクターなのでいてくれる事が非常に助かると同時に、フィレットをからかうイベントは他のよりも一歩抜きん出た面白さを感じました。
 いじり易いといいますか、いじられ易いといいますか…。
 また他のヒロインよりも遥かにリカードに近い存在なので、多少驚かされるエンディングだったもののすんなり消化できた事は大きいです。
 裏切りの少ない、安定したシナリオであったと思います。


(シャープ)
 海賊団・クラッカーズの船長にして、(一方的な)リカードのライバルです。
 考えるより先に手が出るタイプで、からかうと期待通りの反応を示すので楽しいです。
 次々と問題を起こす所が見ていて飽きないというか…この娘も弄られ易い性格ですな。
 最初、てっきり前述のエミリアがメインヒロインだと思っていたのですが…。
 ・ゲームパッケージの裏はシャープの一枚絵。
 ・メーカーHPにあった壁紙の内一枚がシャープの一枚絵(他のヒロインは無し)。

 ……えーと、メーカーさん? メインヒロインはこっちでしたか?
 それとも「いぢり甲斐」があるからですか?
 (まあ単純に、こういうハッキリした性格が人気を得ているからかもしれないが…)

 プレイ中「こいつはとことん遊んでやろう」という製作側の意図を感じたのですが、実際にはどうだったのでしょう。
 ストーリー的には、出会った当初からリカードにからかわれ続けるので一生懸命復讐をしようとするものの、ことごとく失敗していくのが見ものでしょうか?
 眺めているだけで微笑ましく思えてきます。
 失敗にくじけず突っ込んでいく根性を表すには最適で、またリカードを好になっていく様を書くには玉砕覚悟(?)で突っ込んで行く方法が一番しっくり来ると思えました。
 後から似たような性格の父親も出てきて、更にすごい事になる様な気がしたのですがシャープを守るために死んでしまうのでちと残念(不謹慎だね)です。


(エミリア)
 序盤フルゲイル号は船を襲い、奪い取った樽の中に入っていた少女。
 …この作品中、一番気合いの入った登場ではないでしょうか?
 性格は天然&ドジ、また話は巻き込まれ型で話が進んでいるので、何が起こるか(しでかすか)解らない面白さを感じました。
 ただパターンとして、エミリアが自爆していくか、シャープの悪巧みに巻き込まれる場合(選択肢に因る)に偏っていた感も受けました。
 個人的には、ここ数作では飛びぬけた「すっ呆けさん」だったので変な印象が付いてしまいました。
 ゲーム中でも「こんな事をして…ヒロインとしてはいけないわ」のように、自ら突っ込みを入れている場面が数度あり、救われない物を感じました。
 が、中盤から後半にかけては、一生懸命な性格や一途な所も見せて“メインヒロインの面目躍如”もキチンと果たしていたのは良かったのではないかと…。


(ミーナ)
 唯一の非人間系キャラ・耳長族の少女。
 おちゃらけキャラの中にあって、さらに“ご〜いんぐ・まい・うぇい”な性格をしているので、この作品の最強ではなかろうかと思います。
 人間ではないからか、言葉足らずで幼い感じのキャラになっています。
 また出会ってからすぐに、初対面のリカーとをいきなり「おにいちゃん」と呼んだり、「ミーナの種族が船に乗るとその船は沈む」という伝説があるという話が出てきます。
 前者は出会った時に話に上り中盤は出てこなくなりますが、ミーナのストーリーに入ると再び浮上し、重要な役目を果たしていきます。
 初めは「おにいちゃん」と呼ぶのを止めさせようとして、次に何故そのように呼んでいるのかを推理していくリカード、次に彼自身の失われた記憶と結び付けて、実は少年時代にミーナと知り合い(幼馴染)で、その頃も「おにいちゃん」と呼ばれていた…という流れになります。
 ただし共通展開部分では、嵐に遭う以前の記憶が曖昧になっているとは語られなかったと思います。
 そのせいで、多少“ミーナシナリオのために用意した後付設定”の臭いが漂うのも否めません。
 まっ、結論として(そう大層な物とは思わないが)キチンとした答えがあったのだから、まだ良かったように思えましたが。
 ただ、スルメが大好物というのと耳長族がHの相手として有名だというのが合わさって「ひょっとしたらスルメが好きなのって匂いが似てるから?」てネタはどうかと思ったヨ…。
 何にせよ、他のヒロインとは一線違う雰囲気を持つ話だったので、一番楽しめたシナリオです。


 キャラ別ではこんな物ですかね。
 またその他の要素として、声優さんが上手だった事も大きなプラス要因であると感じます。
 このゲームはキャラ依存度が大きいので、音声が合っているというのはポイントです。
 笑いで進んでいく展開が多いので、雰囲気と言いますか…ノリ良くテンポ良く行ってくれた方が良いに決まっています。
 その上で“キャラに合っている声”というのは、大切な物だと改めて思いました。
 これはこの頃の18禁ゲーム全体的に当てはまると思うのですが、声優さんのレベルは急激に高くなったように思われます。
 去年〜今年にかけてプレイしたゲームで、あんまりハズレを引いた記憶が無いですね。
 まぁ、たまに「こんなにキャラと声が合ってないなら音声消しちゃる、ウリャ〜」みたいな物に出会うのはご愛敬という事で…。
 ただ、このゲームでは変な主人公・ヒロインよりも、どう考えても更に5割増しな人も出てくるので、そっちの方にも声があったらな…と感じる今日この頃です。

 さて、キャラクター以外で注目すべき点といいますか、このゲームに付いている特別なシステムがあります。
 それがちーとばかし曲者でして。
 他の海賊と一騎打ちをする場面が数回あり、その場面用に展開される簡単な戦闘システムです。
 内容は「3・2・1」と画面上でカウントダウンし、ゼロのタイミングで矢印が表示されます。
 その方向と同じ向きのカーソルキーを押すと、相手の剣戟を避けるシステムです。
 これがついた目的は「戦闘を面白くするためかな?」と思うのですが、以下の理由により殆ど意味が薄くなっています。
 ☆何回失敗しても、決してリカードは死にません☆
 ハイ、これはどうしようもなく駄目だと思うのは気のせいでしょうか?
 一瞬、緊張感あふれる印象を受けたのですがですが…何か起こると期待した俺が馬鹿でした。
 メッセージをスキップさせてたら永遠に繰り返してやがった(チャンチャン)。


(総評)
 購入するきっかけは、雑誌で紹介記事を見た時“絵がなんとなくよさそうだった”と感じたという、単純なものだったはずなのに…
 メインマシンが盛大に故障してしまい、その復旧作業をしている最中に購入。
 更にこのゲームをプレイしている時に仕事で出張に行くことが多くなったので、ノートパソコンを購入してしまった…。
 そんな訳で、自分の2002年パソコン黙示禄に燦然たる名前を残し、別の意味でも印象に残るソフトになってしまったのですが…ハハハ。
 これで肝心のゲーム内容が「ゲフー」だったら目も当てられない状況に陥るところでしたが、なかなか良さげだったので何とか救われました。
 このタイプは、昔やった『眠れる森のお姫さま』に通じる物がありますね。
 思えばあれも基本ストーリーがっちり固定で、笑い一辺倒だったと記憶しています。
 似たようなゲームをやって受けた印象としては、「大当たりは無い変わりにハズレる事もなさそうだな」てなとこです。
 結局は「暇な貴方にお勧めします」的なゲームではないでしょうかね。
 最後に、バグが無いことは本当にいいですね。
 丁寧に作られているものは、それだけでプラス要素に結びつくと思いますよ。

 ただ、最後まで目的地である「リバティリア」が何かハッキリしなかったのは心残りですね。
 その辺を考えるとシナリオが頭でっかちとも受け取れたので、何らかの追加が欲しいなーと思いました。

 どうですか? 音楽も結構良かったので『追加シナリオ付き・サウンドトラック』なんて出してみる気はないですか?


(エルトリア)


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